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一章
オークジェネラルと布陣
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「回り込ませるな!」
「分かってるが数が多い上に、ぐっ!」
オークの動きに気を取られた死角をついてゴブリンの刃が冒険者の脇腹に突き立てられる。
チャンスと見たゴブリンが殺到し、オークがそれ諸共切り裂こうと斧を振り上げる。
「スティール!」
ペアを組んでいた、仲間の冒険者から悲痛な声が飛ぶ。
しかし、その斧は振り下ろされることなく、首筋から血を吹き、崩れる。
「諦めるな立て!」
滑らかな動きを追随する様に、赤髪が美しい軌跡を描くと、息の根を止めるべく群がったゴブリン達が鮮血をほとばしり絶命する。
師匠が小太刀を使っている技は、剣を武器として振るのでは無く、身体の動きに刃が付いてくる、剣術では無く体術だ。
「美しい!その上つえー!」
「当たり前だろう。それより手当するぞ。」
「ぐぁ!」
おもむろに脇腹に突き刺さったゴブリンの剣を引き抜くと、解毒と回復をかける。
みるみる毒で浅黒く変色した皮膚が本来の色を取り戻し、傷口が塞がって行く。
「失った血は戻らないから、無理はするな。」
「はい!ありがとうございます。」
後ろも振り向かず、お礼の言葉に手を振ると赤髪の鬼神は次の獲物に向かい駆け出した。
◇
「ダズル無事か!」
二体のオークを風の刃で絶命させると、すかさず火の矢でゴブリンの半身を吹き飛ばし近づく。
「レオか!助かった。」
ニカッと笑い答えるが、ゴブリンが執拗に襲ってくる。
剣を盾で受け、バランスを崩した所を一撃で切り裂く。
から迫るゴブリンは空いた盾で吹き飛ばし態勢を崩し、それを味方の冒険者が仕留める。
淀みのない見事な連携だ。
「この隙に回復します。」
致命傷こそ無いがこの場にいる三人の冒険者達は皆、所々に切り傷があり、少なくない血が流れていた様だ。
「専門のヒーラーよりも腕が良いな。」
「ありがとうございます。褒めても何も出ませんよ。」
「はは、正直二人には感謝しかねーよ。これだけの武器が無けりゃ全滅だってありえたからな。」
「そう言って貰えれば、武器を提供した僕らも甲斐があったと言うものです。」
「これ、終わったら売ってくれないか?」
もう一人の冒険者が槍を背負いながら聞いてくる。
「それ一本で国買えますけど?」
「げっ、マジかよ。」
「マジです。それに返して貰う約束ですから、諦めて下さい。」
「こいつ使っちまうと、前の武器に戻れるのか不安になるぞ。」
「そこは諦めて貰うしかないですね。それに今回は非常事態ですけど、本来武器に依存する様な戦い方は良くないですよ。」
「レオの言う通りだ。武器よりもお前はもっと自分の力量をあげる方が先だな。」
ダズルも助け舟を出してくる。
その時ドカンッ!という大きな音が聞こえ、振り返るとバリケード代わりにしていた馬車をオークが叩き壊すのが見えた。
ついに限界か。
「あれはやべーぞ。おい!後は任せるぞ !」
二人を残し、馬車に向かい駆け出したダズルを追う。
◇
防御壁代わりに強化しておいた空の荷馬車が度重なるオークの攻撃でついに限界を迎えた。
魔法が解けると、単なる木の塊。
オークの力の前では、なす術もない。
アッサリと破壊されると、商人達が乗る馬車に向かう。
「くそっ!間に合わねー!」
いや、まだだ!
棍棒を振りかぶった右腕を速度を重視した火の矢が吹き飛ばす!
たじろいだ瞬間立て続けに、火の矢を放ち串刺しにし、迫り来るもう一体にも牽制を打ち込むと、到着したダズルが駆け寄る勢いをそのまま剣に込め身体諸共突き刺す!
「うわー、もうだめだ!」
「助けてくれ!」
「お、おい!待て!」
オークの脅威を跳ね除けだが、間近で見た魔物と戦いの恐ろしさに、パニックになった何人かが馬車から飛び出した。
それを追う者、流される者も続いて馬車から出て来る。
「戻れ!」
「戻ってー!」
怒号が入り混じるがパニックになった者には届かない。
まずい!
不意に現れた貧弱な餌を見つけたオークやゴブリンが殺到する。
戦うすべを持たない者が蹂躙されて行く。
瞬く間に引き千切られ、斬り付けられ、叩き潰され、物言わぬ肉の塊に飢えた魔物がむしゃぶりつく。
まだ生きている者を助けるべく駆け寄る冒険者、隙を見せた彼らを追う魔物。
この戦い最大の乱戦が始まった。
一番近くにいたダズルが子供を抱え剣を振る。
そこに殺到するゴブリンに魔法を叩き込む。
逃げ遅れた女性と襲いかかるオーク達との間に割って入ったジルとゲルドが斬り伏せ、女性をヒーラーの子が手を引き離脱する。
本能の赴くまま死体に群がる魔物に魔術師の魔法が突き刺さり、撃ち漏らしを師匠が切り裂き、慈悲の炎が死体を焼き尽くす。
あちらこちらで総力戦だが、これで終わりじゃない。
「スティール逃げろ!」
旅人らしき男性を魔物から守った彼には背後へ意識を配ることが出来なかった。
投げつけられた棍棒が二人の半身を吹き飛ばす。
「スティーーールぅーーー!」
棍棒を投げつけたのはオークの上位種、全てにおいて通常のオークを遥かに凌ぐ。
オークウォーリアとも呼ばれる攻撃力に特化した上位種で、この身の丈は三メートルに届く、生えた牙がさらに醜悪さに拍車をかける。
それが三体。
しかもその後ろから、大きな薙刀を構え、その威圧は他を圧倒する一体が出てくる。
「オークジェネラルか!あれはヤバイ!馬車を背に固まれ!」
すぐにダズルが支持を飛ばす。
少なくない被害が出ているが、武器の性能と必死の抵抗でゴブリン、オークを退けた冒険者達が集まる。
「アイツらこっちが疲弊するのをずっと待っていやがったのか。」
「うぉぉ!」
地鳴りの様な咆哮が放たれると、今まで狂ったように攻め立ててきたオークとゴブリンがウォーリアとジェネラルの下に集まり、両者が正対する。
舞台は整った様だ。
「分かってるが数が多い上に、ぐっ!」
オークの動きに気を取られた死角をついてゴブリンの刃が冒険者の脇腹に突き立てられる。
チャンスと見たゴブリンが殺到し、オークがそれ諸共切り裂こうと斧を振り上げる。
「スティール!」
ペアを組んでいた、仲間の冒険者から悲痛な声が飛ぶ。
しかし、その斧は振り下ろされることなく、首筋から血を吹き、崩れる。
「諦めるな立て!」
滑らかな動きを追随する様に、赤髪が美しい軌跡を描くと、息の根を止めるべく群がったゴブリン達が鮮血をほとばしり絶命する。
師匠が小太刀を使っている技は、剣を武器として振るのでは無く、身体の動きに刃が付いてくる、剣術では無く体術だ。
「美しい!その上つえー!」
「当たり前だろう。それより手当するぞ。」
「ぐぁ!」
おもむろに脇腹に突き刺さったゴブリンの剣を引き抜くと、解毒と回復をかける。
みるみる毒で浅黒く変色した皮膚が本来の色を取り戻し、傷口が塞がって行く。
「失った血は戻らないから、無理はするな。」
「はい!ありがとうございます。」
後ろも振り向かず、お礼の言葉に手を振ると赤髪の鬼神は次の獲物に向かい駆け出した。
◇
「ダズル無事か!」
二体のオークを風の刃で絶命させると、すかさず火の矢でゴブリンの半身を吹き飛ばし近づく。
「レオか!助かった。」
ニカッと笑い答えるが、ゴブリンが執拗に襲ってくる。
剣を盾で受け、バランスを崩した所を一撃で切り裂く。
から迫るゴブリンは空いた盾で吹き飛ばし態勢を崩し、それを味方の冒険者が仕留める。
淀みのない見事な連携だ。
「この隙に回復します。」
致命傷こそ無いがこの場にいる三人の冒険者達は皆、所々に切り傷があり、少なくない血が流れていた様だ。
「専門のヒーラーよりも腕が良いな。」
「ありがとうございます。褒めても何も出ませんよ。」
「はは、正直二人には感謝しかねーよ。これだけの武器が無けりゃ全滅だってありえたからな。」
「そう言って貰えれば、武器を提供した僕らも甲斐があったと言うものです。」
「これ、終わったら売ってくれないか?」
もう一人の冒険者が槍を背負いながら聞いてくる。
「それ一本で国買えますけど?」
「げっ、マジかよ。」
「マジです。それに返して貰う約束ですから、諦めて下さい。」
「こいつ使っちまうと、前の武器に戻れるのか不安になるぞ。」
「そこは諦めて貰うしかないですね。それに今回は非常事態ですけど、本来武器に依存する様な戦い方は良くないですよ。」
「レオの言う通りだ。武器よりもお前はもっと自分の力量をあげる方が先だな。」
ダズルも助け舟を出してくる。
その時ドカンッ!という大きな音が聞こえ、振り返るとバリケード代わりにしていた馬車をオークが叩き壊すのが見えた。
ついに限界か。
「あれはやべーぞ。おい!後は任せるぞ !」
二人を残し、馬車に向かい駆け出したダズルを追う。
◇
防御壁代わりに強化しておいた空の荷馬車が度重なるオークの攻撃でついに限界を迎えた。
魔法が解けると、単なる木の塊。
オークの力の前では、なす術もない。
アッサリと破壊されると、商人達が乗る馬車に向かう。
「くそっ!間に合わねー!」
いや、まだだ!
棍棒を振りかぶった右腕を速度を重視した火の矢が吹き飛ばす!
たじろいだ瞬間立て続けに、火の矢を放ち串刺しにし、迫り来るもう一体にも牽制を打ち込むと、到着したダズルが駆け寄る勢いをそのまま剣に込め身体諸共突き刺す!
「うわー、もうだめだ!」
「助けてくれ!」
「お、おい!待て!」
オークの脅威を跳ね除けだが、間近で見た魔物と戦いの恐ろしさに、パニックになった何人かが馬車から飛び出した。
それを追う者、流される者も続いて馬車から出て来る。
「戻れ!」
「戻ってー!」
怒号が入り混じるがパニックになった者には届かない。
まずい!
不意に現れた貧弱な餌を見つけたオークやゴブリンが殺到する。
戦うすべを持たない者が蹂躙されて行く。
瞬く間に引き千切られ、斬り付けられ、叩き潰され、物言わぬ肉の塊に飢えた魔物がむしゃぶりつく。
まだ生きている者を助けるべく駆け寄る冒険者、隙を見せた彼らを追う魔物。
この戦い最大の乱戦が始まった。
一番近くにいたダズルが子供を抱え剣を振る。
そこに殺到するゴブリンに魔法を叩き込む。
逃げ遅れた女性と襲いかかるオーク達との間に割って入ったジルとゲルドが斬り伏せ、女性をヒーラーの子が手を引き離脱する。
本能の赴くまま死体に群がる魔物に魔術師の魔法が突き刺さり、撃ち漏らしを師匠が切り裂き、慈悲の炎が死体を焼き尽くす。
あちらこちらで総力戦だが、これで終わりじゃない。
「スティール逃げろ!」
旅人らしき男性を魔物から守った彼には背後へ意識を配ることが出来なかった。
投げつけられた棍棒が二人の半身を吹き飛ばす。
「スティーーールぅーーー!」
棍棒を投げつけたのはオークの上位種、全てにおいて通常のオークを遥かに凌ぐ。
オークウォーリアとも呼ばれる攻撃力に特化した上位種で、この身の丈は三メートルに届く、生えた牙がさらに醜悪さに拍車をかける。
それが三体。
しかもその後ろから、大きな薙刀を構え、その威圧は他を圧倒する一体が出てくる。
「オークジェネラルか!あれはヤバイ!馬車を背に固まれ!」
すぐにダズルが支持を飛ばす。
少なくない被害が出ているが、武器の性能と必死の抵抗でゴブリン、オークを退けた冒険者達が集まる。
「アイツらこっちが疲弊するのをずっと待っていやがったのか。」
「うぉぉ!」
地鳴りの様な咆哮が放たれると、今まで狂ったように攻め立ててきたオークとゴブリンがウォーリアとジェネラルの下に集まり、両者が正対する。
舞台は整った様だ。
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