56 / 64
第9篇 桜の下で君を待つ
第4話
しおりを挟む
まだ朝日も昇りきっていない早朝、縁が毎日の日課である修行場の外で木刀を使い素振りをしていた時、手の中からスポンっ!と木刀がすっぽ抜けていった。
「ああっ」
まず周りをきょろきょろと見渡してみる。
すぐに手が出る兄の姿も、苦笑しながら深いため息をこぼす勇市の姿もないことを確認すると縁はほっと胸を撫で下ろした。
「やばやばっ、早く証拠隠滅しに行こぉ」
木刀がすっぽ抜けて吹っ飛んでいってしまった方へと庭の植木を乗り越え進んで行った。
♦︎
ガサガサと生い茂る葉を掻き分け顔を出す。と、そんな縁の目の前にいつだか見た顔が庭に面した縁側でいつだか見たように瓢箪を傾け顔を赤くしていた。
「…ああっ!?貴方っ!」
「んー?ああーっと…」
「朝っぱらからお酒呑んでるっ!」
「そっちかい」
植木を掻き分け進んでいる内に、どうやら縁は自宅の庭を越えよその敷地内にまで入ってしまったらしい。見覚えのない風景が広がっている。
「あれ?っていうかお隣さんって鬼さんのうちだったの?」
はた、と動きを止めて考える。
修行場だけでなく多くの陰陽師が生活の拠点にしている為に無駄に広い縁達陰陽師の屋敷であるが、いくら広大な敷地面積を有しているからとはいえ、まさかそのお隣が鬼の屋敷だとは知らなかった。というかそれって問題じゃないのかと縁はんん?と頭を捻る。
「なーに言ってんだお前。鬼の屋敷が陰陽師共の根城の隣にあるわけねえだろうが。お前が勝手に此処に迷いこんできたんだ」
「えー?それってどういうこと?私木刀を追って家の庭を横切ってきただけだよぉ」
「木刀ぉ?…あー!これはお前のか!俺の頭にぶっ刺さったんだぞこれ!!」
そう言って鬼は自分の後ろから見覚えのある木刀を引っ張り出す。
鬼の言葉によくよくその頭を見てみれば、心なしか赤く腫れている気がする。
「樹からぶら下るだけじゃなくて、木刀もまとおに振れねえのかお前は!」
「あ、あはは…」
酒で赤かった顔を怒りで赤く染めた鬼に苦笑いを返す。
どうやら縁の手の中からすっぽ抜けていった木刀はこの鬼の頭にぶつかって着地したらしい。
「よく飛んだねぇ~」
「と、いうより俺達の間に何かしら縁が出来たんだろうな。お前の手から放たれてあの世とこの世の境の奇しの道を通って俺の元に届いたんじゃないか?…恐らく無意識だろうが」
最後に鬼は葉っぱの付いている頭だけを茂みから出している縁を見て苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
実際、鬼の言うように妖怪達、時に陰陽師達もこの奇しの道を使い到底辿り着かないような場所、時間に現れたりするが、まだまだ陰陽師として未熟な縁に使い熟せる術だとは思えなかった。たった2度会っただけの鬼にも。
「…お前本当に陰陽師か?俺ぁ、お前みたいな間抜け見たことねえぜ」
「しっ、失礼しちゃう!私はれっきとした陰陽師の一員だよ!」
「分かった分かった、そういうことにしといてやるよ」
「だからー…!」
縁は顔だけを出していた植木の茂みからガサガサと抜け出し、自分と鬼とを隔てていた庭を大股で横切ると鬼がだらしなく座っている縁側に乗り上げる。
「大体さぁ!貴方も本当に鬼なのぉ!?見る度にお酒呑んでるだけじゃん!鬼ってもっと、こう、恐ろしげな見た目で人間を襲うもんなんじゃないのぉ!?」
「お、言うね小娘」
「こっ、小娘ぇ!?私そんな失礼な呼び方されたことないんだけど!!この鬼ぃ!!」
「俺だってお前なんぞに鬼鬼連呼される覚えはねえなあ」
ぷりぷりと怒る縁にケラケラと笑い、鬼はまた楽しそうに顔を赤らめて酒を呑む。
「鬼は鬼じゃん!名前なんて──」
「しぐれ」
