9 / 16
御曹司の初恋ーーお願いシンデレラ、かぼちゃの馬車に乗らないで
9
しおりを挟む
「ーー夫婦? 笑わせるな! 仮にも妻に迎えたい女性が森に入って、心細いと泣いているんだぞ? それを放って熟睡する神経が分からない! 分かりたくもないがな!」
「や、やめて! 斗真さん!」
掴みかかりそうな雰囲気を慌てて止める。
浅田さんが私をこれっぽっちも愛していないのは承知していても、あれから捜索せず寝ていたと知らされ惨めになった。
「斗真? 君は峯岸斗真なのか? 何処かで見た顔だと思ったが、そうか、なるほど」
斗真さんの素性に気付き、浅井さんはすかさず携帯電話を構えてシャッターを切る。斗真さんは惨めさで震えた私の肩を抱き、言い逃れが出来ないポーズをしていた。
「女性靴をメインで扱う企業の代表が人の婚約者に手を出すなんて。世間はどう思うだろうな? イメージが悪いよ?」
私が今更でも距離を作ろうと身を捩ると、斗真さんは逆に密着を強めようとする。
「そんな写真でいいのか? お望みならもっと親密な写真を撮らせてやってもいいが?」
浅田さんの脅しは全く効いておらず、それどころか私を後ろから抱き締め、髪へ口付けを落とす。
「姫香、俺はこの恋が彼によって公表されても構わない。俺が初恋の相手の為に靴を作っている事は皆、知っている。なにせそれが企業のアイデンティティだ」
「どう繕ったって奪略は奪略! 然るべき対応をさせて貰うからな!」
喚く浅田さん。
「ご勝手に。その然るべき対応とやらをしてお前の清廉潔白が証明されればいいが。さて、叩けば埃が出るのは俺なのか?」
ボストンバッグを拾って文字通り、埃を払う。
「まぁ、いい。お前がその気なら俺も本気で相手をしてやる。かかってこいよ?」
斗真さんはシャツを捲り、私を道の脇へ避難させた。
「斗真さん! 暴力はーー」
「殴ったりしない、心配するな。こいつは殴る価値もない」
ヒステリックに持論を主張する分、口では浅田さんが優勢に映るものの、斗真さんの言葉は一つひとつ重みがある。
「はっ、峯岸の御曹司は頭に血が上りやすい。女にのぼせ判断を誤れば身を滅ぼす。その女にどれだけ価値がある?」
私を指差す。表情も表現も最大限に歪め、もはや憎まれていると感じてしまう。
「彼女は甘やかされ、蝶よ花よと育てられた箱入り娘。所詮、若くて少し可愛いだけ。父親が倒れても打つ手がなく、援助目当てに僕との結婚を決めたんだ」
そう、仰る通り。これに関しては申し開きをしようもなくて。
すると斗真さんは一歩前へ出て、浅田さんの人差し指を掴む。
「これ以上、姫香を侮辱すればお前の会社の不正を暴く。それに甘やかされて育てられたのはお前じゃないのか? 姫香以外にも随分と女性を泣かせているみたいだな? 彼女等への慰謝料を両親に支払わせるなんて、浅田不動産の二代目はろくでなしだ」
「い、痛い! 痛い、痛い、痛い!」
人差し指を思い切り反らす。ギブアップとばかりに浅田さんは片方の手を上げ、見ているこちらへも痛みが伝わった。
「姫香に謝罪しろ」
「なっ、僕は間違った事は言ってなーー」
「もう一度、言う。姫香に謝れ。俺はな、イタリアから日本へ戻ってくる間、お前とお前の会社についてじっくり調べた。この意味が分かるよな? 俺を敵に回して無傷でいられると思うなよ?」
低い声で忠告し手が離されると、浅田さんがへなへなその場へ座り込む。
「さぁ、言え」
冷たい目で見下げ、促す。私には見せたことのない厳しい表情だ。
浅田さんは戦意を喪失した眼差しをこちらへ流す。それでも唇は謝罪を躊躇い、わななく。
「私は謝罪して頂かなくても……」
「なら、姫香はこの男に何を望む?」
「え、望み?」
「謝罪を要求しない代わり、何をさせたい? これが最後なんだ。彼も姫香のお願いをきいてくれるはずさ。なぁ、そうだろう?」
打って変わり、にこやかに同意を求める斗真さん。しかし浅田さんは直視出来ない様子。尻尾を掴まれたみたいに強張る。
私も浅田さんが正攻法で業績を上げているか疑い、それとなく探った事もあった。しかし不正の事実や女性問題を暴くには至らず、斗真さんの調査能力の高さに感服だ。
「私が浅田さんに……」
考えを巡らせるまでも無かった。
「私と別れてください、婚約を破棄して欲しいです!」
「や、やめて! 斗真さん!」
掴みかかりそうな雰囲気を慌てて止める。
浅田さんが私をこれっぽっちも愛していないのは承知していても、あれから捜索せず寝ていたと知らされ惨めになった。
「斗真? 君は峯岸斗真なのか? 何処かで見た顔だと思ったが、そうか、なるほど」
斗真さんの素性に気付き、浅井さんはすかさず携帯電話を構えてシャッターを切る。斗真さんは惨めさで震えた私の肩を抱き、言い逃れが出来ないポーズをしていた。
