45 / 47
三章 箱庭
情報戦
しおりを挟む
傀儡の王を操ってる時、クーシャの耳に王女が凶兆を宿すスグエンキルに行きたいと我儘を言うので監視がてら向かわせた。
なぜか聖女まで一緒に赴くと言うのだから怪しいことこの上ない。
きっと何か隠し事があるに違いない。
そう思ってマーナの視界から状況を覗くクーシャだったが……
(は? 何でこの時代にアイスクリームとかあんのよ!? 時代背景考えたことあんの!?)
そのスイーツが表に出るのは早くても五年後。
そうなる様に仕組んだのは他ならぬクーシャである。
「どうかされましたか、マーナ様。ご気分がすぐれない様ですが。寝室でお休みになられますか?」
心配するスグエンキル子息。クーシャはもっとガン見したいが為に下手な芝居を打って場に残ることを選択した。
「アイスクリームを出すには早すぎましたか。ではこちらを」
そう言って目の前で綿飴を作り出すスグエンキル。
(え!? 何でそれを知ってるの? 原作にそんなもの出してない。こんな偶然ってある!?)
「マーナ様、要らないのならわたくしが頂いてもよろしいでしょうか? わたくしこれには目がなくて」
クーシャが判断に戸惑ってる間に、横から出てきた聖女がクーシャの目の前で綿飴を奪い去って美味しそうに頬張る。
「美味しいですわぁ♪ 」
「こらこら、マーナ様にお出ししたものだぞ?」
「だって、こんな暑い時期に早くお召しになられないんですもの。やっぱりお具合が悪いと思って頂いたのです」
「確かに今日は好物をろくに摘みもなさらない。やはりお具合が悪いのだろう」
まるでこの場所から引き離そうと話がまとまる中、クーシャは歯噛みしながら傀儡状態を切る。
監視モードがなくても、後から記憶をいくらでも保持くれるからだ。
◆◆◆
「う、ううん……ここは?」
「お目覚めになられましたか? マーナ様」
「私……お父様と出会ってからの記憶が曖昧なの。ここはどこ?」
「我がスグエンキル邸ですよ。ご自分の足でここまで来たのです。覚えておりませんか?」
「分からないわ。でも、ずっと意識はあったの。ただ、思考にモヤが掛かったみたいで。カーミが私の目の前で綿飴を頬張ってる姿を非常に不愉快に思ったところまでは思い出せるわ」
マーナの不調は、見た通りのものだった。
コモーノはカーミへ素早く目配せし、カーミもコモーノにだけ見える様に空中に光で文字を描く。
言葉には出さず、記憶に留める。
その内容は洗脳状態にあったこと。
解呪の方法はなく、上位存在の憑依が外れない限り元に戻らない。
まるでアルフレッドの擬鎧の様だと思った。
「取り敢えず、長旅の疲れが出たのでしょう。お部屋へ案内いたします。アルフ、姫様を客室へ」
「畏まりました。さぁ、姫様こちらに」
「お世話になるわね。カーミ、貴方はどうなさるの?」
「私は元気ですので、これからコモーノ様と色々スイーツについて問答をするつもりです」
「では先に休ませていただきます。食事の際はいつも通りお願いしますね?」
「はい、おやすみくださいまし」
アルフに案内されて、マーナは退室した。
残されたコモーノとカーミは、さっきまでの状況を思い出す様に会話する。
「さて、あれは演技なくマーナ様だと思うか?」
「いつもの意地汚い一面が見えましたので、おそらくは」
「そこで判断するのは流石に不敬だぞ?」
「ご本人がいらっしゃらない時くらいはいいではないですか。それよりも……例の噂がまるで収束してない件ですが……」
