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本編

成功報酬

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「いやぁ、助かったぜ。でも本当に報酬はこれだけでいいのか?」
「これだけもらえたら十分です」

 報酬は串肉を購入する際に使われていたお金。
 カッパーと呼ばれる金属を雑に叩きつけた欠片だった。
 カッパー、シルバー、ブロンズ、スチール。
 要はこの世界で使われてる加工品がお金になっているようだった。

 カッパーの下にはシェル。貝殻を叩いて繋ぎ合わせた合板を扱う。
 この世界ではシェルで炭や燃料になる石炭の取引を。
 カッパーで食料、シルバーで洋服や家具などの生活必需品。
 ブロンズになると武器や防具。
 スチールから上は商人が扱う通貨だそうだ。

 串焼き屋さんのような屋台は食肉を加工するだけのお店なのでカッパーを活用する。肉食の加工業者がお店に卸す時もカッパーが使われる。
 スチールなどの通貨は貴族や王族が加工業者に依頼するときに支払われるそうで普段使いはしないんだって。

 もらったお金はカッパーが5枚にシルバーが3枚。他には少量のシェルと串焼きが3本で手を打った。
 少なく見えるだろうけど、これで三人の宿泊代と食事代、あとはお湯の使用量が賄える。
 アルバイト換算だと一人頭時給3000円とかそれくらいだ。
 コンビニバイトの方がよほど苦労した記憶がある。

「いやぁ、なんとかなるもんだねぇ」

 事前に聞いていた若い女性だけで泊まっても大丈夫な宿屋を案内してもらい、そこで一泊分の料金を払う。
 お風呂の類は別料金でお湯を出してもらえるそうだ。
 お湯なら魔法で出せるので、湯浴み用の桶だけ借りた。
 魔法バンザイ!

「茉莉さんの交渉力に助けられました」
「まぁ、穴の空きまくった企画書をプレゼン能力だけで通してきた実力がいよいよ火を吹いたってだけだから」
「実は茉莉さんてすごい人だったんですか?」
「どうだろう? 仕事がうまく行ってもお給金上がらないのよねー。実績は上司にとられるしで骨折り損のくたびれもうけだわ」
「おつかれ、さまでしゅ」
「凛ちゃんもありがとう。今回のMVPは凛ちゃんといっても過言ではなかったよ?」
「そんな……」

 テレ顔が可愛いんだ、また。
 贅肉をたくさん使い切ったので今の凛ちゃんはほっそりさん。
 私のお腹にへばりついた贅肉も払って欲しいもんだわー
 そう願ったら簡単に吸収された。

「うそ、長年何をやっても取れなかったお腹周りがこんなにスッキリ!?」
「茉莉さん、気にするほど太ってないじゃないですかー」
「そうは言うけど、うちの会社は痩せてる子が多くて、隣に立つだけで男どもの目がウザいのよ。あれはきっと陰口叩いてるに違いないわ!」
「あはは、茉莉さん黙ってれば美人さんなのに」
「そうかしら? 最近鏡見る暇ないから自覚なかったわ。化粧とかも全然する暇ないしねー」
「え、それでそんなに肌綺麗なんです?」
「すっぴんよー」

 現役高校生に驚かれる28歳とは如何に。
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