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番外編
わたくしと婚約者〜フィーラ視点〜(3)
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殿下とお約束した日にラゼントリオ邸にお邪魔致しました。
ラゼントリオ邸は白亜の館で中は豪華ではありませんが、品良く整えられていました。
応接間に通され先に来て上座の椅子に座る殿下の右隣にシリル様、左隣にアジス様が立っておられ、右横の長椅子にはカルゼ様とアーシア様が座られていました。
カーテシーをして向かいに腰掛けさせて頂き、アジス様が仰っていた香水を何点かとブレスレットやブローチ等も持ってきて下さいました。
豪華すぎず、小ぶりな宝石の付いたアクセサリーは王妃様に似合う流行をおさえた品ばかりです。
わたくしも女性、美しい物にはやはり胸が高鳴ってしまいます。
アーシア様はそんなわたくしの様子を見ていたのでしょう、アジス様に目配せしてアジス様がわたくしの近くに殿下の色の宝石がついた花のピアスやネックレスも置いてくれました。
アーシア様、準備していましたのね。
しかもわたくしの好みをご存知でしたのね。
アーシア様は学園の時とは違い柔らかな微笑みで商品の説明をしていきます。
押し付けるような感じはなく、説明された商品を身に付けて出かけた時の情景を伝えてきて、わたくしもその景色を思い浮かべて心が弾んでしまいました。
ラグナ殿下も聴き入り購入してわたくしにプレゼントして下さったので、わたくしも殿下に紺碧のカフスを贈りました。
くぅ~、悔しいですがアーシア様のセールストークにまんまと乗ってしまいましたわ!
後から来たマリン様はご自分が最後に来たことに恐縮して何度も謝罪され、テーブルの上にある商品に目を輝かせ、わたくしと同じようにシリル様とプレゼントしあっておられました。
それから王妃様のお詫びの品を相談しながら、わたくしと殿下がネックレス、シリル様とマリン様がピアス、カルゼ様とアーシア様が髪飾りを選び、わたくしと殿下が代表して王妃様にお渡しする事になりました。
選び終えるとお茶とお菓子を用意して下さり、これもわたくし好みのお茶で思わず購入してしまいました。
マリン様も同じで全員の好みを把握してそれぞれ違うお茶を用意していると知り、ラゼントリオがなぜ大陸中に販路を広げられたかを実感致しましたわ。
敵認定されなくてこんなに安心した相手はいませんわよ!
高位貴族の嗜好まで把握しているなんて有り得ませんから!!
お茶を飲み終わり殿下とわたくしは防音されたお部屋に案内され、わたくしの専属侍女と殿下にはアジス様が付き、人払いをされました。
「これから話す事は王家に関係するから、他言無用にして欲しい。」
殿下がわたくしの専属侍女をチラリと見て仰いました。
「彼女はわたくしの小さい頃から侍女として仕えてくれていますので安心して下さいませ。」
侍女のサマンサが殿下にお辞儀しました。
「こちらでも身元を確認しています。」
·····アジス様、さらっと他家の使用人を調べたって報告しないで下さい!
殿下も普通に頷かないでください!
ラゼントリオ怖すぎます!!
「僕がフィーラと婚約したのは兄上を抑える為だったんだ。」
えっ、ちょっと待ってください!
まだこっちはラゼントリオに慄いているのに、もっと凄い爆弾を落としてきましたわ。
「ど、どういう事ですの?」
意味がわからないんですが?
