悪役令嬢独立奮闘記

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フレイヤ・スフォルツァンドの奮闘

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(鬱陶しいですわね)

フレイヤは内心溜め息を盛大につきながら、目の前の美少女を視界に入れないようにお茶を飲む。

ノルド学院に併設されているカフェテラスで食事をしていたフレイヤのテーブルに

「お邪魔しまーす。」

と言って、こちらの返事も聞かずにフレイヤの前に座ったのだ。

そして食事が終わりフレイヤは食後のお茶を飲んでいるが、件の美少女は食事が終わってもニコニコしてこちらを見るだけ。

一年の半分を雪で覆われているアスガルズ王国この国でお茶は貴重な品なので飲めるのは王族や高位貴族、大商人くらいだ。

フレイヤは四大公爵の一家、スフォルツァンド公爵の令嬢だからお茶をいくらでも飲めるが目の前の美少女、フォルセティ・フリングホルニは貧乏な子爵家の令嬢なので茶葉を買う余裕などない。

ここでフレイヤが「一緒にいかが?」と言えばいいのだろうが、フレイヤは彼女となるべく関わりたくないのだ。

なぜなら

「フォル、こんな所にいたのか。」

と弾んだ声でフレイヤの後方から目の前の美少女を呼んだのがフレイヤの婚約者シグルドで、フォルセティはその浮気相手だからだ。

(婚約者より先に浮気相手に声をかけるって·····)

内心呆れていたが相手が自分より地位が高いので立ち上がり振り返って礼をする。

「あ、フレイヤもいたのか。」

バツが悪そうにしているがフレイヤの髪は白銀に毛先は薄紫でこの国ではスフォルツァンド家しか持たない色だ。

フレイヤの後方から来て顔がわからなくても髪色で気づく。

(まあ、それ髪色さえ気づかないほどフォルセティに夢中なのでしょうけど)

「御機嫌よう、シグルド殿下。わたくしがいて申し訳ございませんわ。
でももう教室に戻ろうと思っておりましたの。
殿下はどうぞお楽しみ・・・・下さいませ。」

扇を広げ高飛車に嫌味を混ぜた。
ついでに自身の髪を撫でながら。

「·····気づかなくて申し訳なかった。
教室まで送ろう。」

「まあ、気づきませんでしたの?
でもそれも仕方ありませんわね。
わたくし・・・・よりも・・・興味深いものがあれば他は目に入らないでしょうから』。」

髪を撫で続けながら目を細めシグルドを見た。

シグルドは否定も肯定も出来ず申し訳なさそうにフレイヤを見つめる。

(さすがヒーローですわ。顔がいいだけに哀れさを誘いますわね。)

プラチナブロンドにアメジストの瞳の端正な顔で心苦しいと表面にだせば大抵の女性は許すだろう。

フレイヤという例外を除けばーー

「いい加減にしろ!
殿下に対して無礼だろう!」

(出た!シグルドの忠犬、このゲームの当て馬ロキ。)

「わたくしのどこが無礼だと仰るのかしら?
殿下、浅薄なわたくしにご教示下さいませ。」

「いや、貴女に無礼を働かれたと思っていない。
ロキが失礼した。」

「殿下!この女の物言いは明らかに嫌味です!
それを許せば付け上がるだけです!!」

(あら、脳筋の癖に嫌味ってわかったのね。)

フレイヤは心中でロキに感心していた。
とはいえ誰が聞いても嫌味とわかろうものだが、ロキに対するフレイヤの評価は五歳児並なのでそれで感心されてもロキは嬉しくないだろう。

「この女?それはわたくしに仰ったのかしら?」

「お前以外に誰がいる?!
いくら殿下と婚約しているからとーー」

「よせ!
フレイヤ、ロキの無礼を詫びる。どうか許してほしい。
私からよく言い聞かせておく。」

「殿下のご命令であればもちろん許します。
ですが毎回皆が集まる場所でこのように大声で吠えたてられては何か意図があると勘ぐってしまいますわ。」

フレイヤは周りを見渡しながら周囲に聞こえるように言った。

その発言に野次馬と化した学院生は騒めき出す。

「確かにいつも廊下とか運動場とか人が大勢いる所でやってるよな。」
「そうよね。」
「さっきもフレイヤ様ではなくフォルセティ嬢に先に声をかけてたぞ。」
「あれはフレイヤ様の後ろから来てたからだろ。」
「でもフレイヤ様の御髪なら後ろからでも気づくのではなくて?」
「そりゃシグルド殿下はフォルセティ様に夢中だから仕方ないんじゃない。」
「名ばかりの婚約者じゃねぇ。」

