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数年後
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秀人の本心で紡がれているであろう言葉が優子に温かく染み渡り、ひとしきり声を上げて泣いた。
泣き声の振動で自分という殻がひび割れていく。閉ざした環境より放たれる開放がある一面、隠してあったものも晒されてしまうだろう。それで良かった。
優子は微笑む。飾りもせず繕ってもいない正真正銘の笑顔に秀人は自然と唇を寄せていったーーが。
「え、嘘でしょ、優子ちゃん?」
口付けの手前で立花の声。熱が導くまま触れ合おうとした2人は素に戻り、秀人が乱暴に襟足を掻く。優子も離れようとするが秀人が手を離さない。
「っち、空気読めよ」
「いやいや、普通驚くでしょうに。そちら優子ちゃんでしょ? なんでこんな所にいるのさ?」
「……ほぉ、お前は優子が生きているのに驚かないんだな」
指摘は的を射ており、立花に返答をつまらせた。立花は優子の所在を把握していないにしろ、良子を優子として弔ったのを知っている。
優子は秀人の手を握り返す。馬が合うだけで秀人と立花が交友関係を築いているとは考えにくい。
「優子ちゃんまでそんなに睨むなよ。はぁ、分かった分かった。全部話す、話すから、酒井さんに場所を確保して貰おうか」
泣き声の振動で自分という殻がひび割れていく。閉ざした環境より放たれる開放がある一面、隠してあったものも晒されてしまうだろう。それで良かった。
優子は微笑む。飾りもせず繕ってもいない正真正銘の笑顔に秀人は自然と唇を寄せていったーーが。
「え、嘘でしょ、優子ちゃん?」
口付けの手前で立花の声。熱が導くまま触れ合おうとした2人は素に戻り、秀人が乱暴に襟足を掻く。優子も離れようとするが秀人が手を離さない。
「っち、空気読めよ」
「いやいや、普通驚くでしょうに。そちら優子ちゃんでしょ? なんでこんな所にいるのさ?」
「……ほぉ、お前は優子が生きているのに驚かないんだな」
指摘は的を射ており、立花に返答をつまらせた。立花は優子の所在を把握していないにしろ、良子を優子として弔ったのを知っている。
優子は秀人の手を握り返す。馬が合うだけで秀人と立花が交友関係を築いているとは考えにくい。
「優子ちゃんまでそんなに睨むなよ。はぁ、分かった分かった。全部話す、話すから、酒井さんに場所を確保して貰おうか」
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