「アーシア嬢も言っていたように王太子妃は歴史はあるけど権力のあまりない侯爵家の出で、兄上の望むような後ろ盾にはならないからアーシア嬢や多くの騎士を輩出して情報網を築いているマリン嬢、国内最大派閥のフィーラを欲しがっている。
僕達の婚約が破談になれば義姉上を側妃に落とし、フィーラを正妃にマリン嬢を側妃に迎えて、ご自身の代で王権を強化して、誰も逆らえない権力を持ちたいと画策しているらしい。」
「まさか?!」
確かに王太子妃セリア様のご実家、タンゼル侯爵家は建国から続く家柄ですが、派閥争いから一線を置き領地を堅実に守っています。
「王太子殿下ご自身が妃殿下を望まれて結婚されたのでしょう?子ができない妃殿下を庇って差し上げて夫婦仲は良好に見えましたが·····」
「僕もそう思っていたからフィーラとの婚約が決まった時に兄夫婦に亀裂ができるんじゃないかと心配していたし後継者争いの火種になるとも思ったんだ。
僕は王になる器ではないし能力もない。
陛下が僕に後ろ盾をつける意味がわからなかった。
聞いても国の為だとしか言われなかったし。
兄上の治世を邪魔しないように臣籍降下したかったけど、スペアとしての役割があるからできない。
王族に残るなら出来るだけ権力を持たないようにしたかったんだけど·····」
そこでアジス様をチラリと見てアジス様は苦笑されました。
「王太子殿下のご友人もラグナ殿下のご友人程の権力を持っていないのですね。」
なまじラグナ殿下の時にカルゼ様やシリル様やアーシア様が生まれたのが、王太子殿下の悲劇ですわ。
しかもアーシア様は王太子殿下を嫌っておられるご様子ですもの。
「ではカルゼ様達と距離を置けばよかったのでは?」
あら、アジス様がますます困ったお顔になりましたわ?
「ーーれたんだ。」
「えっ?」
殿下、なぜ小声になりますの?
「アーシア嬢にボコられたんだ!」
ボ、ボコられた?
意味不明ですわ·····
わたくしが唖然としていたらアジス様が殿下の言葉を引き取ってくれました。
「ラグナ殿下が説明しづらいので、僕が説明します。
殿下が10才の時に僕たちを避けだしたんです。
そんな殿下の態度に姉は一週間で切れて殿下をボコり理由を聞き出しました。
そしてその程度でビビる様な男が国を引っ張って行けるか。私の友達は私が決める!と宣言しました。
遊び相手として不敬罪に問われないと両陛下から言われていたので、姉は昔から殿下に対して少し·····拳の付き合いが·····ちょっと多かったのです·····」
「少し?!
あの後三日はベッドから起き上がれなかったんだぞ!
しかも僕がベッドに寝込んでる時に僕のお見舞いの果物をお前たちだけ食べて僕にくれなかった!!」
「姉上が殿下にやるなと言われたんですよ。
殿下が友達やめるとか言うから姉上は傷ついたそうです。もちろん僕達も。」
「僕は物理的に傷ついていたんだ!
その横でキャッキャしながら好物を食べられてみろ、お前たちに殺意が湧いたぞ!!」
「そのおかげで姉上の機嫌がなおったんですから。
切れたままならアレがエンドレスでしたよ。」
「ああ、そうだな·····
もう二度とシーちゃんを本気で怒らせたくはない·····」
「本当に·····」
二人で遠い目をしてどこにイッていますの?!
というよりアーシア様、何なさっていますの!
王子を三日も寝込ませるって·····
この時は殿下はご自分が転んで怪我をしたと主張されたので、アーシア様は咎められなかったそうですが·····
「まあ、そういう訳で未だに殿下と友人付き合いをしています。」
今まで殿下とアーシア様の仲を疑っていましたが、本っ当に友人でしたのね、しかも拳の付き合い·····
わたくしも思考が遠くに飛びそうですわ。
その思考を戻して下さったのは殿下の言葉でした。
「せめてフィーラとは距離を置こうと思って。
政略だからそんなに親しくならなくてもいいかなと思ったんだ。」
いいかな?
巫山戯ていますの?
良い訳ありませんわよ!
わたくしの額の青筋に気づいたのか、急いで言い訳をなさいました。
「今は本当に悪かったと思ってる!
