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154話 クララちゃんとの事業提携
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と、いうわけで無事にクララちゃんと連絡が取れて、物理的に封鎖されたダンジョンセンターの近況を知る。
どうもあの人たち、ジュリのプライベートダンジョン内に閉じ込められてるみたいだ。
実はジュリが俺たちの元から消えて以降、狙ってそのダンジョンに赴けなくなっている。
食材としてはこれ以上ないくらいにストックは入手したが、再度赴こうとすると弾かれるのだ。
俺と接触させないためか?
あるいは別の理由。
クララちゃんは狙って出入りできるので、完全に前者だろうな。
卯保津さん達だけじゃ、あのダンジョンの攻略は難しい。
迷宮管理者との契約者がいることで保たれていた安全。
それいない今、無事でいられるかどうか。
そもそも、どうして急にそんなことし始めたのかわからない。
実は計画にないことが起きたのだろうか?
まぁ、俺が考えたところで、あの人の気持ちは一切わからないんだけど。
「と、卯保津さんの安全が確保されてるんならまぁヨシ。あそこのモンスターは設置型だから、無理に歩き回らなければ無害だから。籠城する分には適したダンジョンだよ。攻略はお勧めしないとだけ」
「でしょうね。まるで歯が立たずに逃げ回る日々でしたよ。おかげで私が持ち込む食材でなんとか凌いでもらってます」
「直接荷物とか送れたらいいのにねぇ」
「それはできます」
「できるの?」
「じゃなきゃこの仕事を引き受けながら、食事の配達なんてできませんからね。ワープポータルはゴールドランクのデリバリー職員の専売特許。まぁ、その専売特許は定員5名までなんですけど」
早い者勝ちなんだ。それじゃあ椅子取りゲームが起きかねないな。
「で、俺と高原が倉持に協力して稼がせてもらってるわけ」
「君たちもゴールド?」
「ああ、俺はこれがないと仕事に集中できないからな」
どんな理由かと思ったら、彼が寅八の全店舗のあんこの担当を請け負ってるのだそうだ。
毎日あんこを炊くためにデリバリー業をシフト制にしないか? と提案するくらいのガチっぷり。
俺以上の料理バカを初めて見た気がする。
それだけ恩義があるんだろう。
もし俺が同じ境遇を得ていたら、彼と同じように行動できただろうか?
「高原君にはシルバーにいてもらってるわ。ランクアップ制度は申請制なのよ。上がるかどうか逐一聞かれて、了承することでランクが上がるの。基本的にみんな飛びつくんだけど、定員制のランクは、それだけ恨みを買うもの。ビビリな彼はそれが許容できなかった。だからそこの席には座らない。いろんな人がいるんです」
クララちゃんはダンジョンセンター職員として、ダンジョンの中へ即座に荷物を送り届けたい、立派な志を持っている。
これを咎める人はいないだろう。
対して長谷部ユウジ君は、彼の思い込みの可能性が高い。それを確かめるために大福を食べたんだが、これはあれだ。
この味を出せる職人は一体彼以外に何人いるんだ? と疑ってしまうほどの味だった。
ヨッちゃん曰く「オレだったら絶対手放さねぇ。ポンちゃんクラス」とのこと。
つまり彼の言い分は何も間違っておらず、店が看板を掲げ続けるための礎と言っても過言ではない。
彼の代わりが一切いない状況は、ただの思い込みとだんじられないだろう。
だって、完全予約制のあんこの味を毎日好きな時に食べられるって、そうそうないよ?
「それで、定員は埋まってるの?」
「今は三人。私とユウジ、それにニアさんがついてるわ」
「その人は一緒に行動していないと?」
「そうね、いつの間に居なくなってて、気がついたら同じランクについていたの。ゴールド、なんて名称だけど、普通に上のランクがあるわ。これはあくまでもワープポータルが扱える権能を一時的に借りてるだけね。ランクによって扱える権能が異なるから」
「そんなものを政府公認機関が使えちゃっていいの?」
「絶対数が少ないから、そうでもしないと間に合わないのよ。今なら洋一さんが英雄と持て囃されてる状況から逃げ出したくなる気持ちもわかるわ。これは私たちだけじゃ間に合わない。そのための措置がこの権能だと思ってます」
「なるほどねぇ。俺は全ての人間を救おうとまでは思ってないけど、居合わせた人くらいは助けてあげるつもりだよ」
「その居合わせた人のうちに入ってた私は幸運だったわけですね」
「どうかな?」
なにやら鼻息を荒くして興奮するクララちゃん。
すっかり大人びた、と思っていたら簡単にかぶっていた猫が剥がれた。
成長はしてるけど、まだまだ未熟な面も残してるのが憎めないところだよね。
答えを濁しながら、自分の世界に入り込もうとするのを阻止。
軽くショックを受けていたが、今は放っておこう。
ユウジ君にゴールドの特性を用いてどんなことができるのかを聞いてみる。
「そうだな、たとえば。送り届けられる場所は5ヶ所。一方的な配送で、2ヶ所は固定。政府とダンジョン出土品納品センターってところ。それ以外の三つは自由に割り振っていいみたいだな。俺は寅八本店とダンジョンセンターの真似事をし始めたJDS本部、そして卸市場に加工品を届けるようにしてる。こうすることで、満遍なく日本のどこかに送り届けられるって寸法よ!」
へぇ、色々考えてるんだな。
そしてすっかり忘れてたJDS。
ダンジョンにこもって、すっかり公共交通機関とか使わなくなっちゃったからなぁ。
「私は政府と納品センターの他に、卯保津支部長のいるダンジョンと、井伊世支部長のいるダンジョン、屋良支部長のいるダンジョンと提携させてもらってます。私の頑張りが救出最優先のダンジョンと連携されるって寸法です」
ショックから立ち直った彼女が、聞いてもないことを語りだす。
そうか、ゴリラゴリラゴリラの三人の情報を掴んでいたか。
いや、普通に跡地に赴けるランクを上げて赴いたのかな?
卯保津さんがDフォンを持ってるから、連絡を取り付けられたんだろう。
「そういえばクララちゃんはDフォン持たないの?」
「あ、それですけど一応支給品を持たされてます。それでですね、番号の登録をしたいんですけど大丈夫ですか?」
「いいよ。ユウジ君もする?」
「いいのか? いやー、俺もよ完成したら吉報を届けたいと思ってんだけど、全部倉持に任せるのは悪いと思ってたんだよな。こいつ見た目以上に忙しそうだし、個人的なお願いまでするのも悪いと思ってる。これ、うちの番号だ」
「あー! ユウジ、抜け駆けは許さないわよ!」
「Dフォンの登録に抜け駆けもクソもあるかよ」
本当にね。なんだったらミィちゃんが一番最初で、その下に卯保津さんやJDSの支部長さんなんかも入ってるんだけど。
今更じゃない?
「やった、洋一さんの番号がついに私の元に!」
でも当人はお宝のように喜んでくれた。
お土産はいっぱいあげてるのに、これがわからない。
「いや、そこまで喜ぶことか?」
ユウジ君も不審者を見るような目でクララちゃんを眺めた。
「まぁ、彼女にとっては高い買い物だったからね」
「ちなみにこれ、買うといくらするンスか?」
「5000万」
「えっ」
「オレは買わなかった。それが答えだよ」
「そんなもん支給するとか政府も太っ腹だな!」
「ちなみにCランク以上じゃないと買えないし、Cランクでその金額稼ぐのは普通に骨だ。持ってるほとんどの人はAランク以上だと思ってていいよ。Cランクから買えるってだけで」
「俺だったら買わないっすね」
「まぁ、俺たちはダンジョンに潜りっぱなしで、普通に電話も持ってないから持たされたんだけどな。実際に買ってないからよくわからないんだ」
「あー、贈り物なんだ」
「そーそー、あの轟美玲からだぜ?」
「誰っすか?」
そっか、特別な顧客でもない限り、探索者のことなんて名前すら知らないか。
俺の場合は店の常連、上客だったから。
ヨッちゃんの場合は、ダンジョンセンター職員だったから。
クララちゃんは普通に探索者だった経緯もあり、その後経歴をダンジョンセンター職員として知ることになった。
それで共通の話題に挙げられた。
しかし彼にとってはよく知らない誰か。
話題に上がるくらいの有名人だけど、ピンと来ない感じだった。
