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御曹司の初恋ーーお願いシンデレラ、かぼちゃの馬車に乗らないで
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進路を再び別荘へ。到着すると先に浅田さんがやって来ていた。
「遅かったね」
私の姿を見付け、車から降りると挨拶もせず不快感を表す。
「お待たせしてすいません。浅田さんがいらっしゃるのは、もっと遅い時間と伺っていましたので」
一瞬、呆気に取られるも慌てて頭を下げた。
「君の為に仕事を早く切り上げてきたんだが?」
サプライズが失敗した為か、浅田さんの機嫌は宜しくなさそう。
「……そうだったんですね、本当に申し訳ありません」
「はぁ、管理人から鍵は預かっているよ。中でゆっくりさせて貰ってもいい? 久し振りに運転したから疲れたんだ」
今日は運転手が同行していない。滞在は一日なので荷物は多くないものの、浅田さんは私へ鞄を預けると敷地内へ入っていく。
「この別荘は両親が若い頃によく遊びに来ていたんです。自然に囲まれて癒やされますよね? 耳を澄ますと野鳥の鳴き声が聞こえるんですよ」
「あぁ、そう」
振り向かない背中へ世間話を投げ掛けてみたが広がらない。近くの森に小屋があり、幼少期はそこで野鳥観察していた話をしても興味は引けないだろう。
「はい、人の家を勝手に開ける訳にはいかないでしょ?」
ドアの前までくると両手が塞がった私に鍵を差し出す。
「え、あ、そ、そうですよね。失礼しましたーーっ!」
私としては解錠してくれて構わないが、そう言うならと荷物を下ろす。
と、鍵を受け取る仕草を握られた。
「あの、浅田さん?」
「管理人が風呂と食事の準備を整えてくれたそうだ。あぁ、ワンピースが良く似合ってるね」
指と指を絡ませ、取ってつけたお世辞を言う。
私とて男性と二人きりで過ごす意味は理解しているつもりだ。しかし、ここまで露骨に下心を剥き出しにされたら怯む。
「ーーやめて、下さい」
粘り気のある雰囲気を掻い潜り室内へ上がった。
「まぁ、いい。いつまでも逃げ回れないからね」
せいぜい頑張りなさい、そんな含みを込めて浅田さんは私の肩を叩く。
浅田さんから私への愛情は微塵も感じられない。とあるパーティーで見掛けた私を見初めたらしいが、単に家柄と若さがお気に召したのだろう。冷たい眼差しは一回りも離れた相手を狩りたがっている。
ここは勝手知ったる場所とあって無言で二階へ逃げ込む。すると浅田さんは追い掛けてはこず、リビングでテレビをつけたようだ。
「はぁ」
あの人に抱かれる夜など訪れなければいいのに。母が使っていた鏡台の前で願い事を唱えた。
ついでに、鏡よ、鏡、世界で一番愚かな選択をするのは誰かと聞いてみようか。間違いなく鏡の精はこんな土壇場になってから斗真さんへ好きだと伝えたがる私を映すはず。
斗真さんが恋しくなり携帯電話を取り出す。あれから着信もメールもないのは当然だ。
日本との時差は八時間、そろそろ朝食を摂っているだろうか。靴の本場とされるイタリアの暮らしも大分慣れ、行きつけのカフェが出来たと聞く。本人曰く水ではなくコーヒーが合うそう。
エスプレッソを片手にイタリア美女等と談笑する姿を想像し、唇を噛む。滅多に帰国しない彼はあちらで素敵な恋人を見付けたかもしれないーー私とは違って。
斗真さんは恋愛に関する話題を避ける節があり、たぶんそれは私達が兄妹みたく育ったから。私相手だと恋愛模様を話すのが擽ったいらしく、はぐらかす。そればかりか御曹司という世の女性が放っておかない身分なのに、浮いた話も聞かせなかった。
「ねぇ、お茶を淹れてくれない?」
階段下より浅田さんが指示する。
「あ、はい。すぐにお持ちしますね」