僕の軽率な考えでフィーラを傷つけてしまった。
フィーラからしたら僕は最低の屑男だって自覚してる。
これからは少しでも信頼されるように頑張っていきたい。
浮気だと思われるような行動を取らず、フィーラだけを大切にする。
兄上と結婚したいなら身を引くけど、そうじゃないなら僕と結婚して欲しい。
君が少しでも心穏やかに過ごせるように全力を尽くすよ。」
この方って本当に箱入り王子ですのね。
貴方と結婚したら心穏やかな生活なんて過ごせませんわよ。
「·····このお話をされたいから王宮でもわたくしの邸でもなく、ネズミのいないラゼントリオにしましたのね。」
「ああ、王宮は父上と母上の所でしか人払い出来ないし、下手に人払いなんかしたら兄上に勘繰られる。
グラント公爵家では時間がなくて誰がネズミかわからなかったんだ。」
はぁー、王子妃だけでも大変なのに物凄く厄介になっていますわ。
「両陛下は王権を強くするおつもりはないのですね。」
「父上達は国王は貴族のバランスを取る調整役でそれ以上でも以下でもないと考えておられる。
兄上は次代の君主に相応しいけれど、慈悲のなさに危惧されてもいるんだ。
兄上が暴君にならないよう牽制の為に僕の周囲にフィーラやカルゼ達をそばに据えたのに、僕が気づかず勝手な行動ばかりしていたから、母上が動いてしまったんだ。」
こんなお話を聞けば王太子殿下と結婚なんて絶対にしたくありませんわよ。
出来上がってる欠陥人間に嫁ぐくらいならまだ調教、コホン、矯正できる箱入り甘ちゃん殿下の方が良いですわ。
·····ああ、さようなら、わたくしの平穏。
こんにちは、怒涛の人生。
「最後に、シフォンの事は吹っ切れていますの?」
これからこの方と人生を歩むなら、せめて女性関係で悩みたくありませんわ。
「シフォンは憧れだったんだ。貴族なのにあんな風に自由な行き方ができるなんて羨ましくて、彼女の話を聞いて僕もそう生きれたらって想像するのが楽しかった。
街を一人で自由に歩いて毒を怖がらずに屋台のご飯を食べて沢山の人と何も気にせず喋ったり笑ったりして。
·····馬鹿だよね、僕が王籍から外れたらすぐに殺されるのに。」
·····それって女性としての憧れではなく人としての憧れではなくて?
一人って、今の想像の中に男女のイチャイチャがないのでは?
アジス様を見るとやっぱり困ったお顔。
知っていましたのね。
ラグナ殿下はアーシア様に負けず劣らず恋愛感情未発達だったのですね。
殿下、わたくしは泣き笑いのお顔なんて見たくありませんのよ。
「ラグナ殿下、生まれは選べませんが生き方は選べますのよ。
確かに貴方は不自由なご身分で厄介なお兄様がいらっしゃいますけれど、それでもご自分の生き方はご自分で努力して勝ち取らなければ。
殿下が努力するのならわたくしもお手伝いしますわ。」
殿下は目をぱちくりとされた後、はにかんで下さいました。
「ありがとう、僕もフィーラが自由に生きられるように全力で守ると誓うよ。」
わたくしもアーシア様の事は言えませんわ。
この笑顔に絆されそうですもの。
仕方ありませんわね。
わたくしもこの国の公爵令嬢として腹を括りましょう。
もちろん殿下もですわよ。
今のラグナ殿下には恋愛感情も信頼もありませんから、これから頑張って頂きますわ。
わたくしだけ頑張るのは違いますでしょう?
この決断を後悔する日が来ないように、二人で頑張りたいのです。
だからどんな時もわたくしの目を逸らさずに見てくださいね、今のように。
わたくし、初めてラグナ殿下に触れられたように感じられますわ。
少し気恥ずかしくなってきたので、話をそらしましょう。
何かないかしら。
何か·····あ、ありました。
「貴族でもアーシア様のように傍若無···自由な方が傍にいらっしゃるじゃありませんか。」
そうですわ、小さい頃からあれほど好き勝手に生きていらっしゃる見本がいるではありませんか。
「シーちゃんは規格外だから!」
「姉上を手本にしたら殿下が死にます!」
だから、アーシア様ってどれだけですの?!
~フィーラの疑惑~
「わたくしへのお手紙や贈り物ってご自分で選んで下さっていましたの?」
「えっ、普通はそうするんじゃないの?」
「いえ、そうなんですけれど·····
お手紙の内容が·····」
「内容?
何か変な事書いてた?