フレイヤは自身の嘲りも聞こえていたが些末でしかない。

重要なのは学院生にシグルドが意図を持って態と・・フレイヤを蔑ろにしている、貶めていると周知させるのが目的だった。

フォルセティは周りの学院生の自身に不利な発言を聞き、立ち上って反論しようとしたが、フレイヤの扇を閉じる音でタイミングを逃がしてしまう。

シグルドも聞こえていたようで焦ってフレイヤに言い訳をし始めた。

「何も意図はない。
そのように感じていたなら私の態度に問題があったのだろう。
貴女を貶めるつもりはなかった。それだけは信じて欲しい。」

「殿下がそう仰るのであれば臣下として疑うなど出来ませんわ。」

王族の言葉を疑って反逆したと思われたくないと多分に含みを持たせる。

「フォルセティ様に御用がありましたのですわね。
『邪魔者は退散致しますわ。』
では御機嫌よう。」

軽く礼を取り優雅さを失わないように人垣を通り抜ける。

その際にチラリとフォルセティを見たが、唇を噛んでスカートを握りしめていた。

(泣いて周りの同情を買いたかったでしょうけど、今回は無理でしたわね)

フレイヤは教室に戻る途中の空き教室に入り扉を閉めた瞬間に結界が貼られる。

「お疲れ様でーす☆」

横からボソボソ声の陰気な黒髪少女が近づく。
フレイヤは驚く様子もなく少女を見た。

「結界なんて貼って大丈夫ですの?
学院は授業以外の魔法は禁止してますのに。」

もしバレたら謹慎処分だけでは済まない。

「大丈夫☆この結界は私お手製の魔道具で貼ってるから。学院にバレるような稚拙な物じゃないよ☆」

彼女が作ったのなら王国が誇る学院全体に敷かれている魔力感知の魔法陣も児戯に等しいものだろう。

「取り敢えずこれで今日のイベントは終わりましたわ。」

「良かったねぇ。最初はハラハラしたけど途中からはワクワクしたよ☆」

「見世物ではありませんのよ。
こちらはいつ強制力が働くかとドキドキしておりましたのに!」

「そうだよね。
ごめん、フレたんがめっちゃ堂々としててたから·····」

彼女のしょんぼりとした姿に庇護欲がわき、気にしてないと笑顔で返した。

「傲慢令嬢の役なんですもの。そう見えていたなら誰も気づかないですわね。それはそれで良かったですわ。」

「うん、すっごい高飛車で王子を凹まして、ヒロインに付け入る隙を与えない偉そうさだった。
でも無神経な発言だったよ。」

「·····本当に反省していらっしゃるの?」

イマイチ悪かったと思ってるのかわからない言い方だとフレイヤの顔が引きつった。

「反省してるよ!
私だって綱渡り状態は一緒なんだから!!」

一生懸命訴えるように言っているので(俯いた状態でボソボソ声だが)、本当に悪いと思っているのだろう。

「まあ、よろしいですわ。
今回もなんとかゲームのセリフを入れられましたし。」

ゲームではフォルセティをフレイヤが無視していたらシグルドがフォルセティに先に声をかけそれに怒ったフレイヤが『わたくしに気づかないなんて他の者に興味がありましたのね。』
と言ってフォルセティを憎々しく睨みロキが吠えシグルドもヒロインを庇う。
そしてフレイヤは悔しげに「邪魔者は退散しますわ」とカフェテラスを出ていく。

ゲーム内のセリフさえ入っていれば付け足すのは自由だ。

「今回で確信したのですが、悪役令嬢には強制力が働きますが、他の方にはないようですわ。」

「うーん、多分働いてると思うんだけど。」

「ですがシグルドはヒロインを庇いませんでしたわ。」

「でもロキは公爵令嬢のフレたんをあの女呼ばわりしてるし、シグルドは侮辱発言をなかなか止めなかった。
その上女狐に骨抜きで全く婚約者を尊重してない。
フレたんのお兄さんもあの場に居て何も言わなかった。」

確かに普通なら側近があれほど暴言を吐いたらもっと早く止めるべきだ。

最悪側近を降ろし罰を与えなければならないのに注意のみ。

兄は·····居たなという程度の存在感だった。ロキが全面に出すぎて忘れていた。

「困りましたわ。
婚約者としては最低ですが統治者の能力は十分ありましたのに。」

「あの女狐を選ぶ時点で能力があるか疑問だけど?」

「うぐっ、そうですわね。
わたくしも人を見る目はまだ未熟ですわ。」

「落ち込まないでよ。私達また16才なんだから☆
それより後は階段落ちがあるから気をつけて。」

「気が重いですわね·····」

「乙女ゲームに付き物とはいえねぇ~。
この【エッダ物語~竜の加護を授けられし乙女~】の山場なんだから避けられないもんね。」








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