「は?」
瓢箪から口を離し、酒で濡れる唇をぺろりと舐めた鬼は縁の黒い瞳を見つめてニッと口角を上げる。
「紫に暮れると書いて、紫暮。俺の名だ」
「…鬼にも名前なんてあるんだ」
「そりゃ、おめえ。名前が無けりゃ不便だろうが」
「それもそうか。…あのねっ、私は人と人の縁って書いて、ゆかり!」
「ほーお、そりゃ嫌味か?俺は人じゃなくて鬼だけどな」
「ちっ、違う嫌味じゃない!えっと、だって、今まで鬼に名前を教えたことないし…!」
「あっはっはっ!おっまえ、変な陰陽師だな!普通鬼に自ら名乗るか!?」
「ええ~…!そっちから名乗ったくせに…!」
「くっくく…わっはっはっ!!偶にゃ間抜けな陰陽師相手に酒呑むのもいいな!これはこれで楽しいもんだぜ!」
「…私は楽しくないぃ」
ぶすくれる縁に鬼、紫暮はまた愉快そうに酒を呷る。
暫くそうやって揶揄い、揶揄われ話していると、ふいに紫暮の後ろの部屋からボーン、ボーンという時計の音が鳴る。
「ん、もうこんな時間か。ほれ、そろそろ帰れ帰れ」
「げっ!今何時!?やばい朝会に遅刻するっ!」
「忙しない小娘だなぁお前は。急いで転けるなよ」
「大丈夫っ!…あれっ!?それよりどうやって帰ればいいのぉ!ここうちのお隣じゃないんだよね!?」
「おう、あの世じゃねえが、この世でもない魑魅魍魎の棲家よ」
紫暮の言葉にさああっと顔を青褪めさせた縁に1つため息を吐いて、紫暮はよっこらしょと立ち上がる。
「ほれ、泣くな泣くな。いいか、もっかいこの茂みに顔を突っ込め。お前の家を強く思い浮かべながらな。なに、此処に来れたんだ。ちゃあんと帰れるさ」
「ほ、本当に!?それだけで帰れる!?ねえ!?」
「帰れるっつっとろうに…あー、五月蝿い小娘だ。俺はもう酔いが醒めたんだ。ほれ、帰れ帰れ」
「うわっ!」
紫暮は縁の背をどんっ!と気持ち強く押し、茂みへとその体を押し込む。
「おーい、縁。もしまた来るなら今度は人間の酒持ってこい」
「ぎゃっ!?」
どたっと間抜けな音をたてて縁は押されるままに顔から地面に倒れ込む。
「いきなり何するんだ!」と言い返そうとして後ろを振り向き──
「…あ、あれ?」
視界一杯に広がる、いつもと何の変哲もない自分達の屋敷の庭の風景に首を傾げる。
「あれ?あれぇ!?」
狐狸の類に化かされでもしたのかとパニックになるも、遠くから聞こえてきた兄の自分の名を呼ぶ声に遅刻しそうなことを思い出した縁は慌てて立ち上がると兄の声がする方へと急いで駆け出した。
♦︎
「おう、やっと来たかこの脳筋兄弟」
案の定遅い!と兄に怒鳴られてぶすくれた縁はぐっと眉間に皺を寄せたまま兄と共に勇市達陰陽師一同が集まった集会場へと入った。
「…ん?お前転びでもしたのか?膝に泥付いてるぞ」
「…ちょっと」
「間抜け」
「お兄ちゃん五月蝿い」
「はいはい、兄弟喧嘩はそのくらいにしとけ。長からの話が始まるぞ」
勇市に諌められ、兄弟は黙って彼の隣に並ぶ。
全員が揃ったことを確認すると、先頭に1人立っていた陰陽師の長がおもむろに口を開く。
「みな、朝からご苦労。…さて、いきなりだがある噂が耳に入ってきた」
長の厳しい声色に、場には重苦しい空気が漂う。
「…悪鬼妖怪共の群れ、百鬼夜行の頭頂が代替わりしたらしい」
♦︎
縁の去っていった茂みを紫暮はぼんやりと眺めていた。
思い返せば思い返すほど間抜けとしか言いようのない陰陽師の小娘の姿に、思わず笑いが腹の底から湧いてくる。
「…くっくっく、随分おかしな陰陽師もいたもんだな」
くいっと1度瓢箪から酒を呷ったところで後ろから声がかかる。
「頭領!何してんすかそんな所で!他の奴らもうみんな頭領のこと待ってるっすよ~!」
「…おう!今行く」
紫暮は最後にもう1度茂みに目を遣ると、あとは振り返ることなく屋敷の中へと入っていった。