会ってる時にはちゃんと話せないから、手紙で伝えようとして書きすぎたかな。
ごめん、もう少し短くするよ。」
「いいえ!とても心のこもった文章で嬉しかったですわ。
わたくしのお手紙が素っ気なくないかと不安になりましたの。」
「なんだ、そんなの気にしたことないよ。
フィーラの文章は簡潔でとてもわかりやすいよ。」
(二重人格ではありませんでしたわ)
•*¨*•.¸¸♬︎
読んでいただきありがとうございます*.(๓´͈ ˘ `͈๓).*
フィーラ編はこれで終了、次回のマリン編は11月11日9時に投稿します。よろしくお願いします(o_ _)o
ラゼントリオ邸は白亜の館で中は豪華ではありませんが、品良く整えられていました。
応接間に通され先に来て上座の椅子に座る殿下の右隣にシリル様、左隣にアジス様が立っておられ、右横の長椅子にはカルゼ様とアーシア様が座られていました。
カーテシーをして向かいに腰掛けさせて頂き、アジス様が仰っていた香水を何点かとブレスレットやブローチ等も持ってきて下さいました。
豪華すぎず、小ぶりな宝石の付いたアクセサリーは王妃様に似合う流行をおさえた品ばかりです。
わたくしも女性、美しい物にはやはり胸が高鳴ってしまいます。
アーシア様はそんなわたくしの様子を見ていたのでしょう、アジス様に目配せしてアジス様がわたくしの近くに殿下の色の宝石がついた花のピアスやネックレスも置いてくれました。
アーシア様、準備していましたのね。
しかもわたくしの好みをご存知でしたのね。
アーシア様は学園の時とは違い柔らかな微笑みで商品の説明をしていきます。
押し付けるような感じはなく、説明された商品を身に付けて出かけた時の情景を伝えてきて、わたくしもその景色を思い浮かべて心が弾んでしまいました。
ラグナ殿下も聴き入り購入してわたくしにプレゼントして下さったので、わたくしも殿下に紺碧のカフスを贈りました。
くぅ~、悔しいですがアーシア様のセールストークにまんまと乗ってしまいましたわ!
後から来たマリン様はご自分が最後に来たことに恐縮して何度も謝罪され、テーブルの上にある商品に目を輝かせ、わたくしと同じようにシリル様とプレゼントしあっておられました。
それから王妃様のお詫びの品を相談しながら、わたくしと殿下がネックレス、シリル様とマリン様がピアス、カルゼ様とアーシア様が髪飾りを選び、わたくしと殿下が代表して王妃様にお渡しする事になりました。
選び終えるとお茶とお菓子を用意して下さり、これもわたくし好みのお茶で思わず購入してしまいました。
マリン様も同じで全員の好みを把握してそれぞれ違うお茶を用意していると知り、ラゼントリオがなぜ大陸中に販路を広げられたかを実感致しましたわ。
敵認定されなくてこんなに安心した相手はいませんわよ!
高位貴族の嗜好まで把握しているなんて有り得ませんから!!
お茶を飲み終わり殿下とわたくしは防音されたお部屋に案内され、わたくしの専属侍女と殿下にはアジス様が付き、人払いをされました。
「これから話す事は王家に関係するから、他言無用にして欲しい。」
殿下がわたくしの専属侍女をチラリと見て仰いました。
「彼女はわたくしの小さい頃から侍女として仕えてくれていますので安心して下さいませ。」
侍女のサマンサが殿下にお辞儀しました。
「こちらでも身元を確認しています。」
·····アジス様、さらっと他家の使用人を調べたって報告しないで下さい!
殿下も普通に頷かないでください!
ラゼントリオ怖すぎます!!
「僕がフィーラと婚約したのは兄上を抑える為だったんだ。」
えっ、ちょっと待ってください!
まだこっちはラゼントリオに慄いているのに、もっと凄い爆弾を落としてきましたわ。
「ど、どういう事ですの?」
意味がわからないんですが?
「アーシア嬢も言っていたように王太子妃は歴史はあるけど権力のあまりない侯爵家の出で、兄上の望むような後ろ盾にはならないからアーシア嬢や多くの騎士を輩出して情報網を築いているマリン嬢、国内最大派閥のフィーラを欲しがっている。
僕達の婚約が破談になれば義姉上を側妃に落とし、フィーラを正妃にマリン嬢を側妃に迎えて、ご自身の代で王権を強化して、誰も逆らえない権力を持ちたいと画策しているらしい。」
「まさか?!」
確かに王太子妃セリア様のご実家、タンゼル侯爵家は建国から続く家柄ですが、派閥争いから一線を置き領地を堅実に守っています。
「王太子殿下ご自身が妃殿下を望まれて結婚されたのでしょう?子ができない妃殿下を庇って差し上げて夫婦仲は良好に見えましたが·····」
「僕もそう思っていたからフィーラとの婚約が決まった時に兄夫婦に亀裂ができるんじゃないかと心配していたし後継者争いの火種になるとも思ったんだ。
僕は王になる器ではないし能力もない。
陛下が僕に後ろ盾をつける意味がわからなかった。
聞いても国の為だとしか言われなかったし。
兄上の治世を邪魔しないように臣籍降下したかったけど、スペアとしての役割があるからできない。
王族に残るなら出来るだけ権力を持たないようにしたかったんだけど·····」
そこでアジス様をチラリと見てアジス様は苦笑されました。
「王太子殿下のご友人もラグナ殿下のご友人程の権力を持っていないのですね。」
なまじラグナ殿下の時にカルゼ様やシリル様やアーシア様が生まれたのが、王太子殿下の悲劇ですわ。
しかもアーシア様は王太子殿下を嫌っておられるご様子ですもの。
「ではカルゼ様達と距離を置けばよかったのでは?」
あら、アジス様がますます困ったお顔になりましたわ?
