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一章
魔眼と禁呪
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完全にインディアのせいだ、他人事だ!
そして今、正当化している……
いや、インディアが悪いのは間違いないのだが、財宝目当てで不用意に眠っていた遺跡をこじ開けたから……
腑に落ちないが、やるしか無いか。
「数百年の時を経てまで人の手を煩わせおって」
インディアさん、蘇生させられてボコられるんじゃ……
とは言え師匠がキレかけてる。
どうするかだ。
地表を焼いただけとはいえ、あれだけ高威力の魔法だ、地中とはいえ無事では済まないはずなのだが、ほぼノーダメージとは相当生命力が強い。
となると、かなり広範囲に地中諸共やらないとどこに根が残るか分から無い。
見たことのないドス黒い魔石を守る様に根が纏わりつくと、徐々に紫の芽が発芽していく。
また進化しているのか。
「下がれ!」
鋭い声に反応して距離を取ると発芽した芽から一斉に紫の花が咲き花粉が飛散する。
毒だ!花粉が着地した草が途端に死に絶える。
致死性の花粉の様だが、インディアの魔石がどんな変化を施しているか分からない。
近づくのは危険だ。
ふと師匠が大きく距離を取る。
追随して距離を取り問いかける。
「かなり危険ですか?あれは」
「いや、マントが汚れる」
うん、今日も師匠は通常運転だ。
「という訳で任せた。」
任されたよ……
魔力も少ないし、どうするかだ。
「師匠ならどうやります?」
分からなければ聞けば良い!
師がいるのだから適切な指導がされることだろう。
「ふむ」
しばし考え回答が返ってくる。
「レオ!許可する封印を解け」
「え、えええ!いやいやいや、それはダメでしょう!」
「何が駄目なのだ?」
「こんなとこで使って良い訳無いでしょう?」
「だから何が駄目なのだ?あれだけ派手な魔法をぶっ放しておいて、今更」
それはそうだが、訳が違うと思うのだが……
「どうせ誤魔化すなら、同じことだ。構わん」
「それでも、そんな簡単に……」
「最悪街ごと消しても隠蔽してみせる!」
あっ!これは駄目なヤツだ。
結局苦労するなら同じことか……
「……やりますよ」
もうどうなっても知らん!
マントの汚れを気にした結果、禁呪を発動するって……
いつものことと言えばいつものことだ。
「それでこそ自慢の弟子だ!アクト!」
師匠の声に反応し、僕の身体を纏う銀色の鎖が実体化し、締め付ける。
ぐっ!
両手足に巻きつく鎖は背中から胸にかけて十字に縛られ胸前の大きな錠前に繋がる、安全装置として師匠に施された、僕の封印だ。
「エスト!」
解除の呪文を叫ぶと、錠前が低音を響かせガチャリと開き、銀色の鎖が弾け消滅する。
抑圧されていた魔力が一気に吹き出し身体を覆っていく。
毎度の事ながら身体にかかる負荷が半端ない。
油断すると意識を持っていかれ、暴走してしまうのだから慎重に抑え込む。
魔力が収まり、体内で安定するのを確認し目を開けると、僕の左目が銀がかかった灰色に変わる。
元々僕は黒と灰色の虹彩異色、オッドアイだ。
昔はこの目のせいで随分と蔑まれたものだが、この瞳が変化した時から今では割と気に入っている。
安定した魔力を左目に集中すると、本来の瞳に金の術式が浮かび上がる。
封印していた魔眼「魔導の鍵」が発現する。
「やれ!」
師匠の声と共に「愚者の咆哮」が黒く輝く。
この魔眼が発現した時、師匠も使えない僕だけの固有魔法の扉が開く。
それは、古代魔法文明時代の偉大な魔法使い達が、その存在を抹消した「禁呪」と呼ばれる古の災厄魔法だ。
僕らは普段無詠唱で魔法を操るが、いくつかの魔法には発動のキーとなる言葉を必要とするものがある。
それだけ、強力でチョット凶悪なモノにありがちだ。
この魔法もそのうちの一つ!
「これで死んで貰います。」
「愚者の咆哮」から放たれたいく重もの黒い影が魔物を地中ごと球体に閉じ込める。
この黒い半透明の球体は一部では黒色結界と呼ばれ、隔絶した空間を削り取る。
それだけでは終わらない!
魔眼の力は悪魔との契約の証。
杖を地面に突き刺し言い放つ!
「ブロウ!」
途端に球体の中に荒れ狂う黒い炎が召喚され魔物を喰らい尽くす。
召喚したのは、地獄の業火。
全てを焼き尽くす悪魔の炎だ。
外界と隔絶した空間でなければ召喚でき無い全てを焼き尽くす黒い炎が、魔石に内包された高濃度の魔力ごと根を侵食する。
これが僕の固有魔法「ブロウ」
後にはえぐり取られた地表が残るのみだ。
何も残さず消滅したのを確認し、魔眼を再び封印すると師匠が近寄ってくる。
「あれはどうする?」
見るとえぐり取られた地面から水が噴き出した。
水脈を切断した様だ……
枯渇した水路に沿って地面が徐々に崩れ。
……水源と繋がった。
瞬く間に水が流れ込み二つの大きな池が出来上がる。
うん、水瓶が大きくなったのだから良しとしよう。
いざとなれば街ごと……
◇
「何ですかあれは!」
思案していると、いきなりシャナが掴みかかって来た。
「戻って来ていたんですね!」
「呑気に何言ってんですか!」
襟首を掴まれ前後に揺さぶられながら事の顛末を聞かされる。
獣人は力が強い……
街に辿り着くと、騒然としていた。
衛兵から緊急事態と聞き、全速力で反対側の門に待機する魔術士達と合流した時だったらしい。
巨大な炎の壁が現れ、すぐ側で火柱が上がり、それを光る巨大な魔法陣が押しつぶし、見たことも無い半透明の黒い半球が地面を覆い、何か得体の知れない黒い炎が暴れると、地面ごと消えた。
この異常事態。
ということで、静止するマスターを振り切り駆けつけて来たとのことだ。
確かに見覚えのある職員が三人同行している。
二人の姿を見つけ、近づくと湖が出来ている……
もう、どこからツッコめば良いか分からず掴みかかったらしい。
「これ、どうしたんですか!」
「秘密です……」
「誤魔化されるか!」
総動員で否定されたよ。
師匠が魔法の準備に入っている。
街ごと消す気だ……
なんか、それも良いかと思えて来たなぁ。
そして今、正当化している……
いや、インディアが悪いのは間違いないのだが、財宝目当てで不用意に眠っていた遺跡をこじ開けたから……
腑に落ちないが、やるしか無いか。
「数百年の時を経てまで人の手を煩わせおって」
インディアさん、蘇生させられてボコられるんじゃ……
とは言え師匠がキレかけてる。
どうするかだ。
地表を焼いただけとはいえ、あれだけ高威力の魔法だ、地中とはいえ無事では済まないはずなのだが、ほぼノーダメージとは相当生命力が強い。
となると、かなり広範囲に地中諸共やらないとどこに根が残るか分から無い。
見たことのないドス黒い魔石を守る様に根が纏わりつくと、徐々に紫の芽が発芽していく。
また進化しているのか。
「下がれ!」
鋭い声に反応して距離を取ると発芽した芽から一斉に紫の花が咲き花粉が飛散する。
毒だ!花粉が着地した草が途端に死に絶える。
致死性の花粉の様だが、インディアの魔石がどんな変化を施しているか分からない。
近づくのは危険だ。
ふと師匠が大きく距離を取る。
追随して距離を取り問いかける。
「かなり危険ですか?あれは」
「いや、マントが汚れる」
うん、今日も師匠は通常運転だ。
「という訳で任せた。」
任されたよ……
魔力も少ないし、どうするかだ。
「師匠ならどうやります?」
分からなければ聞けば良い!
師がいるのだから適切な指導がされることだろう。
「ふむ」
しばし考え回答が返ってくる。
「レオ!許可する封印を解け」
「え、えええ!いやいやいや、それはダメでしょう!」
「何が駄目なのだ?」
「こんなとこで使って良い訳無いでしょう?」
「だから何が駄目なのだ?あれだけ派手な魔法をぶっ放しておいて、今更」
それはそうだが、訳が違うと思うのだが……
「どうせ誤魔化すなら、同じことだ。構わん」
「それでも、そんな簡単に……」
「最悪街ごと消しても隠蔽してみせる!」
あっ!これは駄目なヤツだ。
結局苦労するなら同じことか……
「……やりますよ」
もうどうなっても知らん!
マントの汚れを気にした結果、禁呪を発動するって……
いつものことと言えばいつものことだ。
「それでこそ自慢の弟子だ!アクト!」
師匠の声に反応し、僕の身体を纏う銀色の鎖が実体化し、締め付ける。
ぐっ!
両手足に巻きつく鎖は背中から胸にかけて十字に縛られ胸前の大きな錠前に繋がる、安全装置として師匠に施された、僕の封印だ。
「エスト!」
解除の呪文を叫ぶと、錠前が低音を響かせガチャリと開き、銀色の鎖が弾け消滅する。
抑圧されていた魔力が一気に吹き出し身体を覆っていく。
毎度の事ながら身体にかかる負荷が半端ない。
油断すると意識を持っていかれ、暴走してしまうのだから慎重に抑え込む。
魔力が収まり、体内で安定するのを確認し目を開けると、僕の左目が銀がかかった灰色に変わる。
元々僕は黒と灰色の虹彩異色、オッドアイだ。
昔はこの目のせいで随分と蔑まれたものだが、この瞳が変化した時から今では割と気に入っている。
安定した魔力を左目に集中すると、本来の瞳に金の術式が浮かび上がる。
封印していた魔眼「魔導の鍵」が発現する。
「やれ!」
師匠の声と共に「愚者の咆哮」が黒く輝く。
この魔眼が発現した時、師匠も使えない僕だけの固有魔法の扉が開く。
それは、古代魔法文明時代の偉大な魔法使い達が、その存在を抹消した「禁呪」と呼ばれる古の災厄魔法だ。
僕らは普段無詠唱で魔法を操るが、いくつかの魔法には発動のキーとなる言葉を必要とするものがある。
それだけ、強力でチョット凶悪なモノにありがちだ。
この魔法もそのうちの一つ!
「これで死んで貰います。」
「愚者の咆哮」から放たれたいく重もの黒い影が魔物を地中ごと球体に閉じ込める。
この黒い半透明の球体は一部では黒色結界と呼ばれ、隔絶した空間を削り取る。
それだけでは終わらない!
魔眼の力は悪魔との契約の証。
杖を地面に突き刺し言い放つ!
「ブロウ!」
途端に球体の中に荒れ狂う黒い炎が召喚され魔物を喰らい尽くす。
召喚したのは、地獄の業火。
全てを焼き尽くす悪魔の炎だ。
外界と隔絶した空間でなければ召喚でき無い全てを焼き尽くす黒い炎が、魔石に内包された高濃度の魔力ごと根を侵食する。
これが僕の固有魔法「ブロウ」
後にはえぐり取られた地表が残るのみだ。
何も残さず消滅したのを確認し、魔眼を再び封印すると師匠が近寄ってくる。
「あれはどうする?」
見るとえぐり取られた地面から水が噴き出した。
水脈を切断した様だ……
枯渇した水路に沿って地面が徐々に崩れ。
……水源と繋がった。
瞬く間に水が流れ込み二つの大きな池が出来上がる。
うん、水瓶が大きくなったのだから良しとしよう。
いざとなれば街ごと……
◇
「何ですかあれは!」
思案していると、いきなりシャナが掴みかかって来た。
「戻って来ていたんですね!」
「呑気に何言ってんですか!」
襟首を掴まれ前後に揺さぶられながら事の顛末を聞かされる。
獣人は力が強い……
街に辿り着くと、騒然としていた。
衛兵から緊急事態と聞き、全速力で反対側の門に待機する魔術士達と合流した時だったらしい。
巨大な炎の壁が現れ、すぐ側で火柱が上がり、それを光る巨大な魔法陣が押しつぶし、見たことも無い半透明の黒い半球が地面を覆い、何か得体の知れない黒い炎が暴れると、地面ごと消えた。
この異常事態。
ということで、静止するマスターを振り切り駆けつけて来たとのことだ。
確かに見覚えのある職員が三人同行している。
二人の姿を見つけ、近づくと湖が出来ている……
もう、どこからツッコめば良いか分からず掴みかかったらしい。
「これ、どうしたんですか!」
「秘密です……」
「誤魔化されるか!」
総動員で否定されたよ。
師匠が魔法の準備に入っている。
街ごと消す気だ……
なんか、それも良いかと思えて来たなぁ。
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