悪役令嬢独立奮闘記

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悪役令嬢からの解放

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「王妃陛下、側妃様はこう申しておりますが?」

王妃はフレイヤの言を嘲笑う。

「側妃一人の言い分を真に受けるなど、隠者となった者とは思えないわ。」

ヨルズノートは国王に目を向ける。

「国王陛下はどう思います?」

ずっと事態についていけず傍観者だった国王は、困惑したように答えた。

「そなた達が何を言っているのか、余もここにいる皆も理解出来ておらん。
説明せよ。」

その言葉に三人は肝心の王妃がしでかした悪事を説明していなかった事に気づいた。

王妃が三人を生まれてすぐに自分の望み通りの行動をとるように操り、今回の婚約破棄の黒幕であると説明した。

「恐らく王妃陛下は未来を知っておられ、なぞらえたかったのでしょう。」

「【千里眼】だったのか?」

国王は初めて知る妻の秘密に王妃に問いかけたが、夫の疑惑を笑って一蹴する。

「彼女達の妄想ですわ。
そんなものを信じないで下さい。
それに彼女達の話が真実なら、今の行動と辻褄が合いませんもの。」

王妃の言葉にヨルズノートが答えた。

「それは私が師匠と一緒に作った魔道具でこの会場を覆って貴女の魔法を無効にしたの。
大変だったんだよ‪☆」

「王妃陛下もわたくし達の言動に最初は焦っておられましたものね。」

「でも今はそれで助かったと思ってるんだろうけど、魔法を無効に出来たって意味わかってる?」

国王は判断できずに三人に目を向ける。

ただの令嬢の言葉であれば一顧だにしなかったが、三人はただの令嬢ではない。

一国の君主と同等の立場、漆黒の塔第二位の地位にいる。

「証拠があるのか?
それがなければそなた達と側妃の言葉だけでは判断できぬ。」

「確かに証拠は・・・必要ですわね。」

フレイヤは扇を口元にあて、ヨルズノートを見る。

「では証拠を見せましょうか‪☆」

ヨルズノートが楽しそうに言った直後、会場の空気が変わり皆が驚きに悲鳴や腰を抜かす者までいた。

「! これは·····」

国王は今見えているものが信じられずにそれ以上何も言えなかった。

三人の体中に4色の糸が巻きついていたからだ。

「フレイ!」

フレイヤは両親が兄の名を叫ぶように呼んだのを聞いて声がした方を見た。

「ーーッ!」

そしてフレイも同じ糸が体に巻きついているのを見て衝撃に凍りつく。

「やっぱりお兄さんも巻きついていたんだね。」

知っていたような言い方にフレイヤはヨルズノートを凝視した。

「さっきお兄さんがフレたんのそばに来たでしょ。
その時の雰囲気がいつもと違いすぎて、もしかしたらって思ったんだよ。」

確かにフレイヤもおかしいと思っていた。

まさかフレイまでも操られていたとは考えなかったが。

「お兄さんは二年生の攻略対象か当て馬になるんだよね。
なら一番都合よく動かしたかったんじゃない?」

ヒルデガルダもヨルズノートの予想を肯定した。

その糸は側妃と会場にいる複数の貴族の手から王妃の手に集まり、王妃の手から四人の体に巻きついているように見える。

「この糸は〔マリオネットスレッド〕と言います。
かなり昔に禁忌とされた〔マリオネットマインド〕と言う魔法で、本来は奴隷に使われていました。
〔マリオネットスレッド〕に巻かれた者は、〈操者〉の望み通りに動いてしまいます。
王妃様は〈操者〉でこの糸を使って私達をご自分の思い通りに動かしていたんですよ。」

ヨルズノートの説明に糸を束ねている王妃は顔面蒼白になり、手から糸が出ている貴族達は取り乱した。

「王妃陛下が言い出したんです!」
「言う通りにすれば栄誉を得られると!」
「拒否などできる筈がない!」

口々に側妃と同じ釈明をしだす。

国王も顔色を無くし、不審に満ちた表情で王妃に声を荒らげた。

「これをどう弁解するつもりだ?!」

王妃は国王に縋り付き必死に無実を訴える。

「これはわたくしを陥れようとする罠です!
生まれた時からと言っていますが、今まで16年間も魔法を維持するなど膨大な魔力があっても出来ません。
それにこれが本当に彼女達の言っている魔法かどうかわからないではありませんか!」