「ーーれたんだ。」
「えっ?」
殿下、なぜ小声になりますの?
「アーシア嬢にボコられたんだ!」
ボ、ボコられた?
意味不明ですわ·····
わたくしが唖然としていたらアジス様が殿下の言葉を引き取ってくれました。
「ラグナ殿下が説明しづらいので、僕が説明します。
殿下が10才の時に僕たちを避けだしたんです。
そんな殿下の態度に姉は一週間で切れて殿下をボコり理由を聞き出しました。
そしてその程度でビビる様な男が国を引っ張って行けるか。私の友達は私が決める!と宣言しました。
遊び相手として不敬罪に問われないと両陛下から言われていたので、姉は昔から殿下に対して少し·····拳の付き合いが·····ちょっと多かったのです·····」
「少し?!
あの後三日はベッドから起き上がれなかったんだぞ!
しかも僕がベッドに寝込んでる時に僕のお見舞いの果物をお前たちだけ食べて僕にくれなかった!!」
「姉上が殿下にやるなと言われたんですよ。
殿下が友達やめるとか言うから姉上は傷ついたそうです。もちろん僕達も。」
「僕は物理的に傷ついていたんだ!
その横でキャッキャしながら好物を食べられてみろ、お前たちに殺意が湧いたぞ!!」
「そのおかげで姉上の機嫌がなおったんですから。
切れたままならアレがエンドレスでしたよ。」
「ああ、そうだな·····
もう二度とシーちゃんを本気で怒らせたくはない·····」
「本当に·····」
二人で遠い目をしてどこにイッていますの?!
というよりアーシア様、何なさっていますの!
王子を三日も寝込ませるって·····
この時は殿下はご自分が転んで怪我をしたと主張されたので、アーシア様は咎められなかったそうですが·····
「まあ、そういう訳で未だに殿下と友人付き合いをしています。」
今まで殿下とアーシア様の仲を疑っていましたが、本っ当に友人でしたのね、しかも拳の付き合い·····
わたくしも思考が遠くに飛びそうですわ。
その思考を戻して下さったのは殿下の言葉でした。
「せめてフィーラとは距離を置こうと思って。
政略だからそんなに親しくならなくてもいいかなと思ったんだ。」
いいかな?
巫山戯ていますの?
良い訳ありませんわよ!
わたくしの額の青筋に気づいたのか、急いで言い訳をなさいました。
「今は本当に悪かったと思ってる!
僕の軽率な考えでフィーラを傷つけてしまった。
フィーラからしたら僕は最低の屑男だって自覚してる。
これからは少しでも信頼されるように頑張っていきたい。
浮気だと思われるような行動を取らず、フィーラだけを大切にする。
兄上と結婚したいなら身を引くけど、そうじゃないなら僕と結婚して欲しい。
君が少しでも心穏やかに過ごせるように全力を尽くすよ。」
この方って本当に箱入り王子ですのね。
貴方と結婚したら心穏やかな生活なんて過ごせませんわよ。
「·····このお話をされたいから王宮でもわたくしの邸でもなく、ネズミのいないラゼントリオにしましたのね。」
「ああ、王宮は父上と母上の所でしか人払い出来ないし、下手に人払いなんかしたら兄上に勘繰られる。
グラント公爵家では時間がなくて誰がネズミかわからなかったんだ。」
はぁー、王子妃だけでも大変なのに物凄く厄介になっていますわ。
「両陛下は王権を強くするおつもりはないのですね。」
「父上達は国王は貴族のバランスを取る調整役でそれ以上でも以下でもないと考えておられる。
兄上は次代の君主に相応しいけれど、慈悲のなさに危惧されてもいるんだ。
兄上が暴君にならないよう牽制の為に僕の周囲にフィーラやカルゼ達をそばに据えたのに、僕が気づかず勝手な行動ばかりしていたから、母上が動いてしまったんだ。」
こんなお話を聞けば王太子殿下と結婚なんて絶対にしたくありませんわよ。
出来上がってる欠陥人間に嫁ぐくらいならまだ調教、コホン、矯正できる箱入り甘ちゃん殿下の方が良いですわ。
·····ああ、さようなら、わたくしの平穏。
こんにちは、怒涛の人生。
「最後に、シフォンの事は吹っ切れていますの?」
これからこの方と人生を歩むなら、せめて女性関係で悩みたくありませんわ。
「シフォンは憧れだったんだ。貴族なのにあんな風に自由な行き方ができるなんて羨ましくて、彼女の話を聞いて僕もそう生きれたらって想像するのが楽しかった。
街を一人で自由に歩いて毒を怖がらずに屋台のご飯を食べて沢山の人と何も気にせず喋ったり笑ったりして。
·····馬鹿だよね、僕が王籍から外れたらすぐに殺されるのに。」
·····それって女性としての憧れではなく人としての憧れではなくて?
一人って、今の想像の中に男女のイチャイチャがないのでは?
アジス様を見るとやっぱり困ったお顔。
知っていましたのね。
ラグナ殿下はアーシア様に負けず劣らず恋愛感情未発達だったのですね。
殿下、わたくしは泣き笑いのお顔なんて見たくありませんのよ。
「ラグナ殿下、生まれは選べませんが生き方は選べますのよ。
確かに貴方は不自由なご身分で厄介なお兄様がいらっしゃいますけれど、それでもご自分の生き方はご自分で努力して勝ち取らなければ。
殿下が努力するのならわたくしもお手伝いしますわ。」
殿下は目をぱちくりとされた後、はにかんで下さいました。
「ありがとう、僕もフィーラが自由に生きられるように全力で守ると誓うよ。」
わたくしもアーシア様の事は言えませんわ。
この笑顔に絆されそうですもの。
仕方ありませんわね。
わたくしもこの国の公爵令嬢として腹を括りましょう。
もちろん殿下もですわよ。
今のラグナ殿下には恋愛感情も信頼もありませんから、これから頑張って頂きますわ。
わたくしだけ頑張るのは違いますでしょう?
この決断を後悔する日が来ないように、二人で頑張りたいのです。
だからどんな時もわたくしの目を逸らさずに見てくださいね、今のように。
わたくし、初めてラグナ殿下に触れられたように感じられますわ。
少し気恥ずかしくなってきたので、話をそらしましょう。
何かないかしら。
何か·····あ、ありました。
「貴族でもアーシア様のように傍若無···自由な方が傍にいらっしゃるじゃありませんか。」
そうですわ、小さい頃からあれほど好き勝手に生きていらっしゃる見本がいるではありませんか。
「シーちゃんは規格外だから!」
「姉上を手本にしたら殿下が死にます!」
だから、アーシア様ってどれだけですの?!
~フィーラの疑惑~
「わたくしへのお手紙や贈り物ってご自分で選んで下さっていましたの?」
「えっ、普通はそうするんじゃないの?」
「いえ、そうなんですけれど·····
お手紙の内容が·····」
「内容?
何か変な事書いてた?
会ってる時にはちゃんと話せないから、手紙で伝えようとして書きすぎたかな。
ごめん、もう少し短くするよ。」
「いいえ!とても心のこもった文章で嬉しかったですわ。
わたくしのお手紙が素っ気なくないかと不安になりましたの。」
「なんだ、そんなの気にしたことないよ。
フィーラの文章は簡潔でとてもわかりやすいよ。」
(二重人格ではありませんでしたわ)
•*¨*•.¸¸♬︎
読んでいただきありがとうございます*.(๓´͈ ˘ `͈๓).*
フィーラ編はこれで終了、次回のマリン編は11月11日9時に投稿します。よろしくお願いします(o_ _)o
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