ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

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23話 ボスを誘拐しよう!

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 帰ってきましたマイホーム。

 流石に二日酔いのまま敢行するのは無理があったので、二日ほど安静に過ごしてからのトライである。

 正直、今更Eランクに負けるつもりはない。
 が、今回は消える前に気絶させて食べるのが目標となる。

 酔っ払ったままで行けるほど甘い相手ではないだろう。
 活け〆を終えるまでは何度もトライする必要があるからだ。

 そのトライにアルコール摂取後のふらついた頭では、途中で嫌になるに決まってる。なので今回酒盛りするかどうかは活け〆次第となっていた。

 倒すと消えるというギミックは、本来探索者にとっては達成感の象徴。
 しかしそいつをバラして食おうという考えの俺たちにとっては厄介なギミック。

 うまく気絶させるコツを知ってるのは言語が不得意な屋良さんだけ。
 ウホウホしか言わない相手からのジェスチャーで正確なコツはわからない。
 なので、今回は何度もトライする前提のアタックだった。

 倒せるのは倒せるだろうが、とどめを刺さずに活け〆を成功させる必要がある。
 そんな緊張もどこ吹く風で、真後ろから聞こえてくる音は……

 カシュッ、ゴクッゴクッゴク……プハー!

「卯保津さん……これからボスに挑もうっていうのにもう開けたんですか?」

「なんだよ、ポンちゃんなら成功するだろ? 今から心配してどうすんだよ。俺が先に開けてても問題ねーって!」

 それはそうだけど……

「それもそうだな。オレもポンちゃんの言葉に尻込みしちまったが、よく考えなくても初見でサイクロップスを活け〆しちまったもんな!」

 カシュ。

 言ってるそばからヨッちゃんも発泡酒に手をつけた。
 他人事だと思って……!

 <コメント>
 :いつものメンバーである
 :あれ? 今日はポンちゃん祝杯しないの?
 :え、飲兵衛なのに珍しい
 :調子悪い?
 :実はこれからボスを調理するらしい
 :ふぁ!? ボスって倒すと消えるやろ!
 :その上、倒すまで出られないボス部屋に閉じ込められる
 :屋良内火のボスモンスター誘拐テクニックを真似るみたいだ
 :ダンジョンを文字通りぶっ壊すあれか!
 :あれで支部長だからなー
 :ゴリラ・ゴリラ・ゴリラの頭脳担当やぞ!
 :どう見てもゴリラです本当にありがとうございました

「屋良さんはシャイなのであまり喋りませんが、美味しいご飯食べるとたまに喋りますよ」

 <コメント>
 :それマジ?
 :通訳にテイマー雇ってるって聞いてたけど喋れるんかい!

「俺も喋ったの初めて聞いた。喋れたんだってリゼと一緒に驚いたもんよ」

 <コメント>
 :元チームメイトがこの有様なんだよなぁ
 :ポンちゃんの料理は言語中枢にまで届くってコト?
 :カメラマンのアルコール摂取量早いな
 :支部長……職員が働いてる日中から、随分なご身分ですね?

「ヒエッ! ばばばバーロイ! 俺は休暇を当ててるからいーんだよ! 休暇中くらい自由にさせろや!」

 <コメント>
 :ドン引きされてて草
 :こりゃ戻っても席ねーわ
 :メシオさん……

「取り敢えず、行きますよー。今日はボスの活け〆、ボス部屋を脱出後に解体、調理の順で行なって行きます」

 <コメント>
 :そんなことゴリラの人以外できんの?
 :ポンちゃんはダンジョンぶった斬れるからな!
 :前回の配信ってコラじゃねーの?

「俺らにそんな技術あると思うか?」

 <コメント>
 :ヨッちゃん……
 :基本飲兵衛どもだからな
 :アーカイブも垂れ流しくらいだから
 :編集技術あったら、解体時のグロ画像にモザイク入るだろ
 :編集できる人皆無で配信やってんのこの人らくらいだろ
 :編集をできる人を雇うお金は……全部酒代に消えてそう
 :草

 道中現れるモンスターは歩きながら始末する。
 殺す時は食べる時だと決めてるので、動けなくする程度にとどめた。

 <コメント>
 :ヒエッ
 :ポンちゃんの包丁さばき、ますます磨きかかってんね
 :総合ステ、もうFじゃねーからな
 :C超えたんだっけ?

