ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

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118話 ツインヘッドベアー?

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 ファンガスはすっかり視聴者参加型で堪能したので、次に行く。

 余った食材や部位素材は卯保津さんに全て丸投げ。
 お次は探索者としての本分を全うしていく。

 まだ未開のダンジョンというだけあり、モンスターも緩慢に動いて積極的に人間を襲ってこないのだ。

 常にENが供給されてるのもあって、そこまで必死じゃない感じが共に安全圏を確保できてるというか、ジュリが管理者だからか基本的に放任主義。

 管轄のドールは空腹を満たしてくれた恩人の俺に怪我させない様に丁重なおもてなしをすると陰から見守ってる形だった。

 見えてる、見えてるよ。
 岩陰の向こうから隠しきれないボディが丸見えだ。

「何かいるわね」

「今度のモンスターも斬撃が無効化とか勘弁してくれよ?」

「魔法反射も勘弁してもらいたいわ」

「それなー」

「その時は一言申しつけてくれたら隠し包丁入れますよ」

「頼りにしてるぜ、Mr.」

 <コメント>
 :すっかりファンガスを堪能してこれから帰るのかと思いきや
 :そういやまだ一体目でしたね
 :こんなのがわんさかいるのかよ
 :巨体を隠しきれてないモンスター発見
 :あれで隠れられてると思ってるのを可愛いと見るべきか
 :昔はもっと図体小さかったとか?
 :子グマかよ

 もう見つかったことを観念したように、岩陰から現れたのは双頭のクマだった。

 <コメント>
 :クマだった!
 :首二つなくね?
 :あれって意味あんのか?
 :良く見ろ、腕も四本だ
 :仲良しの双子はいつまでも一緒!
 :胃袋は一つ
 :食べ物で喧嘩しそう

 コメントでもあるように、頭が二つに腕が四本。

 だがついてる向きが違っていた。前と後ろにそれぞれが対応している。
 これは……

「シット! バックアタックが仕掛けられねぇ!」

「魔法も効きが浅いわ」

「フィジカルで対処しろってことでしょ? 造作もないわ」

 問題点は山積みだ。
 しかしミィちゃんはこれくらいの難題でつまづかない。
 
 先陣を切る様に躍り出て、小さくまとめたハリケーンミキサーで頭の一つを潰していた。

 <コメント>
 :さすが美玲様!
 :ブロッコリーパワー炸裂!
 :残飯だろ?
 :残飯はやめろ
 :大福パワーだよ、あれは

 なぜか先ほどまで口にしていた料理でパワーの出所を決めるリスナーたち。別にどこからパワー得ていてもいいじゃない。

 俺の鉄板焼きなら嬉しくは思うけどね?

「グガァアアアアアア!!」

「キューーン!」

 <コメント>
 :一匹可愛い媚びっ媚びの声出してね?
 :子グマなんだよ、多分
 :親子かな?
 :悪魔合体かわいそう
 :キメラの時点で制作者はクソ

 ジュリ、言われてるよ?

『作ったのは私じゃありませんわ。管理を任せたドールですの』

 なるほど、上司が罪を認めずに部下を斬れば責任は逃れられると?
 俺、そういう大人嫌いなんだよね。

『今すぐ責任の所在を明るみに出させますわ!』

 今までどこへ行っていたのやら。
 俺の足元で体を擦り付けていた白猫は、軽い足取りでダンジョンの奥へと消えていった。

 目立つ行動をしてるんじゃないよ、全く。

 <コメント>
 :さっきポンちゃんの足元に白猫居なかった?
 :居ないぞ?
 :白昼夢乙
 :さっきいたんだって!

 ほらー、リスナーにもバレてる。
 さすがに迷宮管理者とまではバレてないけどさ。

 <コメント>
 :それよりツインヘッドグリズリー戦だよ!
 :名前それで決定なの?
 :モンスターペアレントでよくね?
 :いや、モンスターで親ではあるけどさ
 :そういうことじゃねーだろ!
 :鳴き声が可愛いだけで顔も腕もゴツいのを忘れるな
 :それな
 :飯テロと熱いバトルが楽しめるのはダンジョン美食倶楽部だけ!
 :何かの宣伝か?
 :実際そうなんだよなぁ
 :SSSSが手こずるダンジョンの時点で行くやついんのか?
 :しかもまだ入ってすぐの二戦目だって事実
 :素材の買い手がいれば仕事は成立するからな
 :問題は倒せたとしても解体できるかだよ
 :解体以前に倒せんの? ヤイバも通らないんだろ?
 :鮮焼のマスター曰く、散り散りになった元モーゼスタッフをかき集めろ
 :ああ、ぽんちゃんと同じ芸当ができるんだったか
 :だからって技術を安売りするか?
 :ポンちゃんはしてるんだよな
 :ポンちゃんは低ステだったから
 :実際でそれで食ってる人たちからすればいい迷惑じゃね? 安売りは

「なんか、すいません」

「誰に対しての謝罪だ? いいから先に隠し包丁頼む! こいつも刃物が通らねぇタイプだ」

「全体ですか?」

「可能な範囲で」

「ポンちゃん、足元にも注意してくれ! こいつはファンガスの同類かもしれねぇ!」

「なんだって?」

 いかにもなモンスタータイプだけど、ヨッちゃんが違和感を感じたその瞬間。

 双頭のクマの真下から、チョウチンアンコウの様な魚が大口を開けて飛び出してきた。

 一定のダメージを与えたから驚いて飛び出してきたのだろうか?
 近くにいるものを吸い込もうと大きな口が開かれた。

「チィッ」

 チョウチンアンコウとぶら下げられた双頭のクマを分断させ、クマだけが吸い込まれていく。

 獲物を口に入れたら、満足して地面に潜っていくチョウチンアンコウ。

 しかし食べたのは自身の肉体の一部。
 支柱は再び地面に現れ、そこに吸収したモンスターを組み合わせたものが誕生した。

 これはファンガスというより、北海道で対峙したトマトに近い生態系だろう。

 今回は寄生などはせず、捕食対象を即座に反映させたということだろうか?

 あのクマの親子は、もしかしなくても第一犠牲者なのかもしれない。
 そう思うとこんなモンスターをデザインした管理者を疑いたくなる。

『本人曰く、北海道の研究を参考にして独自に開発したそうです。最終的には人間が餌として抜擢、大きく成長を遂げるということですわ』

 却下だろう、そんなの。

 でも、まぁ第一発見者が俺たちでよかった。
 配信で危険性を伝えられただろうから。

 問題は食材としての価値かな?
 味が良ければ仮に出されるだろうから。

 味が良くないことを祈るが、きっと美味いんだろうなぁという予感がある。

 そう考えると、これも取り込んだ食材次第で複合食材になるわけだ。

 さっきのファンガスはきっと偶然ダイちゃんの適合食材だったディアから栄養を吸い取って成長したために鹿肉の旨みを携えていたんだろうな。

 つまりだ、ここの攻略さえ済んでしまえば適合食材を作り放題になってしまう。

 無論、それに伴う攻略難易度は異様に高いが、達成すれば莫大な利益を生むかもしれない。

 そう思わせるだけの余地があるが……うーむ、ここは本当に一般開放してしまってもよかったのだろうか?

 ミィちゃんでさえ手こずるモンスターが跋扈する場所だぞ?

 確かに旨みはあるが、リスクが見合わないんじゃないかと考える。
 ダンジョンにとって、人類はエネルギーを生み出すための道具にすぎない。

 数だけは多いので、絶滅させなきゃどう扱っても構わないって思想が偏ってるのが真実なんだよな。

 オリンもジュリも、俺だからこそ大切に扱ってくれているわけで。
 それをその他大勢には向けないからこそ、ここの解放は時期尚早だと考えてしまう。

 まぁ、これも試練か。
 ここをどう利用するかは探索者に任せよう。

 俺たちは偶然この場所に引き寄せられた。
 そう思うことにした。

 さて、思考が逸れたが本体は地中にいることが判明したので足元に向けて熟成乾燥(強)を仕掛ける。

 あとは掘り出して、隠し包丁を入れるだけで簡単に解体できた。

 そのまま実食と行きたいが、正直お腹いっぱいなので半分以上の素材を卯保津さんに丸投げして今日の配信はおしまい。

 翌日に持ち越した。

 ミィちゃんはダンジョン内に泊まると言い出したが、俺も所用があるので今日は拠点のホテルに戻ってもらった。

 こっちはジュリに色々問い詰めなきゃいけないことがあるから。
 ミィちゃんは巻き込めないんだよね。

 ヨッちゃんは、まぁ居ても大丈夫か。
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