そういうこともあるんだな。
むしろ社会に毒されない中で真っ当に過ごしてきたのだろう。
それ以上、ミィちゃんの話は彼の前ではしなくなった。
説明をしたって、彼にはなんの得にもならないからだ。
なら、最低限の説明だけでいい。
俺にとっては恋人で、ヨッちゃんにとっては義理の妹。
クララちゃんにとってはライバルって感じだから、そこら辺を話してもややこしくなるしね。
「で、だ。君たちには俺たちとも連携をとってほしくて、こいつを与える。オリン」
「キュ(分体じゃな? 任せておれ)」
名前を呼んだだけで、即座におれの考えを察したオリンがおれの肩から降りてくるなり体を揺らして二匹に分裂した。
「オリンちゃんが増えた!」
「この子、モンスターっすか?」
「そ。ポンちゃんの飯でテイムしたんだぜ? オリンって言うんだ。仲良くしてやってくれよな」
「飯で! おれの菓子でもテイムできっかな?」
「ああ、きっとできるさ」
なんせ、迷宮管理者は加工スキルによるエネルギーが大好物だからな。
ただ、それを仲介するにも上位権限持ちのジュリが解放されないことにはどうにもならない。
今頃ヤケクソになってまた引きこもってなきゃいいけど。
むしろダンジョンの管理を自称父親に丸投げにできるんだから、願ったり叶ったりだろうに。
「この子を私たちに預けると言うことは?」
「俺たちの拠点に似しているダンジョンの出土品をいつでも物々交換できるってことだな。ちなみに、これらの交渉は各ダンジョンともしている。クララちゃんたちが最初じゃないけど大丈夫か?」
「それはもちろん。むしろいつでも洋一さんのご飯が食べられるなんて役得では?」
「俺の加工スキルでできるものに限るんだけどね。その代わり、クララちゃんの調味料が欲しい時とか相談させてくれないか?」
「こっちとしてもポイント獲得に大いに役立ちますから、是非もないですね。ユウジもいいわよね?」
「普段冷静なお前はどこいったんだよ。つーか、それが崩れるほどのもんか、この人は」
この子も大概に苦労性だなぁ。
完全にクララちゃんに尻に叱れてるよ。
でもそれをまんざらでもないように受け止めてるあたり、好みだったんだろうなぁ。
まぁ、わからなくもない。
彼女は店を経営するのに最適化した人間だからね。
店を持ちたい職人にとっては理想的に見えるんだよ。
ただ、俺が店を持つって夢は夢のままで終わりそうだから、彼女にはいい人が見つかって欲しいと思ってた。
そこで現れたユウジ君。
組んでる時点で相性良さそうだし、このままくっついてくれないかな、なんて思ったりしてる。
本人はそれを望まないだろうけどね。
どうもあの人たち、ジュリのプライベートダンジョン内に閉じ込められてるみたいだ。
実はジュリが俺たちの元から消えて以降、狙ってそのダンジョンに赴けなくなっている。
食材としてはこれ以上ないくらいにストックは入手したが、再度赴こうとすると弾かれるのだ。
俺と接触させないためか?
あるいは別の理由。
クララちゃんは狙って出入りできるので、完全に前者だろうな。
卯保津さん達だけじゃ、あのダンジョンの攻略は難しい。
迷宮管理者との契約者がいることで保たれていた安全。
それいない今、無事でいられるかどうか。
そもそも、どうして急にそんなことし始めたのかわからない。
実は計画にないことが起きたのだろうか?
まぁ、俺が考えたところで、あの人の気持ちは一切わからないんだけど。
「と、卯保津さんの安全が確保されてるんならまぁヨシ。あそこのモンスターは設置型だから、無理に歩き回らなければ無害だから。籠城する分には適したダンジョンだよ。攻略はお勧めしないとだけ」
「でしょうね。まるで歯が立たずに逃げ回る日々でしたよ。おかげで私が持ち込む食材でなんとか凌いでもらってます」
「直接荷物とか送れたらいいのにねぇ」
「それはできます」
「できるの?」
「じゃなきゃこの仕事を引き受けながら、食事の配達なんてできませんからね。ワープポータルはゴールドランクのデリバリー職員の専売特許。まぁ、その専売特許は定員5名までなんですけど」
早い者勝ちなんだ。それじゃあ椅子取りゲームが起きかねないな。
「で、俺と高原が倉持に協力して稼がせてもらってるわけ」
「君たちもゴールド?」
「ああ、俺はこれがないと仕事に集中できないからな」
どんな理由かと思ったら、彼が寅八の全店舗のあんこの担当を請け負ってるのだそうだ。
毎日あんこを炊くためにデリバリー業をシフト制にしないか? と提案するくらいのガチっぷり。
俺以上の料理バカを初めて見た気がする。
それだけ恩義があるんだろう。
もし俺が同じ境遇を得ていたら、彼と同じように行動できただろうか?