例の教会主催の楽園の噂。
霊亀の存在流出と、今なら敬虔な教徒になればお布施次第で楽園に入れると言う胡散臭いものである。
「ああ、あれか。アレはわざと放置してる。情報を丸々改竄してな」
「噂の出所を突き止めただけではなく、丸め込んで手の内に置いた?」
「そんなところだ。食うのに困ってたから、うちで従者として働くか提案したら付いてきた」
「三食おやつ付きですか?」
「それプラス、雨風の凌げる家屋、暖かい布団、シャワーとお風呂浴びたい放題」
「それ、私でも参加できますか?」
シュバッと挙手するカーミ。
男爵家は貧乏とは聞いてるが、そこまで食うのに困ってるのだろうか? コモーノはジトっとした目で聖女をみやる。
「お前は聖女の自覚はないのか?」
「だって、聖女って戒律厳しいんですよぉ~~」
「泣くな泣くな。しかしな、うちは見ての通りの軍閥だ。当然だが従者の水準は高い方だ」
「守護結界ならお任せください!」
胸を張るカーミ。
「国の為の魔法だろ、それ。侯爵家の防衛には大袈裟すぎる。それに、オレの部下のアルフが防衛においては右に出る者がいないぐらいに間に合ってる」
「そんなぁ」
「そもそもだよ、お前はルード様かケーベン様に嫁げば王太子妃としての生活が待ってるんだぞ? 侯爵相手にしてる暇なんてないだろ?」
「何言ってるんですか? 王族が羨むスイーツが食べられるところなんてスグエンキル家以外無いんですよ!?」
目が本気だ。コモーノはそれほどまでに甘いものが食いたいか、と呆れ果てた。
「まぁ、うちに遊びに来たければいつでも来い。お父様も聖女と懇意にしてるてなれば嫌な顔はしまい。オレは学園入学まで波風立てずに行きたいんだ」
「まぁ、今までにご自身が何をしでかしたのかまるでわかっていない様ですね」
「え? たいしたことしてないだろ」
コモーノは腕を組んで首を捻るが、別にたいしたことはしてないと判断する。それを聞き捨てならないとカーミが断言する。
「まずはスイーツの流出。お茶会限定とはいえ、それで令嬢や婦人たちから注目されております!」
「まぁ、それは汚名返上の一手だし?」
「そしてマーナ様からの選任職人としての指名。それで王家御用達と、今までの菓子職人から敵視されていますのよ?」
「それはマーナ様が……」
「それだけではありませんわ! ファルキン様との決闘を圧倒されておりますよね?」
「アレは流石にファルキン様も本気を出されてないだろ? オレは勝たせてもらったんだよ」
興奮気味に語るカーミに、コモーノは宥める様に返事をする。
なぜこうもコモーノは自己肯定が低いのか。カーミはそれが不満でならない。
「もう良いです! 言質は頂きましたので遊びにこさせてもらいます!」
「ああ、くる前に一度手紙の一つでもよこせばアルフに案内させるよ。だがマーナ様にスイーツの配達する日は外せよ? 王家御用達毒味係さん?」
「分かっています。私にとっての役得、誰が手放すものですか」
そんな他愛もない会話を交わす中、ノックの音が響いて入室を許可すると、アルフが顔を覗かせた。
「マーナ様は?」
「そのままお休みになられました。アレは僕と同じ王の力でしょうか?」
「分からん。カーミ曰く、呪いの類ではない様だ。解呪はできないらしい」
「どうされます? もしも僕と同じ能力なら、記憶を除くくらいはしてくるかもしれません」
「お前はそれは可能だと?」
「遠隔操作を手始めに、憑依、記憶リンクはお手のものってくらいです」
