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第三部 そして動き始める
彼女白い子と喧嘩する
しおりを挟むその夜眠りに就くと、灰色の世界の中で空だけが真っ暗になっていた、しかも風まで吹いている
…お……おお?風を認識した途端身体が持っていかれそうになる、静謐だった死の世界に変化が起きている。
風に飛ばされないように、座り込んで空を見ていると
「何やってるの?」
背後からクソ不機嫌な声がした
いや、何やってるは現在進行形で、俺が言いたいんだが?
「何って、どれ?」
這いずって椅子つかまりそう聞くと、まず風が止んだ。
テーブルの上には、今朝俺がお供えしたパンケーキと、スコーンをのせた皿がある
食べなかったの?気に入らなかった?
残念と、少ししょんもりしてたら
「これは…一緒に…食べようと思って。」
彼女が、怒り乍もどこか照れてる声で、ポソポソ言う。
あら可愛い、やだ嬉しい事言うわねぇ。
つい、ニヤニヤしてしまったら
「…それより、なに?あれ。」
地を這うような声で、聞いてくる。
「"あれ"も、歌なの?」
「あんな…私の中から、何かを抉りとる様なものが"歌"なの?」
ああ、そういえば彼女に聞かせていたのは穏やかなモノが多かった様な気がする
「あれも、同じ歌だよ。ああ、でも…」
違いはアレだ
「歌ってる俺の心持ちが違ったかな。」
そう言うと、彼女は怪訝そうな声で
「どう違ったのよ…。」
そりゃあもう、あれですわ
「聞かせる気合が、ちょっと割り増しになってたね。」
ほほほ見事泣かせてやったわ、と言うと
「泣かせる気だったの?」
と、言ってきたので誤解を解いておく
「泣かせるっていうより、慣れない刺激を与えてやるっ、て気持ちだったかな。」
そう言うと
「……確かに、自分でも解らない感覚だったわ。」
おお!情緒が育ってる?やったぜ!
「何ニヤニヤしてるの?!私は怒ってるのよ!?」
そう言って怒る姿も嬉しいのだ、なぜなら
「怒る位、何かを感じてくれたんでしょ?それは"俺の歌"に対するご褒美なんだよ、まぁ、元の曲が凄いからあんまり自慢にならないけど。」
生前、これで稼いでいた俺からすれば、本当にご褒美なのだ…が
言ってしまえば、他人のふんどしで横面をぶん殴ったので、こう言うと本気で自慢にならねぇな…。
いや、今までもそうだったわ
自分の考えで、遠い目になってしまった。
「ね…ねぇ、どうしたの?」
突然俺の目が死んだので、びっくりしたのか、彼女がオロオロした声で話かけてきた
「あ、うん大丈夫、ちょっと偉そうな事言って恥ずかしくなっただけ。」
はははと、虚ろに笑って言ったら
「お…お茶、飲む?」
そう言って、お茶をいれてくれた
「…うん、ありがとう。」
お礼を言ってありがたくいただいていると
「…わ、私は貴方の歌、好きよ。」
もじもじしながら言ってくれた、突然のデレに戸惑いつつも
「あ…ありがとう~っ。」
そう言うと、彼女から少し安心した様な空気が流れてきた。
そして自身も、入れたお茶を一口飲んで、ふうっと息を吐いた後、俺に聞いてきた
「前に聞かせてくれた歌と、今日聞いた歌は随分感じが違うのね。」
「そうだね、大雑把にいうと、君に聞かせたのは昔の曲で、今日のは最近の曲
あと、ジャンルも違うね。」
「私は、やっぱり前に歌ってくれた歌のジャンル?の方が好きだわ。」
うん、それもありです
「沢山あるからね、いっぱい聞くといいよ。なんせ人類の文化の一つだもの。」
文化の極みと、某カオル君も言っていたが正しくその通りだ。
「歌は、人間だけのものなの?」
「いや、クジラやイルカは歌うって言われてるし、鳥は鳴き声が歌みたいだよね、植物も音楽をきかせると、成長が早くなるって言われてる、だけどね。」
「だけど?」
ここからは俺の持論だ
「伝えたい言葉を、すぐに受け取ってくれる相手は、同じ言葉を持つ人間だけだ。」
「…そうね。」
話が出来るって、凄い事だったのね、そう呟くのが聞こえた。
「言葉にして伝えるって、本当に大事だよね、俺もそう思う。」
解った様に言ってるが、実は俺も心からそう思う様になったのは、マルガレーテ様の影響だ
「友達が何かする時は、報・連・相大事って言うから、そう思う様になったんだよね。」
「……友達が、いたの ?」
「いるよ?!」
なんなら生前の死因も、ダチの痴情のもつれに巻き込まれからだからね?!
殺しにくる位、相手と揉めてるなら一言言っとけ!
そう思うと、マジで報・連・相大事だな!
今更だけどね?!
「自分が死んだ原因の友達なんて、いない方が良かったんじゃない?」
「いや、それは無い。」
反射的に否定してしてまった、だけど
「原因の一端かもしれないが、実際に俺を殺したのはトチ狂った何処かの馬鹿だ。」
うん、思い出したあの刺された後
「テメェ!!何しやがる!!」
女であろうと、普段はつとめて柔らかくしていた声をかなぐり捨てて、聞いた事の無い怒号をあげていた。
うっすら見える視界には、犯人に馬乗りになって殴りつけている姿
髪を振り乱し、拳は血にまみれて
(お前今顔が、般若みたいになってんぞ。)
けれど、その姿こそが俺に対する親愛そのものの形だった
「"俺"はあいつの友達で良かったって思ってるよ。」
そう言う俺を、苦虫を噛み潰したような顔で見ながら
「"今"そうやって生きているから、言える事なんじゃない?」
それを聞いて笑ってしまった
「そうだね俺は許してる、でも、もしも向こうの世界で生きてても許してるし。」
彼女に向かって、ニッコリ笑う
「こちらの世界で、前の記憶が無ければ
それはもう"俺"じゃないし、記憶がある今は、あいつのダチで良かったって思うだけだ。」
解った?と笑うと
「…何でそんなに怒るの?」
泣くのを堪える様な声でたずねてきた
「友達を"いない方がいい"なんて扱いされたら、誰でも怒るよ。」
「そんなの解らないわ、だってそんなモノ私にはいなかったもの。」
その言葉と共に、周りが暗くなってゆく
どうやら今日は、これでお開きらしい。
ただ彼女の最後の言葉が妙に切なかった。
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