ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

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84話 ダンジョンブレイク【函館】1

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 北海道への道中は、途中いくつかの妨害に見舞われた。

 モンスターそのものによる妨害ではなく、モンスターによって傷つけられた二次災害。

 水漏れによる錆、腐食、瓦礫の撤去などだ。

 ここは探索者同士が力を合わせてなんとかバスが通れる道を作った。
 水漏れはヨッちゃんの魔法で氷結。

 瓦礫は俺の包丁で砂になるまで切り刻んだ。
 素材の腐食は俺の熟成乾燥とヨッちゃんの風魔法で削ぎ落とし、新たに氷結魔法で糊付け。

 そこへ他の探索者が岩の魔法で新たな補強をしてくれた。
 これで数日は持つだろうが、俺たちの帰りに間に合うかどうか。

「こんなところでもお手柄だな」

「たまたまなんとかなるスキルを持ち合わせていただけですよ。適材適所というでしょう?」

「それで後方サポートが主軸ですって言われても誰も信じねぇからな?」

「これは序列一位の貫禄だわ」

「本人にその気が一切ないのが逆に悔やまれるな」

 宴会を通してすっかり仲良くなった一行と、盛り上がりながら幾つもの障害を取り除く。

 途中空を飛んだりしながら、なんとか北海道へたどりつく。

 そこはまるで氷結された都市だった。
 観光都市としての顔から一転、地獄の様相を醸し出している。

「お待ちしておりました。話は奥で。街の中はモンスターがうろついていますし落ち着きませんから、ご足労ですがご一緒ください」

 案内人が俺たちの前を先導する。
 通されたのは函館市民会館。

 ここが青森との中継地点として探索者によって死守されてる最南端防衛戦との事である。

 中には夥しい数の負傷者、避難者が詰め込まれており。
 バスの到着と同時に乗り込もうとする姿もあった。

 我先にと逃げ出そうとする者、帰りをじっと待つ者と人々の感情は様々だ。

 そして疲弊してるのは何も避難者のみではない。
 探索者も同様に終わりの見えない戦いに明け暮れていた。

 そこでは何度もアタックしては返り討ちにされた探索者が堆く積まれていた。

 中には死体もあるだろう。
 そんな場所で一緒に食事をしてれば気も滅入るというものだ。

 動かなくなった仲間にエールを送りながら、次の作戦に連れて行こうとするものたちもいた。

 疲弊してるなんて、もんじゃない。
 ここは探索者というだけで勝てない戦いを強いられている人たちの収容所だった。

「話は聞いています。奪われた場所も多いと聞きます。戦況は?」

「劣勢と言って差し支えないでしょう。なにぶん数が多い。こちらの一般人も総合ステA以上で揃えて防衛しておりましたが、中には前線を離れて久しいご老体も多く、まだ実践も経験してない若者の負傷者が増加の一方です。すでに道内の病院はパンクしており、ベッドの数も不足してれば医者も薬も間に合わない始末でして」

「多少食料も持ち込みましたが……」

「焼け石に水、でしょうね。長期戦が見込まれます。そしてモンスター側も一枚岩ではない」

「それは長を失っても、士気が変わらないと?」

「残念ながら。モンスターの種類によってその思惑は違うようです」

 なんてこった。
 ボスを倒せば雑魚は勢いを失うものと思っていた。

 皆もそう思ったのだろう、ボスを倒してさっさと終わらせようとしていた『タイガース』の掛布さんが苦い顔をした。

 でも所々おかしい点がある。

 ダンジョン側がこうまで人類に攻め入るだろうか? と言う疑問点。

 オリンはダンジョンを守護者と人類の魔法がエネルギーを生む為の施設だと言い切った。

 しかしここで行われているのは一方的な蹂躙。

 いや、攻略と言っても過言ではない。
 力を持った守護者が、人類に牙を向けたとも取れるが。

「キュ(どうも第二管理者殿が寝こけておるようじゃの)」

 なんで?

「キュッ(あのお方はぐうたらで、普段はダンジョンの運営をドールに任せて自身は眠りこけておるのだ。ドールと言うのは分け身じゃな。妾のこのスライムボディもドールじゃ。本来なら大事なダンジョンの管理を放って置くなど言語道断なのじゃが、なまじ権限だけ持っておるのでナンバーが下の妾たちの言うことなど聞かんのじゃ。困ったお方じゃよ)」

 なんとなく理解する。

 つまり、本人はねぼすけで、自身の分体を作って管理させていた。

 で、暴走。

 起こるべくして起きた事件なのか。
 と言うかその言い方だと頻繁に起きてるみたいに聞こえるが、気のせいか?

 ダンジョン管理者あるあるみたいに言うオリン。
 それを笑えばいいのか、悲しめばいいのかもわからない。

 なんて迷惑な管理者なんだ。
 故郷を夢見てるマスターが可哀想だと思わないのか?

 なんともいえない実情を前に、契約者の俺が出来ることは一つ。
 第二ダンジョン代行者を叩き起こすことくらいか。

 でも待てよ?
 俺が成ったように、第二ダンジョンの代行者にも契約者がいるんじゃないのか?

「キュ(居るかもしれんが、あのお方が相手では契約者の方が不憫じゃの)」

 なんと諦め切った声色か。大きなため息と共にオリンの感情が流れ込んでくる。

 確かに普段から寝てて、一切相手にしてくれない契約者とかどうにもならないもんな。

「ポンちゃん、オリンはなんて?」

 ヨッちゃんが内緒話するように耳打ちしてくる。
 怪しがられるからやめなさい。

「なんでも、ここの店主は弟子に任せきりで店を切り盛りして本人は寝こけてるらしい」

「あん?」

「俺たちのミッションは店主を叩き起こして、暴走した弟子を冷静にさせることにあるって事だ。つまりはいつも通りってことだな」

「なるほど、よくわからん」

 俺も言っててよくわかんなくなったが、いつも通りと思っておけばいい。

 モンスターを見つけたらその場で食材に加工。
 飯を作って戦線維持。

 今回は消費してくれる人数が多いので作り甲斐があるって事だ。

「今回は飯を割り振る人数が多い。それなりに酷使すると思うがついて来れるか?」

「は? 誰に物を言ってるんだ。あと50発はぶっ放せるぜ?」

 それは心強い限りである。

「取り敢えず、まずはこの人たちの活力を取り戻しますかね、ヨッちゃん、周囲の氷とかせるか?」

「別に問題ねぇけど、これはモンスターの襲撃を遅らせるトラップの類じゃねぇの?」

「そうなんですか?」

 案内人に尋ねると、これはモンスターの仕業だと聞かされた。

 寒さに慣れてる道民達がこうも参るほどの気温。

 モンスターの動きを遅くするためとはいえ、自分達にまで被害を被るなんて手は打たない。

「じゃあ、相手は氷の魔法を使うモンスターがいるって事ですか?」

「いえ」

「では何が?」

「相手が操ってくるのは天候、あるいは気候です」

 なんだって!?

「じゃあこの異常な寒さはモンスターの魔法じゃなく気温操作による弊害だと?」

 そんなモンスター聞いたことがない。

「ですのでこちらも対処のしようがなく」

「じゃあ、今この場で温めても?」

「すぐに元に戻ってしまうでしょう」

 ならそれは無駄に相手を警戒させてしまうことになるか。
 どうしたものかと頭を悩ませる。

 手っ取り早く倒す以外の選択肢が無数にある場合、どれから対処していいのかわからないのは困るな。

 ダンジョン攻略のようなわかりやすさがないと、実力はあってもなにをしたらいいかわからない探索者は多いぞ?

 役割分担するにしても、優先順位は絶対にあるからね。

「俺たちは取り敢えず前線に突っ込んだ怪我人の回収、だな」

「そんな勝手な真似していいのか?」

「どっちにしろ、後手後手に回り過ぎれば積むって言うのは見りゃわかるじゃん。それにオリンがいる限り、撤退は容易だ」

「まぁ、な。じゃあそれで行きますか」

 俺たちは遊撃部隊へと組み込まれた。

 高橋さんや掛布さんは俺に後方で避難民受け入れを担当して欲しそうにしてたが、この異変は後回しにすればするほど厄介なのは誰もが予感してる。

 ならば突破力のある俺たちに任せようと言う気になってくれたようだ。

 取り敢えず、異変の原因を突き止めて対処。
 後続に繋げましょうかね。

 こんなに寒いと後から来る探索者の士気にも関わるし、せっかく作った熱々の飯も冷めるから。

 最終的にそこを心配するのは後にも先にも俺たちぐらいだろう。
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