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153話 純白の幻鳥
しおりを挟むシルトたちがブラウ公爵家の者たちを処刑し、地下牢から地上へと戻ると…
プファオ公爵も、囚人服からプファオ騎士団の騎士服に着替え、平民街から戻って来た王立騎士団の団長と負傷者たちの状況について話をしていた。
「シルト殿、リーラの副団長は、雇い主のリーラ公爵を裏切る行為に加担することは、騎士として出来ないが、王都民の避難に関しては全面的に協力するとのことです」
王立騎士団の団長は、タールは信用できる男だから大丈夫だと、付け加えた。
ちなみにリーラ騎士団の団長はリーラ公爵であり、プファオ騎士団のタイヒと同様に、副団長が実質的な団長である。
「今のところは、それで充分です」
ホッと胸を撫で下ろすリヒトの隣に立ち、シルトは大きくうなずいた。
「さてと、次は王宮に行かなければならないが、どうお邪魔しようか?」
悪い笑を浮かべたシルトが、顎を撫でながら思案する。
「私が最後に見た時、国王陛下は寝室で死んだように眠っていた… 恐らく主治医によって眠らされているのだろう… 王太子も婚約者と寝室に籠ったままで、重臣たちは最近顔を見ていないと言っていたから、陛下と同じ状態かも知れない」
プファオ公爵も思案しながら、自分の知る情報をいくつか提供した。
「まったく! リーラ公爵は、王の執務室を我が物顔で使い、やりたい放題ですな! 本当に世も末です!!」
王立騎士団の副団長は、リーラ公爵に魔獣退治の騎士の補充を要請しに、1人で王宮へと行き直談判をした時のことを思い出し、憎々しげに罵った。
「あっ!! 父上、幻鳥です!」
ヴァルムが指を差して、プファオ公爵に声を掛けた。
純白の幻鳥が真っ直ぐシルトに向かって飛んで来た為に…
「大神官殿からか? このような時に幻鳥をよこすとは、緊急の用件かも知れない」
このような時とは、冤罪とはいえ大罪人にされたプファオ公爵を、犯罪を犯して取り返したシルトたちに…
一目で何処のものか見分けられる純白の幻鳥を送れば、神殿もシルトたちの犯罪行為に関与していると知られてしまう可能性があるからだ。
騎士服の上着からシルトは魔石付きの板を取り出し、純白の幻鳥を受け取り伝文を読むと、珍しくシルトが顔色を変えて、焦った様子を見せる。
「これは… まずいぞ!!」
「シルト様?!」
早く伝文の内容が知りたくて、リヒトは無作法にもシルトの袖を引っ張ると…
義父のプファオ公爵が目の前にいることも忘れて、シルトはいつもの調子でリヒトの細い腰を引き寄せて、額にキスを落とし、ギュッ… と片手で抱き締めてから伝文を読み上げた。
仲の良い2人の様子を知っているヴァルムは、少しも動じなかったが…
自分の息子が夫とイチャつく姿を、初めて見るプファオ公爵は、口をパカリッ… と開けて衝撃を受けていた。
「瘴気が… 女神の円環から少しづつだが発生し始めたそうだ! 今は神官たちが全力で封じ込めているが、女神の加護が消えたのだから、それも長くは続かないだろう」
「…そんなっ!!」
リヒトはシルトにしがみつき、自分の目で確かめようと、伝言板をのぞき込んだ。
「いよいよ余裕が無くなって来たな!!」
シルトは顔を上げて、その場に集まる騎士たちの顔を一人づつ順番に見て、これからの覚悟をうながした。
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