お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴

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一章 異世界クラセリア

女子との急接近

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 笹島さんとまるで中身のない会話をしつつ、一週間が終わろうとしている。

 正直なところを言うと、小うるさいマスコミとクラスのカースト上位陣が消えてくれて遅まきの青春を味わってる今。
 クラスメイトをこの世界に戻す必要があるのか? 
 と真剣に考えている俺がいる。


「いや、戻す必要はあるっしょ?」

「やっぱり?」

「もち」


 笹島さんからの否定の言葉に、そう言えば親友を送り込んだんだっけ? と思い出す。
 上島美春。
 親友を置き去りにしたのに良心が痛まないのかと思うが、そこはハズレスキルとアタリスキルの差異によるいがみ合いがあった。


「でも笹島さんのスキルって『充填』だったよね?」

「そうだよ」

「電子機器使いたい放題になるのってある意味メリットの塊じゃない?」

「いや、異世界って電波ないんでしょ? スマホ頼りのあたしたちにとったらそれこそ宝の持ち腐れっしょ」


 異世界に行ったとしてそのスキル一本で活躍できるか?
 そう問われたら確かに難しいと答えるだろう。
 特に身を守る術を持たない笹島さんは、親友からも切り離される危険性が伴う。それを思ったら好き好んで異世界に残りたいとは思えない、か。
 その気持ちは痛いほどわかるよ。


「磯っちがいるんならともかくさー、単独ならあたしはお荷物まっしぐらってわけ」

「まぁ俺もそこんところ似た様なもんだけどね。戦闘とか全然だし」

「磯っちのはクールタイムが長すぎだもんね、戦闘に向かないかー」

「そこなんだよ」


 笹島さんは話を俺に合わせてくれるのでトークが続きやすい。
 ぼっち気質の俺にはありがたい存在だった。


「磯貝君、そろそろ時間よ?」


 クラス委員の城島さんが眼鏡を指で押し上げつつ嗜めてくる。
 こっちはこっちで頼んでるのか命令してるのかわからない。
 本人に悪気はないものの、その冷たい視線は思春期の男子をいろいろ勘違いさせるものがあった。


「へいへい。転移っと」


 もはや何回も無駄な転移を繰り返してきたので、転移先はめちゃくちゃ増えている。
 なんせ転移する度に転移場所って増えるし。

 そう頻繁に使えるもんじゃないが、自宅から教室に行ったり来たりするうちにレベルがいくつか上がって、選択できる回数が地味に増えているのだ。

 今や教室への転移回数は10回まで。
 それぞれが7日待ちだが、一日一回使ってなおお釣りが来るほどである。同様に自宅前も10回。
 異世界はまだ試行回数が少ないから相変わらず週一だけど、回数を増やせばそのうち日帰りできる様になるかもな。

 できたとしてもみんなには内緒だ。自分で使う分にはいいが、誰かの都合で能力講師は一番面倒臭いやつだもん。

 しかしクラスメイトを異世界から帰還させるのはクラスの総意。
 設定を頭の中で置き換えると、向こうで分かれた時とは全く装いの違う彼等が現れた。
 どうも戦闘状態だったようで疲労の色が見えていた。


「はぁ、はぁ、ここは?」

「お前らの地元。お帰り、岡戸君。その様子を見るに結構苦戦した感じ?」

「そうだ、木村が!」

「俺がどうした?」

「お前、よくもナターシャを!」


 誰?
 血が滲むくらいに拳を握る岡戸が、木村に向かって叫んでいた。
 その怒り様ときたらちょっと小突き合うとかそんな雰囲気じゃない。
 差し違えてでも殺してやる!
 そんな気迫さえ漂わせている。
 こわっ。
 いったい向こうで何があったのやら。


「待て待て、いったいなんの話だ?」

「お前が僕の仲間を連れ去って、凌辱したのは既に調べがついているぞ! 今更開き直るつもりか!」

「いやいや、いったいなんの話だよ。凌辱ぅ? 俺が? 俺はずっと向こうで配信やってたってーの!」

「!? そんな……エミリー様はお前が容疑者だと疑ってかかっておられたぞ? ではいったい誰が彼女を貶めたと言うのか。クソ、これで手がかりは消え失せた。状況は振り出しか!」


 食い違う意見。
 まるで物語の主人公どころか、復讐者の様にクラスメイトに疑いを向ける岡戸。
 対する木村はいつも通りウェイウェイしてる。

 その様子が気に食わないのか、岡戸は事あるごとに机を強く叩いていた。
 向こうで獲得した能力は、どうやらこちらでは消え去る様だ。
 もし魔法がこっちでも使えてたら、今すぐに消し炭にしてやる。
 そんな表情で岡戸が木村を睨みつけていた。


「取り敢えずみんなゆっくり休んだら?」


 城島さんが購買で買ってきた栄養ドリンクを帰還者一人一人に渡していた。


「ありがとう」

「くっ……では誰がナターシャを!」


 そう苦悶の表情で叫ぶ岡戸の腕には、見たことのない腕輪が嵌められていた。
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