「女性靴をメインで扱う企業の代表が人の婚約者に手を出すなんて。世間はどう思うだろうな? イメージが悪いよ?」
私が今更でも距離を作ろうと身を捩ると、斗真さんは逆に密着を強めようとする。
「そんな写真でいいのか? お望みならもっと親密な写真を撮らせてやってもいいが?」
浅田さんの脅しは全く効いておらず、それどころか私を後ろから抱き締め、髪へ口付けを落とす。
「姫香、俺はこの恋が彼によって公表されても構わない。俺が初恋の相手の為に靴を作っている事は皆、知っている。なにせそれが企業のアイデンティティだ」
「どう繕ったって奪略は奪略! 然るべき対応をさせて貰うからな!」
喚く浅田さん。
「ご勝手に。その然るべき対応とやらをしてお前の清廉潔白が証明されればいいが。さて、叩けば埃が出るのは俺なのか?」
ボストンバッグを拾って文字通り、埃を払う。
「まぁ、いい。お前がその気なら俺も本気で相手をしてやる。かかってこいよ?」
斗真さんはシャツを捲り、私を道の脇へ避難させた。
「斗真さん! 暴力はーー」
「殴ったりしない、心配するな。こいつは殴る価値もない」
ヒステリックに持論を主張する分、口では浅田さんが優勢に映るものの、斗真さんの言葉は一つひとつ重みがある。
「はっ、峯岸の御曹司は頭に血が上りやすい。女にのぼせ判断を誤れば身を滅ぼす。その女にどれだけ価値がある?」
私を指差す。表情も表現も最大限に歪め、もはや憎まれていると感じてしまう。
「彼女は甘やかされ、蝶よ花よと育てられた箱入り娘。所詮、若くて少し可愛いだけ。父親が倒れても打つ手がなく、援助目当てに僕との結婚を決めたんだ」
そう、仰る通り。これに関しては申し開きをしようもなくて。
すると斗真さんは一歩前へ出て、浅田さんの人差し指を掴む。
「これ以上、姫香を侮辱すればお前の会社の不正を暴く。それに甘やかされて育てられたのはお前じゃないのか? 姫香以外にも随分と女性を泣かせているみたいだな? 彼女等への慰謝料を両親に支払わせるなんて、浅田不動産の二代目はろくでなしだ」
「い、痛い! 痛い、痛い、痛い!」
人差し指を思い切り反らす。ギブアップとばかりに浅田さんは片方の手を上げ、見ているこちらへも痛みが伝わった。
「姫香に謝罪しろ」
「なっ、僕は間違った事は言ってなーー」
「もう一度、言う。姫香に謝れ。俺はな、イタリアから日本へ戻ってくる間、お前とお前の会社についてじっくり調べた。この意味が分かるよな? 俺を敵に回して無傷でいられると思うなよ?」
低い声で忠告し手が離されると、浅田さんがへなへなその場へ座り込む。
「さぁ、言え」
冷たい目で見下げ、促す。私には見せたことのない厳しい表情だ。
浅田さんは戦意を喪失した眼差しをこちらへ流す。それでも唇は謝罪を躊躇い、わななく。
「私は謝罪して頂かなくても……」
「なら、姫香はこの男に何を望む?」
「え、望み?」
「謝罪を要求しない代わり、何をさせたい? これが最後なんだ。彼も姫香のお願いをきいてくれるはずさ。なぁ、そうだろう?」
打って変わり、にこやかに同意を求める斗真さん。しかし浅田さんは直視出来ない様子。尻尾を掴まれたみたいに強張る。
私も浅田さんが正攻法で業績を上げているか疑い、それとなく探った事もあった。しかし不正の事実や女性問題を暴くには至らず、斗真さんの調査能力の高さに感服だ。
「私が浅田さんに……」
考えを巡らせるまでも無かった。
「私と別れてください、婚約を破棄して欲しいです!」
11
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
氷の公爵の婚姻試験
潮海璃月
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。
慈悲深い天使のテーゼ~侯爵令嬢は我が道を征くつもりだ
あとさん♪
恋愛
王太子の婚約者候補に名を連ねながら、政権争いに敗れ、正式任命されなかった侯爵令嬢パトリシア。
彼女には辺境伯家との縁組が命じられた。辺境伯は毛むくじゃらの天をつくような大男で、粗野で野蛮人だと王都では噂されている。さらに独立して敵国に寝返るかもしれないと噂される辺境伯家に嫁いだら、いったいどうなるの?
いいえ、今まで被り慣れた巨大な猫を、この際、盛大に開放させましょう。
わたくしは過去の自分を捨て、本来のわたくしに戻り、思うまま生きてやります!
設定はゆるんゆるん。なんちゃって異世界。
令嬢視点と辺境伯視点の2話構成。
『小話』は、2人のその後。主に新婚さんの甘々な日常。
小説家になろうにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる