異世界からの使者「大和」

第二話 出現

 光が見える少し前、大和の乗組員は各々が死を覚悟した。
 爆風に吹き飛ばされる者、敵の機銃掃射を喰らう者、爆発により散らばった破片が突き刺さる者、それは凄まじい光景だった。

 すると突然、真っ白に輝く光に包まれ、皆意識を失った。
 気が付くと、大和の周囲には艦隊の姿は愚か、敵機の姿も一切なく、何よりも大和が無傷の状態であった。
 これには皆が驚いた。
 誰も状況を理解できず、立ち尽くすしか無かった。

 そんな時、見張り役の内の一人の慌てふためく声が伝声管から艦内に響いた。

「本艦の左舷十時の方角より正体不明の未確認飛行物体が多数接近!」

 突如として飛来する未確認飛行物体。
それが一体何なのか誰も知る由もなかった。

「総員、対空戦闘用意!」

 伝声管から声が聞こえると、甲板の上が騒がしくなり、八九式十二糎七高角砲、九六式二十五粍機銃が遥か遠くに見える黒い無数の点に砲身を向けた。

 「未確認飛行物体って何だよ!?」

「そんなの知るか!とにかく今は攻撃準備だ!」

 徐々に未確認飛行物体が大和に接近するにつれ、そのシルエットが視認できるようになった。

「んなっ!?」

 そのシルエットを見た瞬間、誰もが言葉にならない叫びをあげた。

「なんだあれは！あれは、米軍なのか!?」

 それは今まで見たことの無い形をした飛行物体だった。
 神話に出てくる龍の見た目をした飛行物体の上に、人と思しき姿がある。
 龍の背中には巨大な翼があり、大きく羽ばたかせながらこちらへ向かってきていた。
 龍の大群は、大和を囲うように展開し始めた。

 すると、そのうちの一部が大和へ向け降下を開始しした。
 それと同時に、伝声管から発砲許可の合図があり、五秒と経たぬうちに、大和の高角砲、機銃が火を吹き、絶え間ない発砲音が大和を包んだ。

 そして、大和は再び戦乱の渦の中へ飲まれていった。