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プロローグ・1
しおりを挟む「俺が戦場へ行きます」
「「「え?」」」
俺以外、その場の全員が息を呑む。
「な、何を言っているのかわかっているのかフェイト!!、お前は我がアダマー家の跡取り!!、そんな危ないところに行かせるわけにはーー」
「ーーー父様、ならばこそです」
アダマー家は代々王家の護衛をしてきた、戦場に出るのはもっぱら階級が低い貴族だ、出す必要の無い戦場に跡取りを出したくないのだろう。
「何?」
「アダマー家を継ぐためには、俺は父様や母様みたいに立派な騎士にならなければならない、安全な学院に引きこもっているだけでは成長を見込めないでしょう?」
「そ、それは……」
そうだ、俺は生きるだけじゃダメなんだ、俺は立派な騎士になりたい、民を、国を、そして伴侶たるイヴを必ず守り抜きたい。
「民が困っているのに臆病風に吹かれ、国に引きこもっては五大貴族の一角、騎士の名門たるアダマー家の名に泥を塗るような行為………断じて許容できるものではないです」
「…………」
そうだ、騎士の名門たるアダマー家の名が廃る、たとえ死ぬ事になったとしても、イヴのために死ねるなら本望だ。
「け、けど、その、流石に我がサーペント家の責務をアダマー家の子息に任せてしまうのは………」
「何を他人行儀な事を……俺はイヴ・サーペントの婚約者、愛する者が戦場に行くというなら、俺が代わりに行くのは彼女を愛する男として当然、それが俺の騎士道です!」
「そ、そうですか………」
かなり時間を要したが、サーペント家とアダマー家の両親達の説得に成功した。
ーーーー
その日の夜、俺の部屋にイヴが来た……。
「………フェイト、ごめん、私のために………」
「俺はいずれ王国騎士団長になる男だ、箔付けに丁度良いぜ」
「……………」
辛そうに、今にも泣き出しそうな顔で謝罪してくるイヴ…………俺は彼女が負い目を感じないように、できるだけ軽い調子で返答を心がけたが………いっこうに彼女の表情は晴れず、諦観に満ちている………。
「異名も今のうちにいいの考えといたほうがいいかなぁ~………そうだな、千人斬りのフェイトなんてどうだ?、魑魅魍魎、悪鬼羅刹、否、魔物の大軍勢をバッタバッタと斬り倒す、英雄豪傑達ですら裸足で逃げ出す、騎士王フェイト・アダマー………てな?」
「………異名、最初と変わってるよ」
「ありゃ?、まぁいくつあっても困る事はないしな……………そんな心配そうな顔するなよイヴ、俺はお前が惚れた男なんだぜ?、そう簡単に死んでたまるかよ」
「…………ごめん」
「………わかってないなぁ、こういう時はありがとうって言われた方が男は嬉しいもんなの」
「フフ………わかったよありがと」
「どういたしまして」
彼女のために命まで張っているのに、謝罪だけじゃ骨折り損のくたびれもうけだ、俺の言葉で感謝の言葉を述べてくるイヴ、彼女の笑顔と感謝の気持ちは心に染み渡る。
「………一つ約束して」
「何だ?」
「絶対帰ってくるって」
「当たり前だっつうの!、王国騎士憲章一条、愛する者は生涯守り抜けってね」
「………わかった」
俺が笑いかけると安心したように薄く微笑む彼女。
「ーーーんッ」
「ーーーい、いきなり何するんだよ!!」
不意に彼女が俺のおでこにキスをしてきた、びっくりした俺は飛び退いた。
「………おまじない、無事に帰ってこれるようにってのと…………浮気しないように」
「浮気なんかしないっつの………お、俺にとってお前が一番なんだから………」
「そ、そう………」
翌日、俺は戦場へ立った。
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