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番外編
わたくしと婚約者〜フィーラ視点〜(2)
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お父様があんな事を言うから気になって会う度に観察してしまいますわ。
今日も特Aから殿下達が出てくるのを見てしまいました。
相変わらず殿下とシリル様はシフォンと楽しそうですわね!
·····あら?
カルゼ様とアジス様は殿下の後ろで二人でお話しておりますわ。
その後もシフォンが主に話しているのは殿下とシリル様だけで、大抵カルゼ様とアジス様が二人で会話しているよう。
アジス様はわたくしに気づくと必ず会釈をしてくださいます。
あの方って可愛らしいお顔立ちで成績も学年一位なのに、目立たないのですわ。
気配を感じさせないといいましょうか、周囲に溶け込んでいるような感じです。
カルゼ様は周囲に興味がなさそうな、時々キョロキョロしては落ち込んでいらっしゃるようです。
よくわからない方ですわ。
殿下もお昼休みは特Aでシフォンと過ごしていますが、放課後は密会などせずに王宮に帰っている様子です。
相変わらず殿下とのお茶会は微妙ですが、お手紙は気持ちが篭っているんですのよね。
季節の変わり目には体調を気にしたり、わたくしが好きな花がそろそろ咲く時期だからとその花を贈ってくれたり。
わたくしに興味があるのかないのかわかりませんわ!
本当に二重人格ですの?!
そんな悩みを抱えて日々を過ごしていたら、お昼休みに殿下がお顔を強ばらせてわたくしのクラスに来られました。
今まで殿下が学園でわたくしに会いに来てくれた事などなかったので、殿下がわたくしに近づいて来るのにドクドクと心臓が脈打つのを感じる程動揺してしまいました。
「フィーラ、一緒にランチを食べてくれないか?」
殿下が手を差し出してくれました。
その手が僅かに震えているのを見て、他の生徒がそれに気付かないように手を添えると肩の力が抜けたように感じます。
何を言われるのだろうと緊張して特Aに向かっていると、シリル様とマリン様に会い、わたくしは驚きに目を見開いてしまいましたわ。
だってシリル様の両頬がパンパンに腫れて右腕は布で吊るしているのです。
マリン様と目が合って会釈してきたので返してそのまま歩き始めましたが、まさかマリン様がシリル様を?
気になりましたが特Aに入るとそれ所ではなくなりました。
部屋にはシフォンが居らずカルゼ様とアジス様、そしてアーシア様がおられました。
わたくしは思わず「どうして貴女がいるのかしら。」と不満をぶつけてしまいました。
よく考えたらカルゼ様の婚約者はアーシア様なんだから、居られてもおかしくはないのにーー
でもマリン様も皮肉を仰っていたから、婚約前の噂を気にしておられるのだと察しました。
シリル様もアーシア様の婚約者になると言われてましたものね。
気にしてないつもりでも気にしていたのね。
殿下に好意を持っていない筈なのにーー
その後もアーシア様が王妃陛下に頼まれてわたくし達を呼んだと言われて、ラグナ殿下の婚約者であるわたくしを差し置いてと負の感情を抑えられずにいました。
食事も砂を噛むようでこの時間が苦痛だったので、お茶を飲む段になってやっとアジス様が給仕をしてくれているのに気付きお礼を言おうとしましたが、アーシア様が先にアジス様に視線で感謝を表していました。
本来ならわたくしやマリン様がアジス様の気遣いに感謝を述べなければならなかったのにーー
自己嫌悪と苛立ちのまま殿下がわたくしを呼んだ理由を問い質していました。
殿下は今までの行いを謝って下さり、わたくしとの婚約を殿下有責で解消すると仰って下さいました。
わたくしが躊躇った婚約解消をいとも簡単に口にされる殿下に怒りと失望が湧き上がります。
殿下にとってわたくしとの婚約はそんなに軽いものでしたの?
そんなにシフォンが宜しいの?
それともアーシア様が?