「俺はA–くらいだね。ヨッちゃんはBBBだっけ?」

「魔力はAだが、他がBばっかだな!」

 <コメント>
 :成長が早すぎる
 :適合食材、空ウツボじゃなかったんか? ヨッちゃん
 :適合食材はレベル上限上げるだけ
 :ステータス上昇はレベルアップが鍵って言われてるが……
 :実際のところはよくわかってないんよ

「まぁ、ポンちゃんの飯食ってると成長早い気がするな。最近判明したデータでは、魔力の使用回数はポンちゃんの作った飯食うと回復することが分かった。一日に使う使用頻度で上がるってんなら、それかもなぁ?」

 ヨッちゃんが白々しい感じで述べる。
 知ってた癖に、敢えて屋良さんが気付いた体で話を進める。

 Sランク探索者と、底辺配信者の言葉ではどっちの言葉を重要視されるかなんて日を見るより明らかだ。

 なので全ての責任を屋良さんに持ってもらう事で、保身を図ったのだ。
 ちなみに屋良さんとはすでに口裏を合わせてもらってる。

 その代わりまたご飯を振る舞う前提だ。そのためにも俺は調理の腕をレベルアップさせる必要があるのだ。

 <コメント>
 :熟練度的な?
 :魔法使用回数回復ってマ?
 :おいおいおいおい!
 :ヨッちゃんが料理に無駄に魔法つかってた理由それかよぉー
 :レベルアップでも回復するからそれかと思ってた
 :そりゃサイクロップスやバジリスク単独撃破してるし
 :そういやそうじゃん
 :全然偉ぶらないからな
 :ポンちゃん達が元底辺出身だからな

「元、というか俺としてはいまだに立場が変わった気がしないんだが……ステータスが上がった事で酒や食材、調味料のグレードが上がったのが嬉しいよな」

 <コメント>
 :ポンちゃんがこんな感じだからな
 :底ステに対して威張らないからずっと見てられる
 :高いお酒だから最近悪酔いしてないもんな
 :そりゃ編集より飲み食い重視だからな
 :この人達、狙いをボスに定めました
 :倒すんじゃなくて食うためだから頭狂ってるwww

 全くもってその通り。
 俺たちの行動理念が食って楽しむためである。

「ここがボスの部屋か。なんだかんだ来た事ないな」

「食えない筆頭がボスだったからな」

「それを食うのが今回の企画ですからね」

「屋良がダンジョンボスを持ち込んでポンちゃんに調理させたからな。食えるのはわかってるんだよ。問題は、それが俺らにもできる事かっつー」

 <コメント>
 :ボスは倒せば消えるもんですからね

「サクッと終わらせて飯にしようぜ」

 既に出来上がってる酔っ払いが、顔を赤くしながら扉の奥に戻った。
 そして……俺たちは床の上で光る魔法陣で入り口に戻った。
 普通に倒してしまったのだ。

「まさかワンパンで倒れるとはな、さすがEランク。雑魚だ雑魚だとは思ってたが、これ程とは……」

「これ、思いの外難しい技術じゃないっすか?」

 酔っ払って手加減が出来ない二人組が、ちゃっちゃと終わらそうと本気を出したら終わってしまった。早速反省会という名の飲み会を始めている。

「ほらー、だから言ったじゃないですか!」

 <コメント>
 :《屋良内火》ウホ、ウホ、ウホホッ
 :通訳、誰か通訳頼むーー!
 :打ち込めるんなら、普通にコメント書けますよね?
 :そうやん!
 :《屋良内火》ウホ? ウホホッ

 屋良さんの登場により、配信は混迷を極めた。
 俺たちの挑戦はまだまだ始まったばかりだった。
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