この時、鏡台の上へ携帯を置いたままにしてしまい、数分後に入る連絡に気付く事は出来なかった。
進路を再び別荘へ。到着すると先に浅田さんがやって来ていた。
「遅かったね」
私の姿を見付け、車から降りると挨拶もせず不快感を表す。
「お待たせしてすいません。浅田さんがいらっしゃるのは、もっと遅い時間と伺っていましたので」
一瞬、呆気に取られるも慌てて頭を下げた。
「君の為に仕事を早く切り上げてきたんだが?」
サプライズが失敗した為か、浅田さんの機嫌は宜しくなさそう。
「……そうだったんですね、本当に申し訳ありません」
「はぁ、管理人から鍵は預かっているよ。中でゆっくりさせて貰ってもいい? 久し振りに運転したから疲れたんだ」
今日は運転手が同行していない。滞在は一日なので荷物は多くないものの、浅田さんは私へ鞄を預けると敷地内へ入っていく。
「この別荘は両親が若い頃によく遊びに来ていたんです。自然に囲まれて癒やされますよね? 耳を澄ますと野鳥の鳴き声が聞こえるんですよ」
「あぁ、そう」
振り向かない背中へ世間話を投げ掛けてみたが広がらない。近くの森に小屋があり、幼少期はそこで野鳥観察していた話をしても興味は引けないだろう。
「はい、人の家を勝手に開ける訳にはいかないでしょ?」
ドアの前までくると両手が塞がった私に鍵を差し出す。
「え、あ、そ、そうですよね。失礼しましたーーっ!」
私としては解錠してくれて構わないが、そう言うならと荷物を下ろす。
と、鍵を受け取る仕草を握られた。
「あの、浅田さん?」
「管理人が風呂と食事の準備を整えてくれたそうだ。あぁ、ワンピースが良く似合ってるね」
指と指を絡ませ、取ってつけたお世辞を言う。
私とて男性と二人きりで過ごす意味は理解しているつもりだ。しかし、ここまで露骨に下心を剥き出しにされたら怯む。
「ーーやめて、下さい」
粘り気のある雰囲気を掻い潜り室内へ上がった。
「まぁ、いい。いつまでも逃げ回れないからね」
せいぜい頑張りなさい、そんな含みを込めて浅田さんは私の肩を叩く。
浅田さんから私への愛情は微塵も感じられない。とあるパーティーで見掛けた私を見初めたらしいが、単に家柄と若さがお気に召したのだろう。冷たい眼差しは一回りも離れた相手を狩りたがっている。
ここは勝手知ったる場所とあって無言で二階へ逃げ込む。すると浅田さんは追い掛けてはこず、リビングでテレビをつけたようだ。
「はぁ」
あの人に抱かれる夜など訪れなければいいのに。母が使っていた鏡台の前で願い事を唱えた。
ついでに、鏡よ、鏡、世界で一番愚かな選択をするのは誰かと聞いてみようか。間違いなく鏡の精はこんな土壇場になってから斗真さんへ好きだと伝えたがる私を映すはず。
斗真さんが恋しくなり携帯電話を取り出す。あれから着信もメールもないのは当然だ。
日本との時差は八時間、そろそろ朝食を摂っているだろうか。靴の本場とされるイタリアの暮らしも大分慣れ、行きつけのカフェが出来たと聞く。本人曰く水ではなくコーヒーが合うそう。
エスプレッソを片手にイタリア美女等と談笑する姿を想像し、唇を噛む。滅多に帰国しない彼はあちらで素敵な恋人を見付けたかもしれないーー私とは違って。
斗真さんは恋愛に関する話題を避ける節があり、たぶんそれは私達が兄妹みたく育ったから。私相手だと恋愛模様を話すのが擽ったいらしく、はぐらかす。そればかりか御曹司という世の女性が放っておかない身分なのに、浮いた話も聞かせなかった。
「ねぇ、お茶を淹れてくれない?」
階段下より浅田さんが指示する。
「あ、はい。すぐにお持ちしますね」
この時、鏡台の上へ携帯を置いたままにしてしまい、数分後に入る連絡に気付く事は出来なかった。
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