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どきどき★メイド生活スタート(これはトキメキではなく動悸の方)
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陽はどっぷりと地平線の彼方に沈み、月が天辺で輝く夜中。ララは既にナイトキャップを被りあとはベッドに直行するだけだったトーマスへと突撃していた。
「ちょっとぉ!トーマスさん!母との契約についてちゃんと教えてくれます!?私、別にメイド業しなくていいんじゃないですか!?!?」
「むにゃ…ララさん、淑女がそう夜に殿方の部屋へ一人で来るものじゃありませんよ」
「それはそれ!これはこれ!今大事なのは私の体面じゃなくて、契!約!内!容!」
「…ぐぅ」
「わざとらしく寝ないで!!」
ララはトーマスの無駄に可愛らしいパジャマの胸ぐらを掴みかからんばかりの勢いで捲し立てる。
「…そう大声を出されますと、ご主人様がお目覚めに」
「!!」
トーマスのその一言にララはぎょっと目を剥くとすぐさま自身の口を両手で覆う。
トーマスはそんなララの様子に苦笑をこぼすと、ララにソファーへ座るように勧めて自身も向かいのソファーに腰を落ち着ける。
「確かに、ララさんの母君である魔女クローディア様との契約において、ララさんの労働には言及されておりません」
「! じゃあ、」
「でも、ララさんの母君には筆舌に尽くしがたい被害を受けたわけですしな~こちらは~。それに由緒正しい伯爵家の家宝である壺も割られてしまいましたしな~ララさんの母君に~とほほ」
「ゔっ…」
「先代に合わせる顔がありませんなぁ…あの壺は特に先代のお気に入りで…ああっ!先代の奥方様が丁寧に丁寧に、それはもう心を込めてお世話をしていた庭園も粉々に…」
「ゔゔっ!」
「たった一人のご子息であらせられるシリウス様を任されたというのにこの老体はその約束すら守れず…!!ああっ、それどころかこの老体一人ではご主人様を守るどころか満足なお世話さえも!!!」
「っ分かりました!分かりましたから!メイド業しますから!!!」
「あっ、そうですか。それは良かったです」
「…このジジィをどこまで信じていいんだろう」
「なにか?」
「いいえなにも」
目に涙を浮かべ、ドサッ!と膝からその場に崩れ落ちたトーマスにララはほぼ条件反射に承諾の返事をしてしまう。が、それを聞くやすぐに立ち上がりけろりとソファーに座り直すトーマスにララは自分の顔が引き攣るのを感じる。
「はぁぁ…」
ため息を吐く立ったままのララを見て肩をすくめたトーマスはそれまでのどこか飄々とふざけた雰囲気を抑えると、一度ゆっくりとまばたきをしてから真剣な眼差しでララを見つめる。
「…ララさんは、そんなにご主人様が恐ろしいですか?メイドとして近付く機会があるのを厭うほどに」
「それは、その…」
「ご主人様の見た目こそ恐ろしげな獣ですが、あれで人間の理性はありますから噛みませんよ」
「だから、別に伯爵自体が怖いんじゃなくって!」
すう、とララは腹に力を込めて息を吸う。
「私は動物全般が、怖いんだってばあ!!!」
ララの魂の叫びに、「夜中にうるせえ!!!」と当然シリウスの部屋から怒りの雄叫びと共に何か物が壊れる音が響いた。
「ちょっとぉ!トーマスさん!母との契約についてちゃんと教えてくれます!?私、別にメイド業しなくていいんじゃないですか!?!?」
「むにゃ…ララさん、淑女がそう夜に殿方の部屋へ一人で来るものじゃありませんよ」
「それはそれ!これはこれ!今大事なのは私の体面じゃなくて、契!約!内!容!」
「…ぐぅ」
「わざとらしく寝ないで!!」
ララはトーマスの無駄に可愛らしいパジャマの胸ぐらを掴みかからんばかりの勢いで捲し立てる。
「…そう大声を出されますと、ご主人様がお目覚めに」
「!!」
トーマスのその一言にララはぎょっと目を剥くとすぐさま自身の口を両手で覆う。
トーマスはそんなララの様子に苦笑をこぼすと、ララにソファーへ座るように勧めて自身も向かいのソファーに腰を落ち着ける。
「確かに、ララさんの母君である魔女クローディア様との契約において、ララさんの労働には言及されておりません」
「! じゃあ、」
「でも、ララさんの母君には筆舌に尽くしがたい被害を受けたわけですしな~こちらは~。それに由緒正しい伯爵家の家宝である壺も割られてしまいましたしな~ララさんの母君に~とほほ」
「ゔっ…」
「先代に合わせる顔がありませんなぁ…あの壺は特に先代のお気に入りで…ああっ!先代の奥方様が丁寧に丁寧に、それはもう心を込めてお世話をしていた庭園も粉々に…」
「ゔゔっ!」
「たった一人のご子息であらせられるシリウス様を任されたというのにこの老体はその約束すら守れず…!!ああっ、それどころかこの老体一人ではご主人様を守るどころか満足なお世話さえも!!!」
「っ分かりました!分かりましたから!メイド業しますから!!!」
「あっ、そうですか。それは良かったです」
「…このジジィをどこまで信じていいんだろう」
「なにか?」
「いいえなにも」
目に涙を浮かべ、ドサッ!と膝からその場に崩れ落ちたトーマスにララはほぼ条件反射に承諾の返事をしてしまう。が、それを聞くやすぐに立ち上がりけろりとソファーに座り直すトーマスにララは自分の顔が引き攣るのを感じる。
「はぁぁ…」
ため息を吐く立ったままのララを見て肩をすくめたトーマスはそれまでのどこか飄々とふざけた雰囲気を抑えると、一度ゆっくりとまばたきをしてから真剣な眼差しでララを見つめる。
「…ララさんは、そんなにご主人様が恐ろしいですか?メイドとして近付く機会があるのを厭うほどに」
「それは、その…」
「ご主人様の見た目こそ恐ろしげな獣ですが、あれで人間の理性はありますから噛みませんよ」
「だから、別に伯爵自体が怖いんじゃなくって!」
すう、とララは腹に力を込めて息を吸う。
「私は動物全般が、怖いんだってばあ!!!」
ララの魂の叫びに、「夜中にうるせえ!!!」と当然シリウスの部屋から怒りの雄叫びと共に何か物が壊れる音が響いた。
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