鉄臭い義手女になんの御用ですか?〜妹に婚約者を取られ、居場所も失った、戻ってこい?、自由気ままな今の生活が気に入ってるのでお断り〜

ターナー

文字の大きさ
2 / 27

2、冒険者ギルド

しおりを挟む

「ハァッ………」

………今新しく灼いたばかりの鋼の板のような真っ黒で、果てしない空、そこに無数に散らばった星々を眺める事数時間………何も考えず天体観測をしていると、漆黒の夜空の闇が徐々に薄くなっていき、それにともなって星々の光が消えていく………気づいたら朝になっていた………端的に説明するなら宿をチェックアウトした後、深夜から翌朝まで街の公園のベンチに座って、溜め息を吐きつつボケーっと空を眺めていた私。

ずっとここにいたため、朝早く勇者様達が東の方にあるダンジョン、『終わりなき園』に向かって行ったのが見えた。

「これからどうしようか………」

自問するも、答えなどない。

「………これだけか………」

簡易テーブルの上に財布の中身を広げるが、銅貨15枚。

宿で一泊するのに銅貨5枚……たった三日で文無しになってしまう……他の町に行くのだって金がかかる、どう計算しても私の財布の底が尽きるのが先だ………収入がなくなった私の破滅はすぐそこ。

なんとかして定期的な収入源を確保しなければならない。

「今日は西にでもいくか?」

「西はオーガが出たらしいからやめとこうぜ」

「討伐されるまではいつもの狩場でやろうぜ」


ふと、目の前を冒険者らしき三人組が通って行った。

「冒険者………か」

………野良猫のように自由に生きて、自由に死ぬ。

「他に行くところも思いつかないし、試しにやってみるか」

………魔王を倒すという使命感を持って戦ってきたけれど…………もう私には関係が無くなった。

他に行くところもない私は冒険者ギルドの門を叩いた。

ーーーーーーーー

誰でも冒険者になれるというわけではないようだ。

年齢制限や性別などは関係ないが、試験を突破できたものだけに許される。

必要最低限の力量がなければ、ギルドからも、依頼者からも迷惑だからだ。

「よし、コボルト討伐完了っと」

ギルドから提示された課題はコボルト5体の討伐を終える…………討伐証明の部位を切り取って、袋に入れる私……後はギルドに持っていくだけだ。

狸の皮算用をするリフィル、そんな私を嘲笑うかのように耳障りな爆音が鳴り響く。

「ーーーーッッッッ??!!、な、なんだ??!!」

「バケモンが!!」

「逃げろ!!!」

「あ、あなたたちどうしたの?、何今の爆音は?」

「ウルセェ!!、テメェも死にたくなかったら、あのバケモンが餌に食いついてる間に早く逃げな!!」

爆音が聞こえた方向の森の茂みから男が数人走ってきた………おそらく何かから逃げてきたのだろう、私は走ってきた男たちの肩を握るも、すぐに払い除けられ、急いで逃げていく。

「グラァッッッッッ!!!」

「ーーーーッッッ」

ーー瞬間、何かが咆哮をあげた………。

「~ーーークソッッッ!!」

地鳴りのような魔物の雄叫びが響き渡る………餌がどうのこうのと不穏な言葉も聞いてしまい、嫌な想像が私を掴んで離さない………リフィルは声のしたほうへ走った。

「~ーーグガァッッッッッ!!」

「あれは……オーガ?!!」

森へ少しはいったところで、今朝噂されていた件のオーガに襲われている、背負っている身の丈ほどもある大剣以外は軽装の人狼の青年を発見、オーガはD+ランクの魔物、動きは少し鈍いが、強靭な肉体の耐久力は生半可な攻撃を通さず、逆にその並外れた腕力から繰り出される棍棒の一撃はあらゆる物を粉砕する、初心者冒険者には荷が重すぎる相手。

隆起した筋肉、自身の怒りを表してるかのような赤い皮膚、そんな皮膚にゴブリンの時の名残か、少し残った緑色が斑模様になっている、オーガは土煙を纏いながら天に轟く咆哮を上げる。

「グガァッッッッ!!」

「~ーーッッッッッ!!!」


大木や大岩など等しく紙屑のように吹き飛ばしていく、森林に君臨した大鬼は全てを蹂躙し尽くす。

オーガの標的は人狼族の青年、叩き潰すことを目的としている棍棒を振り下ろす。

オーガの一撃に青年があわや潰れたトマトになったかと幻視したが、大剣を背負ってるわりには意外のほか素早く、木や大岩の間を疾駆、大木や大岩を盾代わりにになんとか生き残っている。

「ガルアッッッッッ!!」

「~ーーーッッッッッッ??!!」

しかし、いつまでその回避を許すほどオーガも優しくない、次に逃げ込もうとした岩に対して先んじて棍棒を振り下ろす、流石に何度も同じことをしていれば読まれてしまう、直撃は避けたが派手に吹っ飛ばされる青年、吹っ飛ばされることで距離が取れたが、破裂した岩の散弾とオーガの棍棒の余波を喰らったせいで地に這いつくばることしかできない。

「……グルル」

「ーー痛ッッッッ」

「ーーまずい!!」

先の一撃で負傷している青年、痛みで動けないようだ、オーガはトドメと言わんばかりに棍棒を両手で大上段に構える。


「ーーやらせるか!!!、砲身鉄拳制裁バレル・フィスト!!!」

私は人狼の青年とオーガの間に走り飛びながら入り、魔鉄義手を機竜人の力で強化、巨大な砲身に変えてを殴り飛ばす。

「ーーガァッッッ!!!??!」

「なッッッッ!!??」

まさか自分が吹っ飛ばされるとは露ほど思っていなかった様子のオーガは驚いたような奇声をあげる……ついでに後ろにいる人狼族の子も驚いているような気配を感じさせる。

「ーーー砲身鉄拳追射撃プルス・ファイア!!」

「ーーーーガッッッッ??!!」

そのままオーガを木の幹へと叩きつけ、そのまま砲身に装填してある砲弾を発射、オーガの体を貫通、オーガは断末魔の声を上げて、絶命した………。

「……ふぅ、仕留めたか………君、大丈夫?」

「あ、はい………」


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。

まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」 そう言われたので、その通りにしたまでですが何か? 自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。 ☆★ 感想を下さった方ありがとうございますm(__)m とても、嬉しいです。

小石だと思っていた妻が、実は宝石だった。〜ある伯爵夫の自滅

みこと。
恋愛
アーノルド・ロッキムは裕福な伯爵家の当主だ。我が世の春を楽しみ、憂いなく遊び暮らしていたところ、引退中の親から子爵家の娘を嫁にと勧められる。 美人だと伝え聞く子爵の娘を娶ってみれば、田舎臭い冴えない女。 アーノルドは妻を離れに押し込み、顧みることなく、大切な約束も無視してしまった。 この縁談に秘められた、真の意味にも気づかずに──。 ※全7話で完結。「小説家になろう」様でも掲載しています。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...