殿下がわたくしの気持ちを知りたいと言われますが、こんな醜い感情をぶつける等できる筈がありません。
これではわたくしが殿下に未練があるみたいに思われます。
わたくしはテーブルの下に置いてある両手を握りしめ、何も感じていないフリをしました。
それはわたくしの矜恃を守る為だったのですが、マリン様もシリル様の言葉に興味がないように返していました。
わたくしとマリン様は席を立ちカーテシーをして出ていこうとすると殿下がわたくしを愛称で呼び、止まりかける足を無理やり動かして扉の取っ手を掴んだ時に、アーシア様の王妃陛下にわたくし達の言動を報告すると言われ、頭に血が上り咄嗟にアーシア様に噛み付いてしまいました。
そしてマリン様もアーシア様に向かって「悪名高いラゼントリオ」と言ってしまったのです。
アーシア様は笑顔でわたくし達を見ましたが、目が笑っていません!
その冷酷な微笑みにマリン様だけでなく、わたくしまで恐怖で動けなくなり、アーシア様がこちらに近づいてくるのに関係ないわたくしまで飲み込まれるのではないかと思ってしまいました。
アーシア様とマリン様の間にシリル様が立ちはだかり、彼女を庇った事で一旦は矛を収めましたが、それで済むとはとても思いません。
お父様がラゼントリオに喧嘩を売るなと必死に言った意味が分かりました。
伯爵とはいえ国内外に大きな商会を持ち、幅広い人脈があるラゼントリオ家。
当主は冷酷で非情、緑の悪魔だと噂されていますが、お父様からの反応であながち間違ってもいないでしょう。
アーシア様も学園に通いながら幾つもの商談を成功させていると聞いています。
そして先程の冷笑に確実にその血が流れていると感じました。
アーシア様を本気で怒らせればフォルツ家はどうなるのでしょう。
そしてわたくしは?
先程から一方的な敵意を剥き出しにしていたわたくしにもアーシア様は怒っておられるのでしょうか。
今更ながら王妃様の配慮を無下にし、ラゼントリオ家に喧嘩を売った形になりどうしていいかわからなくなりました。
自分の失態に足下から冷たくなっていきます。
その時にアジス様が助け手を出してくれました。
この方こそ関係ないのに給仕をして下さったり、わたくしの軽率な行動を引き止めて下さる。
情けないですが、今はアジス様にお言葉に甘えさせて頂き、後でしっかりお礼を致しましょう。
そして開き直ってラグナ殿下に言いたい事を言ってしまいましょう。
ラグナ殿下はお会いする時の微妙な態度はわかっておられたようですが、シフォンの件でわたくしが笑い者にされているのに昨日知ったと言われ呆れました。
どれだけ自覚がありませんの?
シリル様も同じでマリン様の怒りが爆発していますわ。
わたくし個人の希望を聞いてきましたので思わず「破滅してくれません?」と言ってしまいましたわ。
殿下は馬鹿正直に「できるだけ望みを叶える」と仰いましたが、別に本気ではありません。
わたくしも世間知らずですが殿下は輪をかけて世間知らずですわ。
両陛下に愛されているラグナ殿下を破滅させようとすれば先にこちらが終わりますわよ。
こんな風で王子として大丈夫かしら。
ちょっとイラッときたので言いたい放題にマリン様と言っていたら、いきなりアーシア様が叫び出しました。
何事ですの?!
呆気に取られましたがその後のカルゼ様とアジス様の発言で、アーシア様が婚約者を蔑ろにしていたと気づきました。
そしてその後のカルゼ様とのやり取りは茶番でしたわ。
それにしてもカルゼ様ってちょっと腹黒くありません?
女の武器の涙を使うって···
それに絆されるアーシア様に吃驚ですわよ!
後で殿下にアーシア様の弱点がカルゼ様の涙だと聞いて、カルゼ様の形振り構わない腹黒さに別の意味で鳥肌がたちましたわ!
