私は魔女ですから〜魔王討伐後、家に帰ってきたら貯金全部を使い込んだ妹と婚約者が不倫をしていて、婚約破棄された〜

ターナー

文字の大きさ
6 / 10
即ざまぁ編

6、sideとある剣士の初恋2

しおりを挟む

「ーーーッッッッ、こ、ここは………」

「あ、気がつきましたね……貴方の家です……」

「あ、アンタは……」

「私はマリア・クロス、怪しいものではありません」

家のベットで目が覚めた俺に話しかけてくるのはさっきの女改め、マリア・クロス、彼女はやさしく微笑んでくる。

「言っとくけど、俺なんか助けたところで金なんかないぞ」

「?、お金なんか取りませんよ、私が勝手に貴方を助けただけですからね」

「………」

今まで助けてくれる大人は全員金目当てだったので先に牽制をかける、金狙いならどんなに隠したところでどこかガッカリ感が出る、虎人族の優れた五感で見抜ける、しかし、彼女からはそのガッカリ感は出ていなかった。

「それより……これを食べてください」

「これは……」

「見たところ、外傷はそこまでひどくありません、本当に問題なのは栄養失調の方です、お口に合うかわかりませんが、よかったらどうぞ」

出てきたのはご馳走だった、いつも食っている硬い黒パンとは訳が違う、見ただけで柔らかさが伝わってきそうなパン、いろんな野菜が入っているシチュー、控えめに言って滅茶苦茶美味そうだった。

「…………ーーーだめだ!!!」

「ど、どうしたのですか?」

「……今日は稼ぎが無い、これ、弟達に渡してもいいか?」

「……え?」

腹の虫が鳴り響き、涎を垂らしてしまう、無意識の内に手を伸ばしてしまうが、脳裏に弟達の顔が思い浮かび、逆の手で押さえ込む、今日はヘマをしてしまったため、稼ぎが無い、この食事は弟達に渡そうと思う。

「「「ーーー俺達は食わなくても良いから食べてお兄ちゃん!!」」」

「お、お前ら……」

部屋にいきなり入ってきたのは弟達、自分達に構わず食べてくれと言ってくる。

「ぜ、全然お腹なんか減ってーー」

瞬間、弟達の腹が鳴り響く、空腹の大合唱だ。

「や、やっぱりお腹空いてるじゃないか、俺のことは気にせずーーー」

「ーーーッッッ、こ、こんなの大丈夫だから!!」

「いつも兄ちゃんに食わせて貰ってるから!!、今度は俺たちが我慢するよ!!」

「……………」

弟達は自分達のことは気にせず、飯を食ってくれと言ってくる、自然と涙が溢れて溢れる。

「ふふ、大丈夫ですよ、量はかなり作ったので最低で四人分はあるはずですので、兄弟で分け合って食べてください」

「「へ?」」

俺と弟は異口同音で間抜けな顔と声を晒す、俺達は恥も外聞も捨て飯にかぶりつく。

「……やっと見つけました」

マリアが何か呟いたような気がした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「それで、いきなり庭に連れ出してなんのつもりだ?」

「アレス、私と一緒に魔王を倒し、世界を救いませんか?」

「ーーーッッッ??!!、何言ってんだアンタ!!!」

弟達が寝静まった後、庭へと誘われついていく俺、マリアはいきなり魔王を倒さないかと誘ってくる、いきなりだったので驚愕する俺。

「実は私は魔王を倒すため、この『七罪武具』を扱える戦士を探していたのです、貴方ならきっと使いこなせるはずです」

言葉と共に現れるのは禍々しい刀身の剣。

「な、なんだその剣」

「この剣の名は『暴食魔剣グラトニー』、その昔、初代魔王軍の幹部、七大罪が一人、九頭竜犬狼ヒュドロスの中でも特に食欲旺盛なものが与えられる称号、ベルゼブブ・ヒュドロニーという名の悪魔を封じ込めた剣です、剣はベルゼブブの魔力によって魔剣へと姿を変えました」