ここまで物的証拠と証人がいても認めない態度に周りが呆れ始める。

「国王陛下、ご判断を。」

フレイヤが国王に裁可を託した。

国王が苦渋に満ちた表情で王妃や、周囲を見回す。

「·····この件は慎重に調査せねばならん。
今この場で決断できる問題では無い。」

国王は王妃、側妃が関わっているだけに王家の失態を最小限にしたい思惑で保留にしたかったのだろうが、三人からすれば王家に対しての最後の温情で国王に判断を任せたのだ。

それを無碍にしたのは国王王家なので容赦する理由は無くなった。

「ふふっ、おかしな事を。
先程はわたくし達を証言のみで裁いておきながら、そのような戯言が通るとでも?」

「こっちは証人と証拠を揃えてるんですよ。この糸を解析したのは漆黒の塔だけじゃないから。
大陸一の魔法帝国アバドンでも証明されていますよ。」

「漆黒の塔を甘く見すぎ。
もし否定するなら漆黒の塔だけじゃなく魔法帝国アバドンまで敵に回すけど覚悟ある?」

フレイヤ、ヨルズノート、ヒルデガルダの順に国王を追い詰める。

魔法に最も精通しているアバドン帝国でも同じ見解なら、調査など必要としない。

国王は絶望に体の力が抜けたようにその場に膝をついた。

「·····何故こんな真似を?」

国王が王妃を呆然と見つめるが、王妃は何も答えない。

口を噤む王妃に変わりフレイヤが推測を述べる。

「恐らくですが王妃陛下は未来を知る夢見アレフ未来視ギーメルなのでしょう。
ご自身の思い描く未来を実現したくてこの様な愚かな真似をしたのかと。
そして協力した貴族達はわたくし達の家の政敵ばかりですわ。」

「貴族に子が誕生したら祝いに国王様と王妃様が家に来るでしょ。
その時にマリオネットスレッドを巻き付ける事ができますよね。」

ヨルズノートが補足した。

「さっき王妃が16年間もどうやって魔力を維持したか言ってたけど、領地の魔力持ちから奪えば維持できるから。
平民の魔力持ちからなら魔力枯渇になって死んでも騒ぎにならないし。
ちなみに怪しい領地には調査して平民の不審死や魔力減少している貴族の子がいるのを確認してるし魔力を奪う魔道具も回収済みだから。」

漆黒の塔の騎士と魔法使いが秘密裏に動いて、魔力を奪われ続けていた人々を助けたが、間に合わなかった者もいた。

その事実に三人は苦い気持ちになる。

糸を手から出している貴族は逃げたかったが、フレイヤの拘束の魔法で逃げ出せずこの場に留まり続けなければならなかった。

「国王陛下、残念ですがわたくし達は貴方の愚かな息子と違って曖昧な証言だけで相手を告発など致しませんわ。」

フレイヤはチラリと元婚約者を見た。

拘束魔法で縛られ喋る事もできず、顔色をなくして立ちすくんでいる。

ヒルデガルダは元から婚約者などに興味がなく一瞥すらしていない。

王妃は震えながら三人を睨んだ。

「ーーお前達さえゲームの通り動いていれば皆が幸せになったのよ!
お前達が邪魔さえしなければ!!」

王妃の体から一瞬魔力が迸ったが、すぐに消え去り力なく頽れた。

「隠者の前で魔力で攻撃しようなんて、愚かすぎますわ。」

フレイヤの辛辣な言葉にヨルズノートが肯定する。

「馬鹿じゃなきゃこんな事しないんじゃない?」

「確かにね。
それとこの魔法を早く解いて。
解かないなら使えなくするよ。」

ヒルデガルダの脅しに王妃は手を握って開くと糸が砂が落ちるように解けていった。

この会場では魔法の効力はなかったが、三人は開放されたように感じた。




国王は茫然自失となり、王妃は魔力を抑え込まれて動けず、側妃は罪の発覚に恐怖し蹲ったまま。

王子二人は拘束魔法で何も言えない状態だが、解いても役には立たないだろう。

「どうしましょう。」

「一人くらいまともなの居たら良かったんだけどね。」

フレイヤとヨルズノートが頬に手を当て困っていますアピールをしたが、周囲の人々は王家を使い物にならなくしたのはお前達だと言いたかった。

怖くて誰も言えないが⋯

ヒルデガルダが国王に近づきながら

「とりあえず国王に動いてもらおう。」

と言って魔力の圧をかける。

「がはっ!」

国王が呻き、圧をかけたヒルデガルダを見た。

「な、何をっ?!」

ヒルデガルダの紅玉の瞳に恐怖を覚え、更にフレイヤとヨルズノートがこちらに向かって歩いてくるのに戦慄する。

「スフォルツァンド公爵、スクルド侯爵、ギリング辺境伯!
娘を止めろ!!」

スフォルツァンド公爵が立ち上がったがフレイヤの冷たい瞳に何も言えなくなり、スクルド侯爵は肩を竦めるだけ、ギリング辺境伯に至っては隠れて出てこない。

「一国の君主が情けない限りですわ。」

「主犯は自分の奥さんで息子も共犯なんだからね。」

「自分のケツは自分で拭け。」

ヒルデガルダの淑女にあるまじき発言にフレイヤとヨルズノートがドン引きする。

しかし国王はもう不敬を咎める余裕などなかった。

「どうしろと言うのだ·····」

項垂れたまま三人に問いかけるが、返ってきたのは非常な答えだった。

「ご自身で判断もできませんの?
法に則って裁けばよろしいのですわ。」

「禁忌魔法に手を貸した貴族と婚約者を冤罪で断罪した息子も忘れないでね‪☆」

「少しでも温情をかけるような真似したら、国に対価を払って貰うから。」

国王は頷くしか選択肢は残っていなかった。



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