わたくしとマリン様は二人の茶番に毒気を抜かれて、殿下とシリル様には償いを考えて頂くことになりました。
全部は言えませんでしたがかなり吐き出してスッキリしましたーーと思ったら勘違い女シフォンの登場。
さあ殿下、ここでこの女の勘違いを正して頂きましょう。
そうでなければシフォンの将来だけでなく、ハウゼン男爵家にも累が及びます。
この階級社会で公、侯爵家の令嬢に対しての不遜な態度は、一個人だけでなく家にまで響くのですから。
今なら殿下の出方次第で手打ちにできます。
わたくしの内心を読んだのかどうかは知りませんが、見事に溜飲を下げて下さいました。
今までのシフォンの態度に意趣返しできましたし、男爵家を潰さないようお父様に報告できます。
育て方の失敗は男爵夫妻に、増長させた責任は殿下にとって頂きますわ。
わたくしも醜い嫉妬だと、勘繰りすぎだと非難されるのが怖くて注意しませんでした。
反省しなければなりません。
翌日から殿下達と特Aで一緒にお昼を頂くことになりました。
ぎこちなくではありますが殿下はわたくしと向き合おうと努力されています。
数日してアジス様がわたくしとマリン様にアーシア様が悩んでいるので聞いてあげて欲しいと頼まれました。
わたくしはマリン様とお顔を見合わせ、とりあえず了承しましたが、アーシア様の悩みをわたくしやマリン様が解決できるかしら?
アーシア様のお悩みはカルゼ様との、その、一歩踏み込んだ関係でしたわ·····
アジス様、先にそれとなくでもよろしいから伝えておいて欲しかったですわー!
でもあのアーシア様が怯えられるなんて·····
しかもお話していると男女の機微に疎いといいますか、恋愛面ではお子様並に発育不良のようです。
それなのに一足飛びに男女の関係になるのは無理ですわよ、カルゼ様!
まあ、カルゼ様はアーシア様と幼なじみですからアーシア様の事は熟知していらっしゃるでしょうし、アーシア様が嫌がる様な真似はなさらないでしょう·····多分。
ここ数日見ていましたがアーシア様しか目に入っていらっしゃいませんもの。
あの腹黒、コホン、一途なカルゼ様ならアーシア様の不安をゆっくり取り除いて手篭めにされるでしょう。
恋愛お子様のアーシア様には気の毒ですが·····
マリン様の急所を蹴れというアドバイスにアーシア様は賛同されてカルゼ様の邸に行かれましたが、どれだけ武闘派ですの?!
心配して離れて見守っていたアジス様は相変わらず少し困ったお顔。
なにかとフォローしてくれる弟君がおられるから、ああも自由なのかしら。
わたくしにもアジス様のような弟が欲しいわ。
ちょっと困ったお顔がデフォルトっぽいのが、ご苦労を匂わせて哀れさを誘いますがーー
アジス様、本当にわたくしと同い年なのかしら?
今日も特Aから殿下達が出てくるのを見てしまいました。
相変わらず殿下とシリル様はシフォンと楽しそうですわね!
·····あら?
カルゼ様とアジス様は殿下の後ろで二人でお話しておりますわ。
その後もシフォンが主に話しているのは殿下とシリル様だけで、大抵カルゼ様とアジス様が二人で会話しているよう。
アジス様はわたくしに気づくと必ず会釈をしてくださいます。
あの方って可愛らしいお顔立ちで成績も学年一位なのに、目立たないのですわ。
気配を感じさせないといいましょうか、周囲に溶け込んでいるような感じです。
カルゼ様は周囲に興味がなさそうな、時々キョロキョロしては落ち込んでいらっしゃるようです。
よくわからない方ですわ。
殿下もお昼休みは特Aでシフォンと過ごしていますが、放課後は密会などせずに王宮に帰っている様子です。
相変わらず殿下とのお茶会は微妙ですが、お手紙は気持ちが篭っているんですのよね。
季節の変わり目には体調を気にしたり、わたくしが好きな花がそろそろ咲く時期だからとその花を贈ってくれたり。
わたくしに興味があるのかないのかわかりませんわ!
本当に二重人格ですの?!
そんな悩みを抱えて日々を過ごしていたら、お昼休みに殿下がお顔を強ばらせてわたくしのクラスに来られました。
今まで殿下が学園でわたくしに会いに来てくれた事などなかったので、殿下がわたくしに近づいて来るのにドクドクと心臓が脈打つのを感じる程動揺してしまいました。
「フィーラ、一緒にランチを食べてくれないか?」
殿下が手を差し出してくれました。
その手が僅かに震えているのを見て、他の生徒がそれに気付かないように手を添えると肩の力が抜けたように感じます。
何を言われるのだろうと緊張して特Aに向かっていると、シリル様とマリン様に会い、わたくしは驚きに目を見開いてしまいましたわ。
だってシリル様の両頬がパンパンに腫れて右腕は布で吊るしているのです。
マリン様と目が合って会釈してきたので返してそのまま歩き始めましたが、まさかマリン様がシリル様を?