「高原君にはシルバーにいてもらってるわ。ランクアップ制度は申請制なのよ。上がるかどうか逐一聞かれて、了承することでランクが上がるの。基本的にみんな飛びつくんだけど、定員制のランクは、それだけ恨みを買うもの。ビビリな彼はそれが許容できなかった。だからそこの席には座らない。いろんな人がいるんです」
クララちゃんはダンジョンセンター職員として、ダンジョンの中へ即座に荷物を送り届けたい、立派な志を持っている。
これを咎める人はいないだろう。
対して長谷部ユウジ君は、彼の思い込みの可能性が高い。それを確かめるために大福を食べたんだが、これはあれだ。
この味を出せる職人は一体彼以外に何人いるんだ? と疑ってしまうほどの味だった。
ヨッちゃん曰く「オレだったら絶対手放さねぇ。ポンちゃんクラス」とのこと。
つまり彼の言い分は何も間違っておらず、店が看板を掲げ続けるための礎と言っても過言ではない。
彼の代わりが一切いない状況は、ただの思い込みとだんじられないだろう。
だって、完全予約制のあんこの味を毎日好きな時に食べられるって、そうそうないよ?
「それで、定員は埋まってるの?」
「今は三人。私とユウジ、それにニアさんがついてるわ」
「その人は一緒に行動していないと?」
「そうね、いつの間に居なくなってて、気がついたら同じランクについていたの。ゴールド、なんて名称だけど、普通に上のランクがあるわ。これはあくまでもワープポータルが扱える権能を一時的に借りてるだけね。ランクによって扱える権能が異なるから」
「そんなものを政府公認機関が使えちゃっていいの?」
「絶対数が少ないから、そうでもしないと間に合わないのよ。今なら洋一さんが英雄と持て囃されてる状況から逃げ出したくなる気持ちもわかるわ。これは私たちだけじゃ間に合わない。そのための措置がこの権能だと思ってます」
「なるほどねぇ。俺は全ての人間を救おうとまでは思ってないけど、居合わせた人くらいは助けてあげるつもりだよ」
「その居合わせた人のうちに入ってた私は幸運だったわけですね」
「どうかな?」
なにやら鼻息を荒くして興奮するクララちゃん。
すっかり大人びた、と思っていたら簡単にかぶっていた猫が剥がれた。
成長はしてるけど、まだまだ未熟な面も残してるのが憎めないところだよね。
答えを濁しながら、自分の世界に入り込もうとするのを阻止。
軽くショックを受けていたが、今は放っておこう。
ユウジ君にゴールドの特性を用いてどんなことができるのかを聞いてみる。
「そうだな、たとえば。送り届けられる場所は5ヶ所。一方的な配送で、2ヶ所は固定。政府とダンジョン出土品納品センターってところ。それ以外の三つは自由に割り振っていいみたいだな。俺は寅八本店とダンジョンセンターの真似事をし始めたJDS本部、そして卸市場に加工品を届けるようにしてる。こうすることで、満遍なく日本のどこかに送り届けられるって寸法よ!」
へぇ、色々考えてるんだな。
そしてすっかり忘れてたJDS。
ダンジョンにこもって、すっかり公共交通機関とか使わなくなっちゃったからなぁ。
「私は政府と納品センターの他に、卯保津支部長のいるダンジョンと、井伊世支部長のいるダンジョン、屋良支部長のいるダンジョンと提携させてもらってます。私の頑張りが救出最優先のダンジョンと連携されるって寸法です」
ショックから立ち直った彼女が、聞いてもないことを語りだす。
そうか、ゴリラゴリラゴリラの三人の情報を掴んでいたか。
いや、普通に跡地に赴けるランクを上げて赴いたのかな?
卯保津さんがDフォンを持ってるから、連絡を取り付けられたんだろう。
「そういえばクララちゃんはDフォン持たないの?」
「あ、それですけど一応支給品を持たされてます。それでですね、番号の登録をしたいんですけど大丈夫ですか?」
「いいよ。ユウジ君もする?」
「いいのか? いやー、俺もよ完成したら吉報を届けたいと思ってんだけど、全部倉持に任せるのは悪いと思ってたんだよな。こいつ見た目以上に忙しそうだし、個人的なお願いまでするのも悪いと思ってる。これ、うちの番号だ」
「あー! ユウジ、抜け駆けは許さないわよ!」
「Dフォンの登録に抜け駆けもクソもあるかよ」
本当にね。なんだったらミィちゃんが一番最初で、その下に卯保津さんやJDSの支部長さんなんかも入ってるんだけど。
今更じゃない?
