辺境に捨てられた花の公爵令息

金剛@キット

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58話 シルトの魔法 シルトside

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 強力な魔法を使える魔法(上級)騎士たちが、騎乗して先発する。

 他の騎士は皆、騎乗した騎士たちの後を、自分たちの足で走って追い掛ける。


 膝上まで積もった雪の上を走るだけで、体力を消耗してしまうために…
 騎乗して先発した騎士たちが、雪原の降り積もった雪をギュッと締め固める魔法が組み込まれた魔道具を使い、走路と戦う足場を作るのだ。


「よし!! まずはデカい、ギョロ目を潰せ―――――っ!!!」

 騎乗した魔法騎士たちがトロールの前まで来ると、シルトの号令で大きな目を潰す攻撃魔法を次々と放つ。

 魔法騎士たちに目潰しを喰らったトロールの足元に、シルトが次々と魔法を放ち、雪の下からボコボコと土が盛り上がり小山を作った。

 巨体のトロールは、小山に足を引っ掛けて、ドスンッ…! と転んだところを…
 魔法を使えない(下級)騎士たちが、一斉に攻撃を仕掛けた。 


 シルトの魔法特性は、土を操る魔法だった。

 シュナイエン辺境伯家の代々の当主たちは、風を操る魔法特性を持って生まれるが…
 シルトは母方の特性が強く出て、魔力量は桁違いに多いが、攻撃に適さない土魔法の特性を持って生まれた。




『なんと… シルトは土の魔法だと? この雪原で農地開拓でもするのであれば、重宝するだろうが、我がシュナイエン辺境伯家の息子が魔獣退治に、何の役にも立たぬ土の魔法とは!!』

『本当に残念です… シルト様にはこれほど大きな魔力があるのに…』

 幼い頃、神殿で魔力判定を受け、その結果を見たシルトの父や側近たちがひどく落胆し、その日からシルトにほとんど興味を示さなくなり…


『ゾネ様が先にお生まれになって、良かったではありませんか!』

 一層、風を操れる長男ゾネへの期待が大きくなった。

 
 

『ゴメンねシルト… お父様の力を受け継げるように、産めれば良かったのに』

『止めて下さい、母上…』
 シルトと父との間で、魔法に関する話題が出るたびに… 母フォーゲルに悲しそうな顔で、謝られたことが… 子供ながらシルトにはひどく苦痛だった。


『魔法がダメなら、オレは剣の腕で!!』

 子供の頃から年上のオーベンと共に、騎士団の下級騎士たちと訓練に参加し、シルトは父や側近たちを、見返す為に剣の腕を磨いて来た。

 そんなシルトも王都の学園に入学してから、魔法の講義を受けるうちに…

<やはり魔法攻撃を諦められない、何か良い方法は、本当に無いのか?!>


 魔法学の講師の協力を得ようと、シルトは恥を忍んで自分の境遇を話し、土を操る魔法で攻撃魔法は無いかとたずねた。

 運が良いことに、その講師もシルトと同じ土を操る魔法特性で、魔獣退治で使えそうな魔法を一緒に考えてくれたのだ。  

『確かに直接攻撃には適さないが、攻撃を補助することが出来るはずだ、まずはそれから考えよう』

 強い魔獣ほど、シルトの単純明快な魔法、小山を作って転がして、得意な剣で首をねて殺す方法が…
 1番確実で効果的だと、騎士になり実戦を重ねて行くうちに、シルトは身をもって学ぶ。

 地味で攻撃に向かない、土の魔法しか使えないシルトを、陰でバカにし嘲笑っていた、魔法騎士たちは魔法に頼る傾向があり…
 実のところ、騎士と呼べるほど剣の腕はあまり良くなく… 虚栄心のために騎士の立場にいる者が多い。

 そんな魔法騎士たちに、子供の頃から剣の腕を鍛錬たんれんし努力し続けて来たシルトが負けるはずがない。

 悪魔のように強い騎士になれたのは、シルトが小山が作れて、手柄を独り占めしたからだ。
 
 小山を作り続ける、魔力が大量にあることも幸運を招いた。



 
 母フォーゲルは、シルトに何度も謝り続ける必要など、無かったのだ。

 

 








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