「そ、そんな、七大罪の悪魔なんて、おとぎ話じゃなかったのか?」

「いえ、実在します」

衝撃の事実をこれでもかと畳み掛けてくるマリア。

「な、なるほど……大食いの虎人族なら扱えるってことか」

「いえ、そういう事ではありません、そもそも食欲を我慢できない輩が使ったところで胃袋が破裂してもなお食べて、死ぬだけでしょう」

「どういうことだ?」

「貴方はあれほど空腹だったのに弟達にご飯を譲ろうとしましたね?」

「そ、それがなんだよ」

「貴方の節制の心ならこの剣の暴食に飲まれずに扱えるはずです」

「……俺の、節制の心?」

「はい………ですが、もちろん嫌だというなら断っても構いません、下手をすれば魔剣に精神を飲まれ、廃人コースは確定でしょうから……」

「は、廃人……」

「……どうしますか?、もし、了承してくれるのなら剣を手に取ってください、貴方が魔剣の食欲に打ち勝つことができれば契約は完了します」

「一つ聞きたい、俺がアンタについてって、魔王討伐の旅をした場合、弟達はどうなる?」

「国からの援助金が出され、治安の良い地域へと移されるのでまず大丈夫でしょう」

「そうか………なら俺の答えはこれだ!!!」

剣を掴む俺ーーーー瞬間、雪崩込んでくるのは耐え難い飢え、飢餓感だった。

「ーーーーッッッ??!!なーーーんだこれ!!!」

いつもの空腹感など比較にならない飢餓感、目に映るもの全てが美味そうに見えた、思わず噛みつこうとしてしまう。

「ーーー思い出してくださいアレス!!貴方は何の為に食事を我慢していましたか!!??、誰の為に節制していましたか??!!、何を守りたかったのですか??!!」

「ーーー弟達の為ッッッ、弟達の食事のため、弟達を守りたかった!!!」

「そうです!!!、人は大切の人のためだったらどこまでも強くなれる!!!、魔剣なんかに負けないはずです!!」

「ッッッ負けるかッッッ」

彼女の言葉で脳裏に思い浮かぶのは弟達…………一瞬、マリアの顔も浮かんだ気がした、瞬間、魔剣から流れ込んでくる黒い食欲を打ち消すような感覚を覚える。

「ハッッ、ハッッ……」

「……ここに契約は完了しました、よく頑張りましたね………よろしくお願いします、剣士アレス……」

「………よ、よろしく……」

彼女は倒れ込む俺を抱き抱えて支える、にこりと微笑しながら俺を褒めてくれる、さっきの契約とやらのせいか、胸の動悸が止まらない。



ーーーーーーーーーーーーー

「……また懐かしい夢を見たな……」

昨日マリアに告白したからか、彼女に恋心を抱いた時の事が夢に出てきた、一人呟く俺。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?

サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。 「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」 リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。

水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。 兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。 しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。 それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。 だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。 そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。 自由になったミアは人生を謳歌し始める。 それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

「薬草まみれの地味な女」と婚約破棄された宮廷薬師ですが、辺境でのんびり暮らしていたら元婚約者が全てを失っていました  

メトト
恋愛
宮廷薬師エルザは、夜会の場で婚約者の侯爵家嫡男レオンに公開婚約破棄される。 「薬草にまみれた地味な女」——そう蔑まれたエルザだが、その胸にあったのは悲しみではなく安堵だった。 七年間、浪費家の婚約者を支え続けた日々はもう終わり。 エルザは宮廷薬師を辞し、薬草の宝庫と名高い辺境の街ヴェルデンで小さな薬屋を開く。 そこで出会ったのは、不器用だけどまっすぐな領主代行の青年騎士ノエル。 薬屋は大繁盛、流行病を退け、新薬の開発にも成功——エルザの薬師としての才能が、辺境の地で花開いていく。 一方、エルザを失った王都では。 宮廷薬師の後任は見つからず、新しい婚約者の浪費で侯爵家の財政は火の車。 全てを失ったレオンがエルザの元に現れた時、彼女が返した言葉とは——。 復讐なんてしない。ただ自分らしく生きるだけ。 それが最大の「ざまぁ」になる、爽快異世界恋愛物語。 完結保証 全12話になります。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

処理中です...