気になりましたが特Aに入るとそれ所ではなくなりました。
部屋にはシフォンが居らずカルゼ様とアジス様、そしてアーシア様がおられました。
わたくしは思わず「どうして貴女がいるのかしら。」と不満をぶつけてしまいました。
よく考えたらカルゼ様の婚約者はアーシア様なんだから、居られてもおかしくはないのにーー
でもマリン様も皮肉を仰っていたから、婚約前の噂を気にしておられるのだと察しました。
シリル様もアーシア様の婚約者になると言われてましたものね。
気にしてないつもりでも気にしていたのね。
殿下に好意を持っていない筈なのにーー
その後もアーシア様が王妃陛下に頼まれてわたくし達を呼んだと言われて、ラグナ殿下の婚約者であるわたくしを差し置いてと負の感情を抑えられずにいました。
食事も砂を噛むようでこの時間が苦痛だったので、お茶を飲む段になってやっとアジス様が給仕をしてくれているのに気付きお礼を言おうとしましたが、アーシア様が先にアジス様に視線で感謝を表していました。
本来ならわたくしやマリン様がアジス様の気遣いに感謝を述べなければならなかったのにーー
自己嫌悪と苛立ちのまま殿下がわたくしを呼んだ理由を問い質していました。
殿下は今までの行いを謝って下さり、わたくしとの婚約を殿下有責で解消すると仰って下さいました。
わたくしが躊躇った婚約解消をいとも簡単に口にされる殿下に怒りと失望が湧き上がります。
殿下にとってわたくしとの婚約はそんなに軽いものでしたの?
そんなにシフォンが宜しいの?
それともアーシア様が?
殿下がわたくしの気持ちを知りたいと言われますが、こんな醜い感情をぶつける等できる筈がありません。
これではわたくしが殿下に未練があるみたいに思われます。
わたくしはテーブルの下に置いてある両手を握りしめ、何も感じていないフリをしました。
それはわたくしの矜恃を守る為だったのですが、マリン様もシリル様の言葉に興味がないように返していました。
わたくしとマリン様は席を立ちカーテシーをして出ていこうとすると殿下がわたくしを愛称で呼び、止まりかける足を無理やり動かして扉の取っ手を掴んだ時に、アーシア様の王妃陛下にわたくし達の言動を報告すると言われ、頭に血が上り咄嗟にアーシア様に噛み付いてしまいました。
そしてマリン様もアーシア様に向かって「悪名高いラゼントリオ」と言ってしまったのです。
アーシア様は笑顔でわたくし達を見ましたが、目が笑っていません!
その冷酷な微笑みにマリン様だけでなく、わたくしまで恐怖で動けなくなり、アーシア様がこちらに近づいてくるのに関係ないわたくしまで飲み込まれるのではないかと思ってしまいました。
アーシア様とマリン様の間にシリル様が立ちはだかり、彼女を庇った事で一旦は矛を収めましたが、それで済むとはとても思いません。
お父様がラゼントリオに喧嘩を売るなと必死に言った意味が分かりました。
伯爵とはいえ国内外に大きな商会を持ち、幅広い人脈があるラゼントリオ家。
当主は冷酷で非情、緑の悪魔だと噂されていますが、お父様からの反応であながち間違ってもいないでしょう。
アーシア様も学園に通いながら幾つもの商談を成功させていると聞いています。
そして先程の冷笑に確実にその血が流れていると感じました。
アーシア様を本気で怒らせればフォルツ家はどうなるのでしょう。
そしてわたくしは?
先程から一方的な敵意を剥き出しにしていたわたくしにもアーシア様は怒っておられるのでしょうか。
今更ながら王妃様の配慮を無下にし、ラゼントリオ家に喧嘩を売った形になりどうしていいかわからなくなりました。
自分の失態に足下から冷たくなっていきます。
その時にアジス様が助け手を出してくれました。
この方こそ関係ないのに給仕をして下さったり、わたくしの軽率な行動を引き止めて下さる。
情けないですが、今はアジス様にお言葉に甘えさせて頂き、後でしっかりお礼を致しましょう。
そして開き直ってラグナ殿下に言いたい事を言ってしまいましょう。
ラグナ殿下はお会いする時の微妙な態度はわかっておられたようですが、シフォンの件でわたくしが笑い者にされているのに昨日知ったと言われ呆れました。
どれだけ自覚がありませんの?
