ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

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22話 ジビエ堪能

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 人間の心を取り戻した屋良さんに連れられて、俺たちは地まで美味しくいただくジビエ料理のお店に向かった。

 郊外で奥まった場所にある店だが、口コミで評判を得たのか、店内は人々で賑わっていた。

 ジビエとは本来狩猟などで獲る肉の事で。熊や鹿、猪、兎、カラスの肉を食すのだそうだ。しかしダンジョンができて以来、自然動物に混ざってモンスターが近隣に住み込む、または野生の動物がダンジョンに潜り込むなどしてモンスター化。

 これの駆除などで得た肉を調理して味わうのだそうだ。

 何でもかんでもレアで食うのではなく、きちんと調理されてるので一般の味覚の方でも大丈夫という事で俺たちは勉強の為参加している。

 そして席につくなり、アルコールを高々とあげて乾杯を忘れない。
 勉強に来ているんじゃないのかって?

 結局飲兵衛のお供になるので本質は変わらない。
 今回調理はしないので、俺もヨッちゃんも食うのに全力投球だ。

 ただ食うだけじゃ味気ない。だったら飲むよな?
 そんな視線が交差し、どっちが先か争うのもバカらしくなる速さで料理よりも先にアルコールを注文した。
 いつもの俺たちである。

「ウホ。アルコール、ホドホド」

「キエアアアアアアア、屋良さんがシャベッタァアアアアア!!?」

「ナニ!?」

「明日は槍が降るぞ!」

「屋良さん、ついに人間の心を取り戻したか!?」

 屋良さんがカタコトの日本語を喋っただけで店内がパニックになった。
 本当に今まで喋った事なかったのか。
 ほろ酔い気分が一気に冷めてしまった。

「おや、お噂は予々」

「ウホ、ウホウホ」

「いつもお越しくださりありがとうございます屋良様。なるほど、本日は屋良様のご案外でしたか。本当は一見様お断りですが、あなた方は今一番ホットなお二人だ。総合ステータスも申し分ない。ご来場を歓迎しますよ」

「ありがとうございます。今日は勉強させてもらいに来ました」

「私どもの技術がお役に立てば良いのですが」

 店主さんは腰の低い人物のようで、お客さんにペコペコ頭を下げて回っていた。

 そう言えば総合ステータスがどうこう言ってたけど、ここってもしかしてかなり条件厳しいお店なんじゃ?

「なぁヨッちゃん、ここってかなり高い店なんじゃないか?」

「何言ってんだよポンちゃん。表に総合ステB以下入場禁止って書いてあるだろ? その上で招待制だ。安いわけないだろ」

「俺、そんなに手持ちないぞ?」

 正直、ステータスはどんどこ上がるが、モンスター肉はその場で処理して食うものだから納品は絶望的。
 美味いものは食えるが金にならないのだ。

 配信の投げゼニ機能でどうにかこうにか酒を飲む贅沢に預かれるが、それ以外に気を回す余裕はなかった。

「大丈夫だって、今回は屋良さんの奢りだって。オレたちは遠慮せず食えばいいんだよ。そうですよね。屋良さん?」

「ウホ」

 熱い胸板を、強く叩いた。
 任せて大丈夫らしい。
 一度騒がれたからか、その日はカタコトの日本語を喋ることはなかった。
 そんなに騒がれたのがショックだったのか。
 見た目は太々しいのに、中身は意外と繊細なようだ。

 テーブルに運ばれた肉は一見してどんな生物なのかはわからない見た目となっていた。
 ふわふわの衣に包まれたそれを口に含むと、口溶けの優しい衣が口の中でシュワっと解けた。

 中から溢れる肉汁に混ざって香る血の香味。一緒に盛られた香草の香りも相まって、なんとも言えぬ味わいだった。

 ああ、これは赤ワインにすべきだった。
 なんとなくでビールを頼んだつい数分前の自分を殴りつけてやりたい。

 見た目では判断できなかったが、血の滴り赤み肉に手が止まらない。

「ポンちゃん、アルコール飲み放題だぞ? 何遠慮してんだ」

「いいんですか、屋良さん!」

「ウホ!」

 親指をあげてどんといけと背中を押してくれた。
 この揚げ物はフリットというらしい。
 獣臭さ全開のジビエだが、逆転の発想でその獣性をより強調させている。

 血を味わうと聞いて最初こそ及び腰だった俺が、その料理の奥深さにすっかりハマってしまった。

 その日は盗み見ながら模倣、自分の技術にするべく食べて食べて食べまくった。

 その横ではヨッちゃんがこんな高い酒、飲めるのは今日までだ! と飲み溜めしてたっけ。

 まぁ同じ量のアルコールを摂取した身としては、屋良さんの程々にしておけよという言葉が後になって響く。

 翌日の朝まで飲み明かして、普通に二日酔いした。

 悪酔いしたのにどこか嫌な気持ちじゃないのは、安酒特有の業務用アルコールの匂いじゃなく、吐瀉物すら美味いとすら思える贅沢な味だったからだ。

 これを吐き捨てるなんてとんでもない!
 そんな貧乏性が優って吐かずに済んだ。

 安酒だったら虹色の吐瀉物を吐き出していたことだろう。

 常連客達は酒に飲まれるようじゃまだまだと言わんばかりに肉本来の味を楽しんでいたのを思い出す。

 リーガルマンモスのユッケは美味かったな。
 あのモンスター自体はDランクダンジョンにいるのだが、ボスモンスターらしいので倒すと消えてしまうのだとか。

 そこでダンジョン破壊のプロフェッショナルである屋良さんに依頼して調達してもらうらしい。
 うちのホーム以外にも壊してたのか、この人。

「ダイジョウブ、ダンジョン、コワシテモ、ナオル。オイシイニク、トリホウダイ」

「普通にダンジョンは壊せないんですよ。屋良さん以外に可能な人間は居ないんすよ」

「コツガアル。ソレニ ポンチャン ナラ イケル」

「俺がですか?」

 突然のご指名に戸惑う。

「ああ、前回の配信で隠し部屋行けた奴か。あれならいけるかもな」

「ああ、あれか」

 ヨッちゃんが思い出したようにその隠し部屋から脱出した時の感じなら行けるんじゃないかと特定して、それで納得した。

 つまり俺たちは、ダンジョンのボスさえも今後は調理素材の中に入れられると?

「ハイシン、タノシミ」

 俺たちの今後を見据え、陰ながら応援してると励ましてくれる屋良さん。
 見た目がゴリラでも気遣いのできるいい上司だ。
 ウホウホしてても支部長なのだろう思い知らされる。

「こちらこそ、美味しいお店のご紹介ありがとうございました。次は自分たちでお金貯めて行きます。な、ヨッちゃん?」

「ああ、そのためにも稼がなきゃいけないが……荷物持ちでも頼むか? 基本的に俺たちって全部食うスタイルだろ?」

「たまにはオッサンに持ってもらえ。あの人酒飲むことしか考えてねーぞ?」

 自称カメラマンの卯保津さんか。
 あの人に任せて大丈夫だろうか?
 脳筋だからなぁ、ちょっとだけ心配だ。
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