ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

文字の大きさ
95 / 173

95話 ダンジョンブレイク【札幌】4

しおりを挟む
 ワラワラと現れるトマトたちを手持ちのソーセージで分解、救助してるうちに規定の数値が貯まったという。

 俺は避難民を一度函館の会館におくりながら、隙を見て新しいスキルの獲得を考えた。

 あの時は食事の運用一択だったが、ここから先はダンジョン攻略をするのに便利なスキルを取得する方がいいだろう。

 そう考えて、オリンの提示するスキル群を眺めていく。


<特殊調理派生>
 【三枚おろし】
   初めて見たモンスターでも即座に3枚に下ろすことができる

 【糸引き】
   切り込んだ空間が、糸を引くように切断できる

<ミンサー派生>
 【部位指定】
   モンスターの部位を狙ってミンチ肉に変えることができる

 【荒削り製法】
   ミンチの微調整が可能

<腸詰め派生>
 【下味調整】
   事前に手持ちの調味料を使って下味をつけることができる

 【オート腸詰】
   事前に設定した腸を指定範囲内で勝手に補充

<熟成乾燥派生>
 【加工の魔眼】
   手を触れずに、視界に入れただけで加工する
   ※全スキル適用
 【熟成微調整】
   熟成具合の加減をつけられる
   乾燥具合も任意に変化させられる

<特殊派生>
 【熟成発酵】
   特殊な菌を発生させ、旨みを凝縮させて発酵させる
 【冷凍乾燥】
   水分さえその場で急速に乾燥させて保存可能に


 ダンジョン攻略にふさわしいものは……ってなんか増えてる?

 前回熟成乾燥をとったから、その分が増えてるんだと知った。

 俺は糸引きを覚えるつもり満々だったのに、全加工適用の文字が頭から離れない。

 最終的に料理にも使えるんならこっちがいい。
 調整はその内する。
 今はこれだ、これがいい。

 包丁がそこまで届かずとも、俺の視界が届くんなら問題ない。
 視界を塞ごうとするならば、空間ごと切り裂いてやればいい。

 そうして俺に新たなスキルが宿った。


 ──────────────────────
 名称:本宝治洋一ぽんほうちよういち
 年齢:30
 職業:ダンジョンシェフ
   配信者
   ジャイアントキラー
   ダンジョン契約者
 ──────────────────────
 レベル100/100
 筋力:S★
 耐久:S★
 魔力:A★
 精神:S★
 器用:S★
 敏捷:A★
 幸運:S★
 総合ステータス:S S S
 ──────────────────────
 <固有スキル:特殊調理>
 ★包丁捌き+
  ┗☆【加工】エレメンタル隠し包丁
   ┗☆【加工】活け〆
 ★目利き+
  ┗☆【加工】食材解体知識
   ┗☆【加工】ダンジョン解体知識
 ★料理バフ+
 ☆【加工】ミンサー【モンスターを選択してください】
 ☆【加工】腸詰め【選択:大喰らい/S】
 ☆【加工】熟成乾燥【指定部位を選択してください】
 ◎加工の魔眼【全加工系スキルを目視内で加工可能】
 ──────────────────────


 なんかステータスやスキルがやたら増えてないか?
 今まで見えなかったものが見えるようになったというか……

「キュ(魔眼の効果じゃな。どれが加工スキルかを知らせるために目視できるようになっておる。それ以外は適用できんというわけじゃ)」

 今まで俺が何気なく使ってたのも加工スキルだったわけか。
 スライムやゴーストの刺身はエレメンタルボディに隠し包丁を入れる必要がある。

 それはてっきり隠し包丁の延長線だとばかり思い込んでいた。
 しかし俺の目には新しい力として迎えられている。

 なるほど、今までの当たり前はこうやって目にして当たり前のものじゃないとようやく理解できる。

「キュ?(努力のみでスキルにまで昇華させたのはさほど珍しいことではないぞ。ただし常識的かと言われると難しい。過去に多くの例が挙げられるが、拾い上げたところで100件にも満たん。過去100年まで遡ってもじゃ)」

 一年に一人出すとなれば少なくもないんじゃないか?

 だが今よりも人口が多い時代、それこそ多くの人たちが修練を重ねて、それができたのはたった一人と言われたら実際にはすごいことなのかもしれないな。

 でも待ってくれ。オリンは今ここに来て、100年というフレーズを使った。

 しかしダンジョンブレイクが起きて、人々がダンジョンに駆り出されたのは60年前。

 実はもっと前からダンジョンは現れていたのか?

 オリンは肝心な質問には答えてくれないんだよなぁ。

 しまった! という顔をしながら、トマトモンスターの到来を教えてくれた。

 魔眼の発動は目を凝らしてようやく発動可能といったところか。
 ただし無作為に発動できるわけじゃない。

 包丁で狙いを定めて、その場所を部分的に加工できるスキルのようだ。
 目視で捉えた先、トマトたちは空輸で送り込まれてくる。

 函館で見た空を飛ぶ玉ねぎ。
 あれはトマトの運送ポッドだったらしい。

 さっさと倒しておいてよかった。
 あれを放っておけば、函館までトマトたちが来ていたかもしれない。

 だから函館行きのバスを襲ったのだろうな。
 直接向かえなくなったから。

 それを、玉ねぎごと熟成乾燥、エレメンタル隠し包丁や活け〆をして身動きさせなくしてから函館に送り込んだ。

「キュ(ここで処置していかぬのか)」

「これ以上ダンジョンを成長させるわけにはいかねぇからな」

「キュ(そうじゃのう)」

 どこか名残惜しいものを見送るように、函館に活け〆されたトマトの背を追う。

『いきなり処理してないやつを送ってきてびっくりしたぞ』

「すいません、こちらで加工スキルを使うと、ダンジョンモンスターがパワーアップするという情報を掴みまして、全てを加工してたんじゃ間に合わないと踏んで何匹かおくります。その際ソーセージの補填もしますのでご勘弁を」

『そういう理由ならしょうがねぇな。じゃああのソーセージは非常食にしない方がいい感じか?』

 非常食?
 まさか、トマトに乗っ取られてる人々がまだ解放されてない内から非常食として考えているのか?

「流石にそれは俺たちの予測してないことです。北海道を取り戻すためのキーだとおっしゃったのはズワイさんではないですか。それを食べようとはちょっと考え付かなかったです」

『中には空腹の避難者もいるんだ。撃退用なのは分かってる、しかし空腹には逆らえん。お前の渡すソーセージがあんまりにもうまそうなのが悪い。こればかりはどうしようもないんだ。必要だから取り上げるってのも士気を下げちまう。難しいところだよ』

 食肉加工者としてはありがたい言葉ではあるが、今の状況でソーセージを無駄に消費してほしくはなかったな。
 
 避難してる人の気持ちもわかるが、こっちで与える食事を待っててほしい限りだ。

「函館の人たちはなんとか処理してくれそうだって?」

 電話を切ると、トマトを送り出したヨッちゃんが心配そうに声をかけてきた。

「処理は可能だが、空腹な人たちがトマト撃退用のソーセージを食べてしまっているらしい」

「そりゃダメだろ。こっちでも作ってるが、まだ全員分までは仕込んでないだろ?」

「数百や数千なんだったら数十万、数百万人が人質になってる可能性もあるから、本当にそれだけはやめて欲しかったが、飲まず食わずでようやく救出されて、一息ついたんだろうな。そうしたら腹が空くのは仕方ない。一度飯を仕込みにいくか?」

 しかしそんな俺の提案にダイちゃんやヨッちゃんは否定的だった。

「今は攻略を最優先した方がいいと思う」

「俺もダイちゃんに賛成」

「どうしてだ? 腹が減ってるからソーセージを食べちゃうんだろ? なら違う食事を提供すれば……」

「普段ならそれでもいい。けど今は緊急時。そして俺たちはこの場所に何をしに来てる? ポンちゃんは日常動作で料理を振る舞うのが癖みたいなもんだ。そこはどうしようもない。だが、避難民が願うことはその場しのぎの食糧を集ることじゃない。事態の収束を何よりも望んでる筈だ、違うか?」

「違わない」

「だったら俺たちは俺たちの仕事をするべきだぜ、大将。いや、Aランク探索者序列一位、本宝治洋一」

「ああ、そうだな」

 なまじ料理ができて、素材もたくさんある。
 即座に配送が可能だから忘れてしまいがちだが、そうだよ。

 俺たちはここにダンジョンの攻略に来ているんじゃないか!

 忘れていた訳じゃないが、軽く見ていた。

 その現実を胸元に深く突き刺された気がした。
 強いスキルを手に入れて、自惚れていたのかもしれない。

 もうこれで攻略は比較的簡単になった。
 そんな気持ちでいた。

 まだ事態は何も解決してないのに。
 避難民の気持ちを軽く見てたのは他ならぬ俺の方だったと。

 それをダイちゃんに直接言われてハッとする。

「オリン、敵の本拠地を教えてくれ」

「キュ(先ほども言ったが、もうここが第二ダンジョンの本拠地じゃぞ? 都市を丸々飲み込んでもなお、その全貌を見せない。ダンジョンの一角に過ぎないが、離れぐらいの認識じゃろう。階層で言うとこの最上階、入り口。どちらとも言えないが、我々を歓迎してくれてるのだろうな。あれらの兵隊はパフォーマンスの一つじゃろう)」

 趣味の悪い。

「キュッ(ダンジョンとは、そう言うものじゃよ。もとより精神構造が人と異なる。目的はいつだって一つ)」

 エネルギーの採集。
 人々の魔法(スキル)と守護者(モンスター)の衝突によって生み出される素材。

「キュ(妾は感心しておった。全く新しいエネルギーの採取方法に。確かにこれならば理論上、今までよりも効率よくエネルギーが採取できる。出来るが、契約者殿は認めぬだろうがな」

 協力してくれてるから。
 一緒にいるから。

 すっかり仲間の気持ちでいたが、オリンはやはりダンジョン側の存在だと言うことを嫌でも痛感した。

 あの悪趣味なオブジェを『エネルギー採取効率が高い』と言う理由だけで誉めている感性から、俺たちとはまるで別の存在である説が浮き彫りになる。

「キュッ(安心せい。妾のダンジョンでそんなことはせんわ。そもそも、エネルギーは腐るほど溜まっておるからの。するまでもない)」

 冗談でも言葉にしてほしくないと思うが、特殊調理者を確保してないダンジョンからすれば切実なのだろうな、エネルギー問題は。

「拠点までの案内を頼む」

「キュ(こっちじゃ)」

 ぴょんぴょんと飛び跳ねて、オリンは先を歩いた。
 俺たちは何を信じればいいのかわからなくなりながら、その後に続いた。
しおりを挟む
感想 485

あなたにおすすめの小説

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

処理中です...