シリル様も同じでマリン様の怒りが爆発していますわ。
わたくし個人の希望を聞いてきましたので思わず「破滅してくれません?」と言ってしまいましたわ。
殿下は馬鹿正直に「できるだけ望みを叶える」と仰いましたが、別に本気ではありません。
わたくしも世間知らずですが殿下は輪をかけて世間知らずですわ。
両陛下に愛されているラグナ殿下を破滅させようとすれば先にこちらが終わりますわよ。
こんな風で王子として大丈夫かしら。
ちょっとイラッときたので言いたい放題にマリン様と言っていたら、いきなりアーシア様が叫び出しました。
何事ですの?!
呆気に取られましたがその後のカルゼ様とアジス様の発言で、アーシア様が婚約者を蔑ろにしていたと気づきました。
そしてその後のカルゼ様とのやり取りは茶番でしたわ。
それにしてもカルゼ様ってちょっと腹黒くありません?
女の武器の涙を使うって···
それに絆されるアーシア様に吃驚ですわよ!
後で殿下にアーシア様の弱点がカルゼ様の涙だと聞いて、カルゼ様の形振り構わない腹黒さに別の意味で鳥肌がたちましたわ!
わたくしとマリン様は二人の茶番に毒気を抜かれて、殿下とシリル様には償いを考えて頂くことになりました。
全部は言えませんでしたがかなり吐き出してスッキリしましたーーと思ったら勘違い女シフォンの登場。
さあ殿下、ここでこの女の勘違いを正して頂きましょう。
そうでなければシフォンの将来だけでなく、ハウゼン男爵家にも累が及びます。
この階級社会で公、侯爵家の令嬢に対しての不遜な態度は、一個人だけでなく家にまで響くのですから。
今なら殿下の出方次第で手打ちにできます。
わたくしの内心を読んだのかどうかは知りませんが、見事に溜飲を下げて下さいました。
今までのシフォンの態度に意趣返しできましたし、男爵家を潰さないようお父様に報告できます。
育て方の失敗は男爵夫妻に、増長させた責任は殿下にとって頂きますわ。
わたくしも醜い嫉妬だと、勘繰りすぎだと非難されるのが怖くて注意しませんでした。
反省しなければなりません。
翌日から殿下達と特Aで一緒にお昼を頂くことになりました。
ぎこちなくではありますが殿下はわたくしと向き合おうと努力されています。
数日してアジス様がわたくしとマリン様にアーシア様が悩んでいるので聞いてあげて欲しいと頼まれました。
わたくしはマリン様とお顔を見合わせ、とりあえず了承しましたが、アーシア様の悩みをわたくしやマリン様が解決できるかしら?
アーシア様のお悩みはカルゼ様との、その、一歩踏み込んだ関係でしたわ·····
アジス様、先にそれとなくでもよろしいから伝えておいて欲しかったですわー!
でもあのアーシア様が怯えられるなんて·····
しかもお話していると男女の機微に疎いといいますか、恋愛面ではお子様並に発育不良のようです。
それなのに一足飛びに男女の関係になるのは無理ですわよ、カルゼ様!
まあ、カルゼ様はアーシア様と幼なじみですからアーシア様の事は熟知していらっしゃるでしょうし、アーシア様が嫌がる様な真似はなさらないでしょう·····多分。
ここ数日見ていましたがアーシア様しか目に入っていらっしゃいませんもの。
あの腹黒、コホン、一途なカルゼ様ならアーシア様の不安をゆっくり取り除いて手篭めにされるでしょう。
恋愛お子様のアーシア様には気の毒ですが·····
マリン様の急所を蹴れというアドバイスにアーシア様は賛同されてカルゼ様の邸に行かれましたが、どれだけ武闘派ですの?!
心配して離れて見守っていたアジス様は相変わらず少し困ったお顔。
なにかとフォローしてくれる弟君がおられるから、ああも自由なのかしら。
わたくしにもアジス様のような弟が欲しいわ。
ちょっと困ったお顔がデフォルトっぽいのが、ご苦労を匂わせて哀れさを誘いますがーー
アジス様、本当にわたくしと同い年なのかしら?
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