「ならばそうだな、散々マーナ様を操ってる相手にスイーツを自慢してやるか。憑依中は食事はできないんだろう?」
「僕はできるけど……マーナ様の憑依主は熟練度が甘いみたいだね」
「お前は何ヶ月掛かったっけ?」
「忘れた。思い出したくないね」
「ならば、他人ならどれくらいで覚えられる?」
「さぁ? そこにどれだけのものを求めるかじゃない?」
コモーノとアルフレッドの会話は、回数を重ねるたびに気安くなってくる。従者と主人というよりは、親しい兄弟の様だ。
カーミはずっとアルフレッドの存在を気にかけている。
従者の割に主人にあまりに気安いのだ。これではまるで……
「カーミ嬢、あまり我が家の事情に首を突っ込むのはお勧めしないぞ? 軍閥なんだ。裏で血生臭いことのいくつかもこなしてる。翌朝教会の前に晒し首を置かれたくはないだろう?」
「……!!」
わかりやすいくらいに顔を青くするカーミ。
「冗談だ。だが、踏み込み過ぎれば冗談では済まなくなる。これでもオレはお前のことは気に入ってるんだ。オレの手を汚させないでくれ」
すれ違いざま、肩に手を置かれ忠告される。
口調こそ軽いものの、放たれた殺気はカーミをその場に縫い付けるのに十分な威圧を放っていた。
秘密を握ることで貴族内を有利に動こうと考えていたカーミにとって、コモーノとは友達のままでいたほうが良さそうだと判断させるには十分なやり取りだった。
まだ10歳やそこらの子供が放つにはあまりにも強すぎるさっきに当てられたカーミは……
(全く、普段は飄々としておいでなのに、ここぞというときは恐ろしいお方。お召し物を変えなくてはいけなくなりましたわ)
吊り橋効果以上の緊張に囚われていた。
◆◆◆
翌朝、またも憑依されたマーナの前には。
この時代にはまずお目にかかれないスイーツのフルコースが展開され、それを目の前で平らげられるという屈辱に似た光景がクーシャの射倖心を煽った。
(何でぇええ! 何で目の前にあるのに私は口にできないの!? あぁあああああああ、口惜しい! 味覚を獲得しちゃうと憑依レベル上がりすぎて元の肉体に戻れなくなっちゃうのよね、不便なもんだわ。にしたって、この子達王女の前で不敬すぎない? 無礼講って言葉を額面通りに受け取りすぎなのよ。誰か私の元まで持ってきなさいよ! なんで王都のレストランにないものがここで食べられるの!? うわぁああああああああん)
ジタバタと、その場で駄々を捏ねそうになるクーシャ。
だが、彼女以外人の気配のない空間で、彼女が駄々を捏ねようと気にかけるものは居なかった。
全てを見通せるものとして、人払いをしたのは他ならぬクーシャなのだから。
なぜか聖女まで一緒に赴くと言うのだから怪しいことこの上ない。
きっと何か隠し事があるに違いない。
そう思ってマーナの視界から状況を覗くクーシャだったが……
(は? 何でこの時代にアイスクリームとかあんのよ!? 時代背景考えたことあんの!?)
そのスイーツが表に出るのは早くても五年後。
そうなる様に仕組んだのは他ならぬクーシャである。
「どうかされましたか、マーナ様。ご気分がすぐれない様ですが。寝室でお休みになられますか?」
心配するスグエンキル子息。クーシャはもっとガン見したいが為に下手な芝居を打って場に残ることを選択した。
「アイスクリームを出すには早すぎましたか。ではこちらを」
そう言って目の前で綿飴を作り出すスグエンキル。
(え!? 何でそれを知ってるの? 原作にそんなもの出してない。こんな偶然ってある!?)
「マーナ様、要らないのならわたくしが頂いてもよろしいでしょうか? わたくしこれには目がなくて」
クーシャが判断に戸惑ってる間に、横から出てきた聖女がクーシャの目の前で綿飴を奪い去って美味しそうに頬張る。
「美味しいですわぁ♪ 」
「こらこら、マーナ様にお出ししたものだぞ?」
「だって、こんな暑い時期に早くお召しになられないんですもの。やっぱりお具合が悪いと思って頂いたのです」
「確かに今日は好物をろくに摘みもなさらない。やはりお具合が悪いのだろう」
まるでこの場所から引き離そうと話がまとまる中、クーシャは歯噛みしながら傀儡状態を切る。
監視モードがなくても、後から記憶をいくらでも保持くれるからだ。
◆◆◆
「う、ううん……ここは?」
「お目覚めになられましたか? マーナ様」
「私……お父様と出会ってからの記憶が曖昧なの。ここはどこ?」
「我がスグエンキル邸ですよ。ご自分の足でここまで来たのです。覚えておりませんか?」
「分からないわ。でも、ずっと意識はあったの。ただ、思考にモヤが掛かったみたいで。カーミが私の目の前で綿飴を頬張ってる姿を非常に不愉快に思ったところまでは思い出せるわ」
マーナの不調は、見た通りのものだった。
コモーノはカーミへ素早く目配せし、カーミもコモーノにだけ見える様に空中に光で文字を描く。
言葉には出さず、記憶に留める。
その内容は洗脳状態にあったこと。
解呪の方法はなく、上位存在の憑依が外れない限り元に戻らない。
まるでアルフレッドの擬鎧の様だと思った。
「取り敢えず、長旅の疲れが出たのでしょう。お部屋へ案内いたします。アルフ、姫様を客室へ」
「畏まりました。さぁ、姫様こちらに」
「お世話になるわね。カーミ、貴方はどうなさるの?」
「私は元気ですので、これからコモーノ様と色々スイーツについて問答をするつもりです」
「では先に休ませていただきます。食事の際はいつも通りお願いしますね?」
「はい、おやすみくださいまし」
アルフに案内されて、マーナは退室した。
残されたコモーノとカーミは、さっきまでの状況を思い出す様に会話する。
「さて、あれは演技なくマーナ様だと思うか?」
「いつもの意地汚い一面が見えましたので、おそらくは」
「そこで判断するのは流石に不敬だぞ?」
「ご本人がいらっしゃらない時くらいはいいではないですか。それよりも……例の噂がまるで収束してない件ですが……」
例の教会主催の楽園の噂。
霊亀の存在流出と、今なら敬虔な教徒になればお布施次第で楽園に入れると言う胡散臭いものである。
「ああ、あれか。アレはわざと放置してる。情報を丸々改竄してな」
「噂の出所を突き止めただけではなく、丸め込んで手の内に置いた?」
「そんなところだ。食うのに困ってたから、うちで従者として働くか提案したら付いてきた」
「三食おやつ付きですか?」
「それプラス、雨風の凌げる家屋、暖かい布団、シャワーとお風呂浴びたい放題」
「それ、私でも参加できますか?」
シュバッと挙手するカーミ。
男爵家は貧乏とは聞いてるが、そこまで食うのに困ってるのだろうか? コモーノはジトっとした目で聖女をみやる。
「お前は聖女の自覚はないのか?」
「だって、聖女って戒律厳しいんですよぉ~~」
「泣くな泣くな。しかしな、うちは見ての通りの軍閥だ。当然だが従者の水準は高い方だ」
「守護結界ならお任せください!」
胸を張るカーミ。
「国の為の魔法だろ、それ。侯爵家の防衛には大袈裟すぎる。それに、オレの部下のアルフが防衛においては右に出る者がいないぐらいに間に合ってる」
「そんなぁ」
「そもそもだよ、お前はルード様かケーベン様に嫁げば王太子妃としての生活が待ってるんだぞ? 侯爵相手にしてる暇なんてないだろ?」
「何言ってるんですか? 王族が羨むスイーツが食べられるところなんてスグエンキル家以外無いんですよ!?」
目が本気だ。コモーノはそれほどまでに甘いものが食いたいか、と呆れ果てた。
「まぁ、うちに遊びに来たければいつでも来い。お父様も聖女と懇意にしてるてなれば嫌な顔はしまい。オレは学園入学まで波風立てずに行きたいんだ」
「まぁ、今までにご自身が何をしでかしたのかまるでわかっていない様ですね」
「え? たいしたことしてないだろ」
コモーノは腕を組んで首を捻るが、別にたいしたことはしてないと判断する。それを聞き捨てならないとカーミが断言する。
