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9、そんなに謝らないで
しおりを挟む「ーーーー本当にすみません!!!」
「そ、そんな、グリットさん、頭を上げてください」
「ーーーいえ、ウチのバカ息子が大変無礼な事をしたので!!、今は土下座程度しかできませんが!!、何かしてほしい事があればなんでもしますッッッ!!!」
少し大袈裟に騒いでしまった、これ以上店に迷惑をかけるわけにはいかないので飯を食い終わったら外へ出る私達、私の実家への帰り道、父と母、グリットさんはウィリアムとアイシャに事情を事細かく聞きだす、どんどん青ざめていくグリットさん、家につくなり土下座をかますグリットさん、頭を上げてと言うが、聞き入れてもらえない。
「そうですね、では重い罰を与えましょう」
「ーーーな、何をすればいいでしょうッッッ??!!」
「さっきみたく、偶に雑談相手になってください、戦場にいた私からすると、すごい得難い時間でしたので」
「そ、そんな事でいいのですか?」
「はい、あ、いや、それだけじゃちょっと寂しいので紅茶とお菓子をつけてくれるの嬉しいですかね~」
これは何かさせないと切腹とか言い出しそうな勢いだったので、咄嗟に思いついたお願いをする、あまりの軽いお願いに呆然とするグリットさん、最後におどけるように指を立てながら追加注文する私。
「うぅ、ありがとう、コヨミさん、本当にウチのバカ息子が迷惑をかけた、ーーーほらッッッお前も頭を下げろッッッッ」
「ーーーな、なんで僕が頭を下げないといけないんだよ父さん??!!」
「お、お前!!、コヨミさんの慈悲に唾をつけるつもりか??!!!」
「だ、だって許してくれないんだよ??!!、謝る意味なくない???!!」
「な、なななな、何を言ってるんだお前ッッッッッ!!!!」
泣き出すグリットさん、無理矢理ウィリアムに頭を下げさせようとする、しかし、ウィリアムはこれを拒否、子供のような理屈を言い出す、パクパクと金魚のように口を開け閉めした後、顔を真っ赤に染めて怒りだすグリッドさん。
「コヨミ、私たちもすまなかった、妹の愚行を止められなかった」
「ごめんね」
「父さんも母さんも、頭を上げて………まぁ気づかなかったんだからしょうがないよ」
「本当に優しい子だな、お前は」
「ええ、本当に、アイシャ、あなたもお姉ちゃんに謝りなさい」
「ええ!!!、だってコイツ後継者を降りるって私に嘘ついたんだよ!!、それでおあいこでしょ!!!」
「お前という奴は」
「ここまで我儘だとは思わなかったわ」
両親にも謝られてしまい、とりあえずフォローを入れて頭を上げさせる、アイシャの方も訳のわからん理屈を展開している、ああ、そういえば一瞬希望をチラつかせた時の事を言っているのか、別に一言も後継者を降りるなんて言ってないと思うんだが、まぁいいか、コイツらのアホな発言は適当に聞き流した方が楽だ、まともに受け取ると疲れる。
「父さん母さん、それにグリットさん、アイシャとウィリアムの事なんかどうでも良いから、私の話を聞いてよ、結構良い土産話あるんだよ?」
「そうか」
「そうね」
「うぅぅぅ………」
ぶっちゃけ、今更どんなに謝られても二人を許すなんてのはできない、アホ二人に時間を費やすぐらいなら、土産話でもした方がよっぽど有意義だ。
「ーーーそれでね、獣人を助けたお礼にこれ貰ったんだ」
「へぇ~」
「これは何かの爪かしら?」
「確か、一部の獣人種は先代の爪や牙を加工してアクセサリーにして身につけ、親しい者に送る風習があると聞くが」
「そうそう、確かそんな感じの事を言ってたな、やっぱり物知りなんですねグリットさんて」
「ハハハ、伊達に老けてないよ」
「いえいえ、まだまだお若いじゃないですか」
戦場で偶然助けた人狼の男の子にもらった首飾りを三人に見せる、意外にもグリットさんが獣人の風習に詳しかったので感心した。
「ねぇねぇ、この綺麗な指輪はなんなの?」
「ああ、それは竜人を助けた時にもらった指輪、確か、竜神様のご加護がつくんだって、効能についてはよくわかんないけど、お守りみたいなもんなのかな」
「へぇ~その竜人もさっき言ってた獣人もどっちも男の子なの?」
「ああ、そうだよ」
「ふ~~ん」
「な、何よ母さん、なんか言いたい事でもあるの?」
「別に~」
机に広げた戦場で貰った物の一つ、指輪を持ち上げる母さん、助けた相手の性別を聞くなり、いやらしい笑みを浮かべる、なんか気になる含み笑いをしているので詰め寄るも適当に流されてしまう。
「こっちの蜂蜜なんかもすごく美味そうだな」
「ああ、確か熊人族だったかな、結構保存が効くから戦場でも重宝したよ、仲間がくれくれ寄ってきてさ~、助かったは助かったんだけどすごく名残惜しそうに渡してくるからちょっと貰いづらかったかな~」
「アハハハ、それは傑作だな」
適当に目についた物を話題にして雑談する私達。
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