ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★

双葉 鳴

文字の大きさ
33 / 45
町おこしイベント

筍ダンジョン②

しおりを挟む
「それでは行きますよ。ヨイショ」


 二重さんが小さく平鍬を振りかぶると、足元から少し奥へと落とし、気持ち大きめに掘り起こすと根から生えたばかりの筍が大きく姿を現した。


「どうですか?」

「なんとか発射されずに済みました」


 発射されるって何?!
 二重さんが軽く腰を曲げて掘り起こした筍の頭部を摘んで引っ張り出す。
 筍になぜか口の様なものがついており、それは「きゅう」と音を立てて青い粒子を残して筍の水煮パックを落とした。
 流石プロ。一発目から成功させている。


「お見事」

「いやいや、面目躍如と言うやつです。お手本を見せるのに失敗したら恥ずかしいですから」

「さっき発射と言ったが、ここの筍って鉄砲玉みたいに飛んでくるのか?」

「ええ、ここにくる皆さんは事前に知識を仕入れてきてますから」


 二重さんは私と今川さんを順に見た。
 まさかそんな基本的な話を聞かれるとは思ってみなかったと言わんばかりである。悪かったよ、事前知識ゼロで来て。
 今川さんに至ってはまるで悪びれもせずと踏ん反り返っていた。
 二重さんの先輩なのだろうか、年功序列を感じられた。

 
「じゃあ、失敗するとどうなるかを確認してみましょうか」

「そんな方法がわかるのかい?」

「ちょっと裏技を使います」


 二人に一言断って、壁を削った。
 パター用のボールを三個削り出し、チェインクリティカルを発動して強めに撃つ。すると、
 キュドドドドドドッとボールが通ったところに土煙を上げながら天井に刺さる筍達。
 うーん、凶悪。


「こいつぁ、ヘビーだぜ」

「蜂の巣どころじゃないですよね。探索者の皆さんが備えてるわけだ」

「何事ですか!」

「言ってる側からかい」


 駆けつけるスタッフのみなさん。
 必死な形相である。
 まぁあんな感じに大音量で筍が発射されたら慌てもするか。


「大丈夫大丈夫、怪我人は居ないよ。ちょっと素人がいるので失敗した時のリスクを知っておこうとあえて失敗したんです」

「びっくりさせないでください。肝が冷えましたよ」

「ごめんなさい」

「くわー(ごめんなさい)」

「ほら、キャディもごめんなさいしてるのでここは許してくれるとありがたいですね」

「わ、なんですかこの子? かわいー。撫でていいですか?」


 スタッフの一人はキャディを見つけるなりしゃがみ込んで視線を合わせた。テイムモンスターを初めて見るのか、キャディを可愛がっている。
 スカーフが似合っているからね。


「くわ(どうぞ)」

「いいって」

「わー、ありがとうございます」


 ある程度撫でくりまわして満足したのか、スタッフさんは控え室へと戻っていった。


「そのちんちくりんに助けられたな」

「ええ、この子は愛嬌が売りですから。ただそれ以上にこの環境にも適応してますよ」

「手本を見せてもらおうかい」

「ええ、キャディ。君の実力をお二人に見せてあげようか」

「くわー(うん!)」


 今川さんと二重さんが見守る中、キャディは開幕根を張るで筍の所在を掴み、私に大体の居場所を教えてくれる。


「ほい!」


 普段使わないコアクラッシュを纏っての一撃。


「くわ!(上手く掘れたよ)」

「ようし、もう一本行くよ」

「くわ(はーい)」


 意外なところで役に立った。ならばチェインクリティカルを併用して掘って回った。


「初心者とは思えないほどの腕前で」

「いやいや、キャディのお陰ですよ」

「そいつは俺っちにも取得できるのかい?」


 今川さんがキャディを物欲しげに見つめる。
 おや、この人にもこんな一面があったんだ。
 ペットとか飼ったらハマりそうな雰囲気を醸し出してた。


「今川さんもテイムしてみます? 探索者になることが必須ですが」

「ライセンスなら持ってらぁ。レベルだって6まで上げたぜぃ? スキルっつーのはよくわからんから取ってねぇがな」

「それでいいと思います。テイマーを獲得するのに黒い星が5個要りますから」

「足りねぇな」

「推奨レベルは10からです。それまで幾つかレクチャーしますよ?」

「じゃあ世話になるぜ」


 キャディを介しての筍掘りは和気藹々としながら収束した。
 筍初めて一応モンスターの枠組みなので上手く仕留めるとレベルも上がるのだ。レベル差から私のレベルは上がらぬが、今川さんはレベルを9まで上げる。
 ついでに壁を掘って水晶をいくつか入手した。

 壁を掘っても宝石の類は出てこない。
 あれは獣系ダンジョンの特徴か。ついでに天井も掘ってみるが何も見つからず。


「器用な子だねぇ」

「私と一緒に行動してたら、いつの間にかこうなってましたね」

「普通はこうならねぇってのかい?」

「テイマーがどう扱うかですね。私は探索の助手として彼を育てています」

「人によっては闘うための手段にもしちまうって事か」

「モンスターに何を求めるかですよね。こう見えてこの子も戦闘はできますし」

「そう言うところは育ての親に似たんだねぇ」

「二重にそう言わせる何かがあるのかい、笹井さんは?」

「ああ、今川さんがVRゲームでのこの方の噂を知らないんでしたね」


 教えましょう、と私のしでかしたあれこれを多少盛って話す二重さん。
 あなたの方も大概でしょうに。超絶ロマンな武術道場開いて弟子を育ててた創始者を名乗ってた人の口から出てきたものとは思えないやらかしの数々である。


「あっはっは! いやぁ、想像を超えてくるな、笹井さん! そうこなくっちゃ」

「それって褒められてるんです?」

「褒めてる、褒めてる」

「笹井さんは今川先輩の好意の対象ですよ、そこは自信を持っていいです」

「ほんとぉ?」


 いまいち信用ならない。ゲームでの師父氏とはあまりにも違うんだもん。
 この人案外タヌキだよ。欽治さんで懲りてるのでこれ以上参謀タイプは要らないです。


「まぁ、俺っちもここで一旗あげようだなんて思っちゃいねぇよ。でもな、仲間がいるってわかりゃこんな老骨でもなんかやってやろうって気持ちになる」

「なんだかなぁ、私はマイペースでやってるだけなんですけど」

「人はそれをマイペースだと受け取らないんですよ。あなたの場合は特に」

「担がれてるなぁ、もう少し穏やかに探索させて」

「無理じゃないですか? 孫から絶賛されてる時点で」

「違いねぇ、うちの孫もお前さんを尊敬してたぜ?」


 全くもって、要らぬ尊敬だよ。
 

「今日はこれで上がります。査定をお願いします」

「はーい、少しお待ちください」


 先ほどのスタッフの女性が受付の奥から出てきて私達も会釈をする。


「わ、大量ですね。先ほどの事態を引き起こしたチームとは思えない手腕です」

「うちにはプロの筍おじさんがいるからね」

「この中の8割を掘ったのはそこでモブに準じてる人だよ、私じゃない」

「あー、そこは黙って賞賛を受け取るところですよ!」

「嫌だよ、変に私への期待度あげないでよ。毎回こんなに求められるとか地獄だよ」

「こうやって自分の成果を相手に押し付けるのか、そりゃ恨まれるわ」


 えー、ここは二重さんが華を持つところでしょ? 


「ね、この人毎回こうで。少しくらいならいい気になれるんですけど、毎回この量の情報をポンと気軽に回してくるんです」

「そりゃ厄介だ。いい顔してられるのも最初のうちってわかるな」

「本当に、欲がなさすぎて周囲が迷惑を被るんです」

「良かれと思ってやってることが迷惑になる典型だな。こりゃ付き合いを深めすぎると俺っちも被害に遭うか?」

「まず間違いなく」


 そこの二人、被害者意識が高すぎますよ?
 合計40個の筍の水煮はキャディを含めて8個づつ分けた。
 キャディの餌にはならないみたいなので、私が16個貰った形だ。
 あとで孫にあげよう。


「そういえば、ダンジョン内でも炊き出ししてるんでしたっけ?」

「お、摂取していきます?」

「なんだ、その含みのある物言いは?」


 まるで薬物の取引現場に遭遇した凄腕刑事の様な形相で今川さんが迫る。
 二重さんは慣れたものなのかニコニコしながら説明をした。


「ここではドロップアイテムをダンジョン内で摂取する事でスキルに通じる要素を生み出していく場です。今川先輩の考えてる様なところではありませんよ」


 そうして二重さんに案内されて向かった場所は、奇声を上げながら、狙ったステータスアップを目論む探索者のあまり人に見せられない姿があった。
 どうみても邪教のミサでも見せられてるかのような不快感が強めな空間。
 今川さんじゃなくたって訝しむ。

 中には祈りながら筍ご飯をかき込み、ステータスと睨めっこしながらムンクの叫びを上げる者。
 もう一方は一心不乱に筍を貪り食う探索者の姿もある。
 これで健全な集まりは無理があった。


「この異常者の集まりが一般人だって? まるでこの世の地獄だ」


 今川さんの例えは言い得て妙だった。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めた俺だが可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月静流
ファンタジー
俺、臥龍臼汰(27歳・独身)はある日自宅の裏山に突如できた洞窟を見つける。 語り掛けてきたアドバイザーとやらが言うにはそこは何とダンジョン!? で、探索の報酬としてどんな望みも叶えてくれるらしい。 ならば俺の願いは決まっている。 よくある強力無比なスキルや魔法? 使い切れぬ莫大な財産? 否! 俺が望んだのは「君の様なアドバイザーにず~~~~~っとサポートして欲しい!」という願望。 万全なサポートを受けながらダンジョン探索にのめり込む日々だったのだが…何故か元居た会社の後輩や上司が訪ねて来て… チート風味の現代ダンジョン探索記。

部屋で寝てたら知らない内に転生ここどこだよぉぉぉ

ケンティ
ファンタジー
うぁー よく寝た さー会社行くかー あ? ここどこだよーぉぉ

処理中です...