「やった、洋一さんの番号がついに私の元に!」
でも当人はお宝のように喜んでくれた。
お土産はいっぱいあげてるのに、これがわからない。
「いや、そこまで喜ぶことか?」
ユウジ君も不審者を見るような目でクララちゃんを眺めた。
「まぁ、彼女にとっては高い買い物だったからね」
「ちなみにこれ、買うといくらするンスか?」
「5000万」
「えっ」
「オレは買わなかった。それが答えだよ」
「そんなもん支給するとか政府も太っ腹だな!」
「ちなみにCランク以上じゃないと買えないし、Cランクでその金額稼ぐのは普通に骨だ。持ってるほとんどの人はAランク以上だと思ってていいよ。Cランクから買えるってだけで」
「俺だったら買わないっすね」
「まぁ、俺たちはダンジョンに潜りっぱなしで、普通に電話も持ってないから持たされたんだけどな。実際に買ってないからよくわからないんだ」
「あー、贈り物なんだ」
「そーそー、あの轟美玲からだぜ?」
「誰っすか?」
そっか、特別な顧客でもない限り、探索者のことなんて名前すら知らないか。
俺の場合は店の常連、上客だったから。
ヨッちゃんの場合は、ダンジョンセンター職員だったから。
クララちゃんは普通に探索者だった経緯もあり、その後経歴をダンジョンセンター職員として知ることになった。
それで共通の話題に挙げられた。
しかし彼にとってはよく知らない誰か。
話題に上がるくらいの有名人だけど、ピンと来ない感じだった。
そういうこともあるんだな。
むしろ社会に毒されない中で真っ当に過ごしてきたのだろう。
それ以上、ミィちゃんの話は彼の前ではしなくなった。
説明をしたって、彼にはなんの得にもならないからだ。
なら、最低限の説明だけでいい。
俺にとっては恋人で、ヨッちゃんにとっては義理の妹。
クララちゃんにとってはライバルって感じだから、そこら辺を話してもややこしくなるしね。
「で、だ。君たちには俺たちとも連携をとってほしくて、こいつを与える。オリン」
「キュ(分体じゃな? 任せておれ)」
名前を呼んだだけで、即座におれの考えを察したオリンがおれの肩から降りてくるなり体を揺らして二匹に分裂した。
「オリンちゃんが増えた!」
「この子、モンスターっすか?」
「そ。ポンちゃんの飯でテイムしたんだぜ? オリンって言うんだ。仲良くしてやってくれよな」
「飯で! おれの菓子でもテイムできっかな?」
「ああ、きっとできるさ」
なんせ、迷宮管理者は加工スキルによるエネルギーが大好物だからな。
ただ、それを仲介するにも上位権限持ちのジュリが解放されないことにはどうにもならない。
今頃ヤケクソになってまた引きこもってなきゃいいけど。
むしろダンジョンの管理を自称父親に丸投げにできるんだから、願ったり叶ったりだろうに。
「この子を私たちに預けると言うことは?」
「俺たちの拠点に似しているダンジョンの出土品をいつでも物々交換できるってことだな。ちなみに、これらの交渉は各ダンジョンともしている。クララちゃんたちが最初じゃないけど大丈夫か?」
「それはもちろん。むしろいつでも洋一さんのご飯が食べられるなんて役得では?」
「俺の加工スキルでできるものに限るんだけどね。その代わり、クララちゃんの調味料が欲しい時とか相談させてくれないか?」
「こっちとしてもポイント獲得に大いに役立ちますから、是非もないですね。ユウジもいいわよね?」
「普段冷静なお前はどこいったんだよ。つーか、それが崩れるほどのもんか、この人は」
この子も大概に苦労性だなぁ。
完全にクララちゃんに尻に叱れてるよ。
でもそれをまんざらでもないように受け止めてるあたり、好みだったんだろうなぁ。
まぁ、わからなくもない。
彼女は店を経営するのに最適化した人間だからね。
店を持ちたい職人にとっては理想的に見えるんだよ。
ただ、俺が店を持つって夢は夢のままで終わりそうだから、彼女にはいい人が見つかって欲しいと思ってた。
そこで現れたユウジ君。
組んでる時点で相性良さそうだし、このままくっついてくれないかな、なんて思ったりしてる。
本人はそれを望まないだろうけどね。
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