「ああっ」
まず周りをきょろきょろと見渡してみる。
すぐに手が出る兄の姿も、苦笑しながら深いため息をこぼす勇市の姿もないことを確認すると縁はほっと胸を撫で下ろした。
「やばやばっ、早く証拠隠滅しに行こぉ」
木刀がすっぽ抜けて吹っ飛んでいってしまった方へと庭の植木を乗り越え進んで行った。
♦︎
ガサガサと生い茂る葉を掻き分け顔を出す。と、そんな縁の目の前にいつだか見た顔が庭に面した縁側でいつだか見たように瓢箪を傾け顔を赤くしていた。
「…ああっ!?貴方っ!」
「んー?ああーっと…」
「朝っぱらからお酒呑んでるっ!」
「そっちかい」
植木を掻き分け進んでいる内に、どうやら縁は自宅の庭を越えよその敷地内にまで入ってしまったらしい。見覚えのない風景が広がっている。
「あれ?っていうかお隣さんって鬼さんのうちだったの?」
はた、と動きを止めて考える。
修行場だけでなく多くの陰陽師が生活の拠点にしている為に無駄に広い縁達陰陽師の屋敷であるが、いくら広大な敷地面積を有しているからとはいえ、まさかそのお隣が鬼の屋敷だとは知らなかった。というかそれって問題じゃないのかと縁はんん?と頭を捻る。
「なーに言ってんだお前。鬼の屋敷が陰陽師共の根城の隣にあるわけねえだろうが。お前が勝手に此処に迷いこんできたんだ」
「えー?それってどういうこと?私木刀を追って家の庭を横切ってきただけだよぉ」
「木刀ぉ?…あー!これはお前のか!俺の頭にぶっ刺さったんだぞこれ!!」
そう言って鬼は自分の後ろから見覚えのある木刀を引っ張り出す。
鬼の言葉によくよくその頭を見てみれば、心なしか赤く腫れている気がする。
「樹からぶら下るだけじゃなくて、木刀もまとおに振れねえのかお前は!」
「あ、あはは…」
酒で赤かった顔を怒りで赤く染めた鬼に苦笑いを返す。
どうやら縁の手の中からすっぽ抜けていった木刀はこの鬼の頭にぶつかって着地したらしい。
「よく飛んだねぇ~」
「と、いうより俺達の間に何かしら縁が出来たんだろうな。お前の手から放たれてあの世とこの世の境の奇しの道を通って俺の元に届いたんじゃないか?…恐らく無意識だろうが」
最後に鬼は葉っぱの付いている頭だけを茂みから出している縁を見て苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
実際、鬼の言うように妖怪達、時に陰陽師達もこの奇しの道を使い到底辿り着かないような場所、時間に現れたりするが、まだまだ陰陽師として未熟な縁に使い熟せる術だとは思えなかった。たった2度会っただけの鬼にも。
「…お前本当に陰陽師か?俺ぁ、お前みたいな間抜け見たことねえぜ」
「しっ、失礼しちゃう!私はれっきとした陰陽師の一員だよ!」
「分かった分かった、そういうことにしといてやるよ」
「だからー…!」
縁は顔だけを出していた植木の茂みからガサガサと抜け出し、自分と鬼とを隔てていた庭を大股で横切ると鬼がだらしなく座っている縁側に乗り上げる。
「大体さぁ!貴方も本当に鬼なのぉ!?見る度にお酒呑んでるだけじゃん!鬼ってもっと、こう、恐ろしげな見た目で人間を襲うもんなんじゃないのぉ!?」
「お、言うね小娘」
「こっ、小娘ぇ!?私そんな失礼な呼び方されたことないんだけど!!この鬼ぃ!!」
「俺だってお前なんぞに鬼鬼連呼される覚えはねえなあ」
ぷりぷりと怒る縁にケラケラと笑い、鬼はまた楽しそうに顔を赤らめて酒を呑む。
「鬼は鬼じゃん!名前なんて──」
「しぐれ」
「は?」
瓢箪から口を離し、酒で濡れる唇をぺろりと舐めた鬼は縁の黒い瞳を見つめてニッと口角を上げる。
「紫に暮れると書いて、紫暮。俺の名だ」
「…鬼にも名前なんてあるんだ」
「そりゃ、おめえ。名前が無けりゃ不便だろうが」
「それもそうか。…あのねっ、私は人と人の縁って書いて、ゆかり!」
「ほーお、そりゃ嫌味か?俺は人じゃなくて鬼だけどな」
「ちっ、違う嫌味じゃない!えっと、だって、今まで鬼に名前を教えたことないし…!」
「あっはっはっ!おっまえ、変な陰陽師だな!普通鬼に自ら名乗るか!?」
「ええ~…!そっちから名乗ったくせに…!」
「くっくく…わっはっはっ!!偶にゃ間抜けな陰陽師相手に酒呑むのもいいな!これはこれで楽しいもんだぜ!」
「…私は楽しくないぃ」
ぶすくれる縁に鬼、紫暮はまた愉快そうに酒を呷る。
暫くそうやって揶揄い、揶揄われ話していると、ふいに紫暮の後ろの部屋からボーン、ボーンという時計の音が鳴る。
「ん、もうこんな時間か。ほれ、そろそろ帰れ帰れ」
「げっ!今何時!?やばい朝会に遅刻するっ!」
「忙しない小娘だなぁお前は。急いで転けるなよ」
「大丈夫っ!…あれっ!?それよりどうやって帰ればいいのぉ!ここうちのお隣じゃないんだよね!?」
「おう、あの世じゃねえが、この世でもない魑魅魍魎の棲家よ」
紫暮の言葉にさああっと顔を青褪めさせた縁に1つため息を吐いて、紫暮はよっこらしょと立ち上がる。
「ほれ、泣くな泣くな。いいか、もっかいこの茂みに顔を突っ込め。お前の家を強く思い浮かべながらな。なに、此処に来れたんだ。ちゃあんと帰れるさ」
「ほ、本当に!?それだけで帰れる!?ねえ!?」
「帰れるっつっとろうに…あー、五月蝿い小娘だ。俺はもう酔いが醒めたんだ。ほれ、帰れ帰れ」
「うわっ!」
紫暮は縁の背をどんっ!と気持ち強く押し、茂みへとその体を押し込む。
「おーい、縁。もしまた来るなら今度は人間の酒持ってこい」
「ぎゃっ!?」
どたっと間抜けな音をたてて縁は押されるままに顔から地面に倒れ込む。
「いきなり何するんだ!」と言い返そうとして後ろを振り向き──
「…あ、あれ?」
視界一杯に広がる、いつもと何の変哲もない自分達の屋敷の庭の風景に首を傾げる。
「あれ?あれぇ!?」
狐狸の類に化かされでもしたのかとパニックになるも、遠くから聞こえてきた兄の自分の名を呼ぶ声に遅刻しそうなことを思い出した縁は慌てて立ち上がると兄の声がする方へと急いで駆け出した。
♦︎
「おう、やっと来たかこの脳筋兄弟」
案の定遅い!と兄に怒鳴られてぶすくれた縁はぐっと眉間に皺を寄せたまま兄と共に勇市達陰陽師一同が集まった集会場へと入った。
「…ん?お前転びでもしたのか?膝に泥付いてるぞ」
「…ちょっと」
「間抜け」
「お兄ちゃん五月蝿い」
「はいはい、兄弟喧嘩はそのくらいにしとけ。長からの話が始まるぞ」
勇市に諌められ、兄弟は黙って彼の隣に並ぶ。
全員が揃ったことを確認すると、先頭に1人立っていた陰陽師の長がおもむろに口を開く。
「みな、朝からご苦労。…さて、いきなりだがある噂が耳に入ってきた」
長の厳しい声色に、場には重苦しい空気が漂う。
「…悪鬼妖怪共の群れ、百鬼夜行の頭頂が代替わりしたらしい」
♦︎
縁の去っていった茂みを紫暮はぼんやりと眺めていた。
思い返せば思い返すほど間抜けとしか言いようのない陰陽師の小娘の姿に、思わず笑いが腹の底から湧いてくる。
「…くっくっく、随分おかしな陰陽師もいたもんだな」
くいっと1度瓢箪から酒を呷ったところで後ろから声がかかる。
「頭領!何してんすかそんな所で!他の奴らもうみんな頭領のこと待ってるっすよ~!」
「…おう!今行く」
紫暮は最後にもう1度茂みに目を遣ると、あとは振り返ることなく屋敷の中へと入っていった。
0
あなたにおすすめの小説
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる