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第4篇 人類よ!跪いて愛を歌え!
第1話
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西暦2XXX年、地球は宇宙から突如飛来した謎の未確認生命体の侵略により未曾有の危機に陥っていた──!
地球人よりも遥かに高度な科学技術力、未確認の超能力を有するその一団の恐るべき力の前に、地球人はなす術もなく降伏するしかない…かと思われたその時!正義の超地球パワーを授かった5人の戦士が立ち上がった!
かくして悪の組織と正義のスーパーヒーロー達による地球を巡る熱い戦いの火蓋が切って落とされたのだった!
♦︎
「げーっげっげっげっ!」
「きゃああああ!か、怪人よー!悪の組織が出たわー!」
麗かな日差しの午後、沢山の人で賑わう青空マルシェに突如として下卑た笑い声と悲鳴が響き渡った。
「うわあああ!たっ、助けてくれえ~!」
「げーっ!!げーっ!!」
「やめてくれー!!」
人々の活気で溢れた騒がしくも楽しい青空マルシェは一瞬にして悪の組織の怪人達で溢れかえり、あちこちで人々がパニックを起こして逃げ惑う。
「そ、それは、それだけはやめてくれー!それは、それは…うちの最高級ブランド米なんだーっ!」
「ああっ!待って!ブランド牛の希少部位をたっぷり使ったうち自慢のコロッケを…っ!しかも揚げたてっ!」
「やめてーっ!今年は地球もお野菜が高騰してるのよー!!」
「げーっ!げっげっげっげっげっ!!!」
怪人達は超能力で人間達をあっという間に制圧し、惜しげもなく超技術を駆使して作り上げられた彼らの最新鋭機器で青空マルシェに並べられていた食料品を押収していく。
なす術もなく出品者達が手塩に掛けて育てた野菜や米、朝早くから起きて丁寧に作られた惣菜が人々の目の前で無慈悲にも怪人達の手に渡っていく。
もうどうする事も出来ないのか…と人々が泣く泣く膝を折り掛けたその時、溌剌とした希望に満ちた青年の声が響いた!
「待ちやがれ!!怪人達よ、この地球でお前等の好きにはさせないぜっ!!」
「ああっ!まさか君達は…っ!?」
「げーっ!?」
人々の希望を背負い、悪の組織と戦う正義の5人組が逆光を背に降り立つ!
「そりゃーっ!返せコロッケ!!俺も買おうと並んでたんだぞ!!」
燃える勇気を炎に変える!レッド!
「この最高のお米さ作るのに、地球人何千年の歴史があると思ってるんだべ!」
お米大好き!訛りが可愛いぞ!ピンク!
あとなんかブルー、グリーン、イエローの全部で5人!
「げっげーっ!!」
5人は華麗に怪人達の前に躍り出ると繰り出すパンチ!叩き込むキック!更には炸裂!正義の超地球パワー!で怪人達をバッタバッタと倒していく。そして青空マルシェに現れた怪人達をあっという間に制圧してみせると5人のヒーロー達は揃ってポーズを決める。
「お腹を空かせた怪人達よ!地球の食卓は俺達が守る!!」
人々がワッ!と歓声を上げてヒーロー達に拍手を送り、口々に賛辞を送る。怪人達は倒され、押収されていた食料品も無事人々の手に戻る…かと思いきや、玲瓏な声が空気を裂くように、静かに、けれど確かな苛烈さをもって人々の鼓膜を振るわせた。
「どうした怪人共!それでも貴様等は誇り高き我ら悪の組織の同胞か!」
「あっ!あれは…!」
青空マルシェを開催していた大きな公園の中央にある高い時計のモニュメントの上に、全身を黒く冷たい鎧に包み、ビロードのマントをはためかせる人物が1人。
「黒き稲妻…暗黒騎士、推参!!」
「お前は…っ、暗黒騎士、ダークナイト!!!」
「地球のヒーロー共よ!この俺が相手だ!参るっ!」
時計のモニュメントから暗黒騎士がジェット機もかくやという超スピードでレッド達に斬りかかる。
なんとか反応したレッド達だが、暗黒騎士1人相手にレッド達は5人全員でかかってもまるであしらわれるように手も足も出ない。
「くっ、この…っ!」
「きゃああ!」
「げー!げっげっげっ!」
暗黒騎士の登場によって倒されていた怪人達も復活し再び下卑た笑い声を上げる。
まるで美しい剣舞のように軽やかに、鮮やかに、一切止まる事なく剣を振るっていた暗黒騎士がふいに大きく後ろに跳躍して剣を構える。
「!?あ、あの構えは…!」
「遊びはここまでだ、小僧共!受けてみよ、我が剣の冴えを!」
「!!!」
暗黒騎士の必殺の一撃がレッド達に容赦なく襲いかかり、5人は地に倒れ伏す。それでも5人は使命に魂を燃やし、なんとか起き上がろうと砂を掴む。
その時、レッド達の戦闘を固唾を飲んで見守っていた人々がああっ!と一点を指し悲鳴をあげる。
「きゃああ!女性が…!女性が怪人に捕まっているわ!」
「いやあああ!誰か!誰か助けてあげて!!」
「ぅぐっ…!しまった!」
「ひ、人質さ取るなんて卑怯だべ!」
暗黒騎士を応援するように固まっていた怪人達の只中に、女性が1人蹲っている。
「なんだと!?くそ、怪人共め、勝手な事を…!」
人々の悲鳴に暗黒騎士は怪人達の方を振り返る。そして自身の意図せぬ事態に気付くと舌打ちをして咆哮をあげる。
「おい怪人共!!何をしている!この俺が人質などという真似をせねば勝てぬとでも言うつもりか!!この俺の騎士の誇りを汚す真似をするな!!!」
まさしく稲妻のような暗黒騎士の怒りの咆哮がビリビリと空気を震わせる。
「っ!?げっ、げーっ!げーっ!」
しかし怪人達は皆一様に慌てふためき、各々否定の意を込めて首や手を振る。不可解なその様子に、一体何が…と暗黒騎士が訝しんでいると、蹲っていた女性がおもむろに立ち上がり両手を上げる。
その手にきらきら、ぴかぴかにデコレーションされたハート型のうちわを持って。
「……イッ、イケメンが過ぎるっっ!!!」
「………は?」
「ななな、生推参頂きました──!!きゃー!耳が死亡っ!うそうそっ!今日はダークナイト様の必殺剣も見れちゃった…!どうしよう!好き!!ねえ見た!?見た!?やっばくない!?目にも止まらぬダークナイト様の必殺剣!!っていうか騎士の誇り…っ!うっ…もう涙出てくる…」
頬を真っ赤に染めた女性はきゃーきゃーと可愛らしい黄色い声をあげて横に居る怪人に捲し立てるように喋り続け、かと思えば涙を流してうちわをふるふると暗黒騎士に向けて振る。
「……貴様何をしている」
「ひっ!あっ、あっ…目!目が…合ってる…!きゃー!ダークナイト様ー!!好きです!!ファンサ下さいっ!!」
「………」
♦︎
これは選ばれしスーパーヒーロー達と悪の組織との地球を掛けた壮大な大活劇!!…ではなく、悪の組織の幹部とそんな彼に恋をした1人の女の子のおはなし。
地球人よりも遥かに高度な科学技術力、未確認の超能力を有するその一団の恐るべき力の前に、地球人はなす術もなく降伏するしかない…かと思われたその時!正義の超地球パワーを授かった5人の戦士が立ち上がった!
かくして悪の組織と正義のスーパーヒーロー達による地球を巡る熱い戦いの火蓋が切って落とされたのだった!
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「げーっげっげっげっ!」
「きゃああああ!か、怪人よー!悪の組織が出たわー!」
麗かな日差しの午後、沢山の人で賑わう青空マルシェに突如として下卑た笑い声と悲鳴が響き渡った。
「うわあああ!たっ、助けてくれえ~!」
「げーっ!!げーっ!!」
「やめてくれー!!」
人々の活気で溢れた騒がしくも楽しい青空マルシェは一瞬にして悪の組織の怪人達で溢れかえり、あちこちで人々がパニックを起こして逃げ惑う。
「そ、それは、それだけはやめてくれー!それは、それは…うちの最高級ブランド米なんだーっ!」
「ああっ!待って!ブランド牛の希少部位をたっぷり使ったうち自慢のコロッケを…っ!しかも揚げたてっ!」
「やめてーっ!今年は地球もお野菜が高騰してるのよー!!」
「げーっ!げっげっげっげっげっ!!!」
怪人達は超能力で人間達をあっという間に制圧し、惜しげもなく超技術を駆使して作り上げられた彼らの最新鋭機器で青空マルシェに並べられていた食料品を押収していく。
なす術もなく出品者達が手塩に掛けて育てた野菜や米、朝早くから起きて丁寧に作られた惣菜が人々の目の前で無慈悲にも怪人達の手に渡っていく。
もうどうする事も出来ないのか…と人々が泣く泣く膝を折り掛けたその時、溌剌とした希望に満ちた青年の声が響いた!
「待ちやがれ!!怪人達よ、この地球でお前等の好きにはさせないぜっ!!」
「ああっ!まさか君達は…っ!?」
「げーっ!?」
人々の希望を背負い、悪の組織と戦う正義の5人組が逆光を背に降り立つ!
「そりゃーっ!返せコロッケ!!俺も買おうと並んでたんだぞ!!」
燃える勇気を炎に変える!レッド!
「この最高のお米さ作るのに、地球人何千年の歴史があると思ってるんだべ!」
お米大好き!訛りが可愛いぞ!ピンク!
あとなんかブルー、グリーン、イエローの全部で5人!
「げっげーっ!!」
5人は華麗に怪人達の前に躍り出ると繰り出すパンチ!叩き込むキック!更には炸裂!正義の超地球パワー!で怪人達をバッタバッタと倒していく。そして青空マルシェに現れた怪人達をあっという間に制圧してみせると5人のヒーロー達は揃ってポーズを決める。
「お腹を空かせた怪人達よ!地球の食卓は俺達が守る!!」
人々がワッ!と歓声を上げてヒーロー達に拍手を送り、口々に賛辞を送る。怪人達は倒され、押収されていた食料品も無事人々の手に戻る…かと思いきや、玲瓏な声が空気を裂くように、静かに、けれど確かな苛烈さをもって人々の鼓膜を振るわせた。
「どうした怪人共!それでも貴様等は誇り高き我ら悪の組織の同胞か!」
「あっ!あれは…!」
青空マルシェを開催していた大きな公園の中央にある高い時計のモニュメントの上に、全身を黒く冷たい鎧に包み、ビロードのマントをはためかせる人物が1人。
「黒き稲妻…暗黒騎士、推参!!」
「お前は…っ、暗黒騎士、ダークナイト!!!」
「地球のヒーロー共よ!この俺が相手だ!参るっ!」
時計のモニュメントから暗黒騎士がジェット機もかくやという超スピードでレッド達に斬りかかる。
なんとか反応したレッド達だが、暗黒騎士1人相手にレッド達は5人全員でかかってもまるであしらわれるように手も足も出ない。
「くっ、この…っ!」
「きゃああ!」
「げー!げっげっげっ!」
暗黒騎士の登場によって倒されていた怪人達も復活し再び下卑た笑い声を上げる。
まるで美しい剣舞のように軽やかに、鮮やかに、一切止まる事なく剣を振るっていた暗黒騎士がふいに大きく後ろに跳躍して剣を構える。
「!?あ、あの構えは…!」
「遊びはここまでだ、小僧共!受けてみよ、我が剣の冴えを!」
「!!!」
暗黒騎士の必殺の一撃がレッド達に容赦なく襲いかかり、5人は地に倒れ伏す。それでも5人は使命に魂を燃やし、なんとか起き上がろうと砂を掴む。
その時、レッド達の戦闘を固唾を飲んで見守っていた人々がああっ!と一点を指し悲鳴をあげる。
「きゃああ!女性が…!女性が怪人に捕まっているわ!」
「いやあああ!誰か!誰か助けてあげて!!」
「ぅぐっ…!しまった!」
「ひ、人質さ取るなんて卑怯だべ!」
暗黒騎士を応援するように固まっていた怪人達の只中に、女性が1人蹲っている。
「なんだと!?くそ、怪人共め、勝手な事を…!」
人々の悲鳴に暗黒騎士は怪人達の方を振り返る。そして自身の意図せぬ事態に気付くと舌打ちをして咆哮をあげる。
「おい怪人共!!何をしている!この俺が人質などという真似をせねば勝てぬとでも言うつもりか!!この俺の騎士の誇りを汚す真似をするな!!!」
まさしく稲妻のような暗黒騎士の怒りの咆哮がビリビリと空気を震わせる。
「っ!?げっ、げーっ!げーっ!」
しかし怪人達は皆一様に慌てふためき、各々否定の意を込めて首や手を振る。不可解なその様子に、一体何が…と暗黒騎士が訝しんでいると、蹲っていた女性がおもむろに立ち上がり両手を上げる。
その手にきらきら、ぴかぴかにデコレーションされたハート型のうちわを持って。
「……イッ、イケメンが過ぎるっっ!!!」
「………は?」
「ななな、生推参頂きました──!!きゃー!耳が死亡っ!うそうそっ!今日はダークナイト様の必殺剣も見れちゃった…!どうしよう!好き!!ねえ見た!?見た!?やっばくない!?目にも止まらぬダークナイト様の必殺剣!!っていうか騎士の誇り…っ!うっ…もう涙出てくる…」
頬を真っ赤に染めた女性はきゃーきゃーと可愛らしい黄色い声をあげて横に居る怪人に捲し立てるように喋り続け、かと思えば涙を流してうちわをふるふると暗黒騎士に向けて振る。
「……貴様何をしている」
「ひっ!あっ、あっ…目!目が…合ってる…!きゃー!ダークナイト様ー!!好きです!!ファンサ下さいっ!!」
「………」
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