「まずはスイーツの流出。お茶会限定とはいえ、それで令嬢や婦人たちから注目されております!」
「まぁ、それは汚名返上の一手だし?」
「そしてマーナ様からの選任職人としての指名。それで王家御用達と、今までの菓子職人から敵視されていますのよ?」
「それはマーナ様が……」
「それだけではありませんわ! ファルキン様との決闘を圧倒されておりますよね?」
「アレは流石にファルキン様も本気を出されてないだろ? オレは勝たせてもらったんだよ」
興奮気味に語るカーミに、コモーノは宥める様に返事をする。
なぜこうもコモーノは自己肯定が低いのか。カーミはそれが不満でならない。
「もう良いです! 言質は頂きましたので遊びにこさせてもらいます!」
「ああ、くる前に一度手紙の一つでもよこせばアルフに案内させるよ。だがマーナ様にスイーツの配達する日は外せよ? 王家御用達毒味係さん?」
「分かっています。私にとっての役得、誰が手放すものですか」
そんな他愛もない会話を交わす中、ノックの音が響いて入室を許可すると、アルフが顔を覗かせた。
「マーナ様は?」
「そのままお休みになられました。アレは僕と同じ王の力でしょうか?」
「分からん。カーミ曰く、呪いの類ではない様だ。解呪はできないらしい」
「どうされます? もしも僕と同じ能力なら、記憶を除くくらいはしてくるかもしれません」
「お前はそれは可能だと?」
「遠隔操作を手始めに、憑依、記憶リンクはお手のものってくらいです」
「ならばそうだな、散々マーナ様を操ってる相手にスイーツを自慢してやるか。憑依中は食事はできないんだろう?」
「僕はできるけど……マーナ様の憑依主は熟練度が甘いみたいだね」
「お前は何ヶ月掛かったっけ?」
「忘れた。思い出したくないね」
「ならば、他人ならどれくらいで覚えられる?」
「さぁ? そこにどれだけのものを求めるかじゃない?」
コモーノとアルフレッドの会話は、回数を重ねるたびに気安くなってくる。従者と主人というよりは、親しい兄弟の様だ。
カーミはずっとアルフレッドの存在を気にかけている。
従者の割に主人にあまりに気安いのだ。これではまるで……
「カーミ嬢、あまり我が家の事情に首を突っ込むのはお勧めしないぞ? 軍閥なんだ。裏で血生臭いことのいくつかもこなしてる。翌朝教会の前に晒し首を置かれたくはないだろう?」
「……!!」
わかりやすいくらいに顔を青くするカーミ。
「冗談だ。だが、踏み込み過ぎれば冗談では済まなくなる。これでもオレはお前のことは気に入ってるんだ。オレの手を汚させないでくれ」
すれ違いざま、肩に手を置かれ忠告される。
口調こそ軽いものの、放たれた殺気はカーミをその場に縫い付けるのに十分な威圧を放っていた。
秘密を握ることで貴族内を有利に動こうと考えていたカーミにとって、コモーノとは友達のままでいたほうが良さそうだと判断させるには十分なやり取りだった。
まだ10歳やそこらの子供が放つにはあまりにも強すぎるさっきに当てられたカーミは……
(全く、普段は飄々としておいでなのに、ここぞというときは恐ろしいお方。お召し物を変えなくてはいけなくなりましたわ)
吊り橋効果以上の緊張に囚われていた。
◆◆◆
翌朝、またも憑依されたマーナの前には。
この時代にはまずお目にかかれないスイーツのフルコースが展開され、それを目の前で平らげられるという屈辱に似た光景がクーシャの射倖心を煽った。
(何でぇええ! 何で目の前にあるのに私は口にできないの!? あぁあああああああ、口惜しい! 味覚を獲得しちゃうと憑依レベル上がりすぎて元の肉体に戻れなくなっちゃうのよね、不便なもんだわ。にしたって、この子達王女の前で不敬すぎない? 無礼講って言葉を額面通りに受け取りすぎなのよ。誰か私の元まで持ってきなさいよ! なんで王都のレストランにないものがここで食べられるの!? うわぁああああああああん)
ジタバタと、その場で駄々を捏ねそうになるクーシャ。
だが、彼女以外人の気配のない空間で、彼女が駄々を捏ねようと気にかけるものは居なかった。
全てを見通せるものとして、人払いをしたのは他ならぬクーシャなのだから。
0
あなたにおすすめの小説
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる