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161話 邪神復活阻止計画
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何故かカメラに映らない少女、ルゥちゃんは食事をしながらここに来る前までの事情をいくつか話してくれた。
「そっか、君もダンジョンデリバリー関係者だったのか」
「本宝治さんが倉持さんのお知り合いだとは存じ上げませんでした」
彼女はクララちゃんと同じ、ダンジョンデリバリーに見出されて、ここに来たという。
しかしながら、こんな危険地帯に乗り込めるほどの凄腕には見えない。
まぁ、見た目のことだけなら俺たちも人のことは言えないし、それは別にいいんだけど。
「でもここに人がいないと知りながらやってきたよね? それはどうして?」
「実は私……」
俯きながら答えあぐねる彼女は、やがて意を結したように口を開く。
彼女は生まれながらに本来見えないはずのものが見えていて、それが今肩に乗ってる人形の瑠璃だと語った。
ちなみにヨッちゃんはルゥちゃんこそ見えているものの、瑠璃の方は存在すら確認できないらしい。
そこに何かいるの? みたいな顔で俺とルゥちゃんの顔を交互に見てる。
けど、俺だけは認識できていた。
それは偶然なのか必然なのか。
はたまた俺の魔眼だからこそ捉えられたのか。
そう言えば、エレメンタルボディも昔から一部の人にしか見えてなかったし、その類か?
「そっか、じゃあ俺たちのオリンみたいなものかな?」
「うちの瑠璃をそこの下賎なモンスターと一緒にしないでくれます?」
人形を庇いながら、ルゥちゃんはうちのオリンと比較するのは不快だと口にする。
「キュ(なんじゃとぉ!)」
オリンもそこで張り合わない。
「ごめんなー、オリンはプライドだけは高くてさ。こう見えて結構便利なやつなんだよ」
『迷宮管理者の権限を奪われておいて、便利とは程度が知れますね』
ん、この子?
今なんて言った。
いや、違う。喋ったのは彼女じゃない。
緑色のタコっぽい人形が直接俺に語りかけてきた?
『お初にお目にかかります、定命の者よ。私はルルイエ。この迷宮における第一権限を持つ最古の神。そしてその契約者たる我がマスター、久藤ルゥは主神クトゥルゥの生まれ変わり。本来ならあなたたちが首を垂れずにこうして話すことは不敬なのですが、今はマスターに免じて許してあげます。ですが、次はありませんよ?』
「キュッ(よもや、外宇宙の迷宮管理者か? 今更こんな僻地に何をしに来おった!)」
オリンもオリンで訳知りか。
しかし、外宇宙ってなんの話だ?
スケールが大きすぎて話についていけないんだが。
『無知とは怖いものですね。地球はもとより我らが支配地でした。しかし少し休眠をとってる間に、余所者が土足で入ってきたのです。これはいけないとお目覚めを促して、ようやくここまで記憶を取り戻してもらいました。この地から再び始めるために、このダンジョンは私たちが運営します』
「キュ(フン、二番殿以上の寝坊助が、今更起きてきたところで遅いのじゃ!)」
よくわからないが、彼女はこのダンジョンの地主で、後からやってきたオリンたちの上司が他人の敷地だと知らずに勝手に家を建てて揉めてるらしい。
オリンの言い分を聞く限り、それらしい形跡はなかったと主張してるし、そもそも誰かの管理下なのに、エネルギーが枯渇してるのはおかしいと反論されて瑠璃も黙り込んでいた。
どうやらジュリ以上の放任主義が仇となったようだ。
今更それを主張する時点で、大昔すぎて契約も切れている。
現に守護者の類が配置されてない時点でルリの主張は的外れであると論破されていた。
こういう口論はオリンが強いよな。
ジュリだったら、こうはいかない。
「なんとなくだけど、君がここに呼ばれた理由はわかったよ。その上で提案だが」
「なんでしょう?」
「ここのダンジョンに俺たちの居住スペースを間借りすることってできる?」
「えっと、大丈夫ですが、強化型モンスターがあなたたちを襲っても責任は取れませんよ?」
「よかった。実はさ、今世界中のダンジョンが繋がってる大惨事状態で、ここは多分ダンジョンの最奥に位置付けされてると思うんだよね。入り口から最もかけ離れてるっていうのかな?」
「詳しくお話をお聞かせください」
ルゥちゃんはそんな話聞いてないとばかりに俺の話に耳を傾けてくれた。どうも瑠璃から聞いていた話と随分と違うと困惑気味だ。
俺たちだって又聞きだが、この世界のダンジョンは弱いモンスターが生息する地域と強すぎて手に負えないモンスターが生息する地域が存在する。
それをランク分けしたのが、今のダンジョンの現状。
そして、最上位モンスターが跋扈するこのダンジョンは入り口からは最も遠く、エネルギーの収入が一番見込めない、そういう状況下にあるということを話した。
「え、でも瑠璃はこのダンジョンはエネルギーに満ちているって、すぐに再起動できるって言ってるよ?」
「それは俺たちがここで加工スキルを使って飯を食ってるからだ。オリン曰く、俺たちの加工スキルはエネルギー換算率がすこぶる高く、中には何度も加工してから料理して、その場で消費することで莫大なエネルギーを生み出している。けどね、この地球の支配者は突如運営方針を変え、一番迷宮管理者以外から、エネルギー収集機能を奪い取ってしまった」
『それで、そこの管理者にはエネルギーをどうこうする権利がなくなっていたんですね』
こんな話、配信に載せられないが、瑠璃が念話を送ってきた時点で砂嵐が強烈になってきた。
きっと今頃配信事故として取り扱われてる頃だろう。
なので俺も腹を括ってこうして説明なんかをしている。
ヨッちゃんは話についていけないので、普通に飯を食っているな。
どんな神経しているのやら。
まぁ、姿も見えず、会話も聴こえないなら無理もないか。
「キュ(よもや我ら以外の支配者が存在しとるとも思わんでな)」
オリンが今さらっと支配者って言ったけど、俺の聞き間違いかな?
『ここ、ドリームランドの地球は昔から我々が人類を支配していました。そのうちの一柱が、主神クトゥルゥなのですが……』
ドリームランド? なにそれ知らない。
『はて、ここはドリームランドではないのですか? マスターよ、ここは地球で間違い無いのですよね?』
「ここは地球だよ、瑠璃。でも私もドリームランドっていうのは知らないな」
『なんてこと! では私は間違った場所のマスターを起こしてしまったということですか?』
どうも似て異なる地域に降り立ってしまったようだった。
並行世界的な?
よくわかんないけど、どんまい。
ファンガス炒め、食べる?
「ありがとうございます。実はこれ好きな味で、なんか夢中で食べちゃいますね」
「それでなんだけどさ、もしよかったら俺たちと協力関係にならない?」
「えっと?」
ルゥちゃんは答えかねて、瑠璃に頼る。
『協力だなんて烏滸がましい。あなたがマスターの世話を焼くのは市場の喜びなのですよ、ヒューマン。それを協力だなんて、恥を知りなさい』
瑠璃は相変わらず不遜な態度。
けど、困っているのはそっちも同じだろう。
せっかくダンジョンの支配権を手に入れても、エネルギーの入手手段が限られてる。俺たちは別にここを出て別のところで生活してもいいのだが、それをされるとエネルギーがますます枯渇してしまうだろう。
それをされたら、困るのはそちら。
俺たちがこの場に残りたいいちばんの理由は食材の確保の一点のみ。
向こうにそれをあえて提示しないのは、瑠璃の考えが弱肉強食に寄りすぎているからだ。
強いか弱いか、偉いか偉くないか。
判断基準がそこでしかしない。
神や人という物差しでしか人を測れない。
だから交渉たり得ない。
けど、エネルギーの補填という意味合いでなら、俺たちの協力を無碍にできないはずだ。
「瑠璃、せっかくここを手に入れても、人を支配できなきゃ意味ないよ。イオままでそのための準備をしてきたんでしょ?」
『ですがマスター』
「本宝治さん、よろしければその条件なんかを詳しくお聞かせできないでしょうか? この子は昔っから人を軽んじてばかりでまるで会話にならないことが多く……このダンジョンの現状、そしてこれからどう運営していくか。それらを相談させてくれませんか?」
『マスター! それではヒューマンに我々の計画がバレてしまう! これでは旧支配者としての面目が!』
「面目なんてもう潰えてるんでしょ! だからこうして知らない誰かに荒らされちゃってるんじゃん! 瑠璃はもっと事前調査すべきだったんだよ! これ以上瑠璃の妄想で私を振り回さないで!」
『ぐぬぅうううう』
今まで不遜な態度で通していた瑠璃が、論破されてる瞬間を目の当たりにする。なんかよくわからないが、思い通りに行かなかった計画が足元から瓦解した時、人はこんな声を出すよなぁってひとごとながらに思った。
と、いうか。
あのひと、瑠璃みたいな存在が紛れ込んでるって事前死察知して、今回のようなことを仕掛けたんだろうか?
そもそも、ジュリのダンジョンが旧支配者誕生のトリガーな気がするけど気のせいか?
偶然、だよな?
その日はルゥちゃんと協力体制を築いて、今後なにをしていくかの方針を決めた。
なにをやりたいか聞いた時、世界征服って言葉を聞いた時は苦笑いしちゃったけど、彼女の前世は旧支配者だったらしく、言葉の橋端に不遜な態度が滲み出てるんだよねぇ。
なんだかんだ瑠璃が気にいる素養を兼ね備えてるルゥちゃん。
ダンジョンに直接介入できる権限を持つ緑髪の少女との付き合いは、こうして始まった。
「早速動き出したか」
ダンジョンの一つが掌握されたのを確認し、金剛満は忌まわしげに呟く。
『もう少し対応が遅れていたら、大変なことになっていましたね』
一番迷宮管理者、キュリエが苦々しく答える。
「ああ、あれらはリソースを食い潰すだけしか取り柄のない癌細胞だ。ダンジョンだけでなく、我らが管理者まで掌握するのは目に見えている。事前に管理権限を奪っていなかったら大変なことになっていただろうな」
『でしょうね、接触した四番からは論破してやったと勝利報告が届いております』
「あれはそんなタマだったか?」
『マスターに感化されたのでしょう。私のように』
「そうか。だがしかし、我が星に迷い込んだガン細胞はあれだけではない。念には念を入れてギミックを追加するぞ」
『はい、この地球を侵略者の手から守るために』
「そうだ、エイリアンどもを撃滅するために」
金剛満は、立ち上がるなり早速行動を起こす。
メディアへの発表、そして新たな政策の開示。
地上はますますダンジョンの騒動から目を離せなくなった。
この政策が失敗すれば、人類は文字通り絶滅する。
旧支配者復活阻止計画は、誰にも語られずにスタートした。
「そっか、君もダンジョンデリバリー関係者だったのか」
「本宝治さんが倉持さんのお知り合いだとは存じ上げませんでした」
彼女はクララちゃんと同じ、ダンジョンデリバリーに見出されて、ここに来たという。
しかしながら、こんな危険地帯に乗り込めるほどの凄腕には見えない。
まぁ、見た目のことだけなら俺たちも人のことは言えないし、それは別にいいんだけど。
「でもここに人がいないと知りながらやってきたよね? それはどうして?」
「実は私……」
俯きながら答えあぐねる彼女は、やがて意を結したように口を開く。
彼女は生まれながらに本来見えないはずのものが見えていて、それが今肩に乗ってる人形の瑠璃だと語った。
ちなみにヨッちゃんはルゥちゃんこそ見えているものの、瑠璃の方は存在すら確認できないらしい。
そこに何かいるの? みたいな顔で俺とルゥちゃんの顔を交互に見てる。
けど、俺だけは認識できていた。
それは偶然なのか必然なのか。
はたまた俺の魔眼だからこそ捉えられたのか。
そう言えば、エレメンタルボディも昔から一部の人にしか見えてなかったし、その類か?
「そっか、じゃあ俺たちのオリンみたいなものかな?」
「うちの瑠璃をそこの下賎なモンスターと一緒にしないでくれます?」
人形を庇いながら、ルゥちゃんはうちのオリンと比較するのは不快だと口にする。
「キュ(なんじゃとぉ!)」
オリンもそこで張り合わない。
「ごめんなー、オリンはプライドだけは高くてさ。こう見えて結構便利なやつなんだよ」
『迷宮管理者の権限を奪われておいて、便利とは程度が知れますね』
ん、この子?
今なんて言った。
いや、違う。喋ったのは彼女じゃない。
緑色のタコっぽい人形が直接俺に語りかけてきた?
『お初にお目にかかります、定命の者よ。私はルルイエ。この迷宮における第一権限を持つ最古の神。そしてその契約者たる我がマスター、久藤ルゥは主神クトゥルゥの生まれ変わり。本来ならあなたたちが首を垂れずにこうして話すことは不敬なのですが、今はマスターに免じて許してあげます。ですが、次はありませんよ?』
「キュッ(よもや、外宇宙の迷宮管理者か? 今更こんな僻地に何をしに来おった!)」
オリンもオリンで訳知りか。
しかし、外宇宙ってなんの話だ?
スケールが大きすぎて話についていけないんだが。
『無知とは怖いものですね。地球はもとより我らが支配地でした。しかし少し休眠をとってる間に、余所者が土足で入ってきたのです。これはいけないとお目覚めを促して、ようやくここまで記憶を取り戻してもらいました。この地から再び始めるために、このダンジョンは私たちが運営します』
「キュ(フン、二番殿以上の寝坊助が、今更起きてきたところで遅いのじゃ!)」
よくわからないが、彼女はこのダンジョンの地主で、後からやってきたオリンたちの上司が他人の敷地だと知らずに勝手に家を建てて揉めてるらしい。
オリンの言い分を聞く限り、それらしい形跡はなかったと主張してるし、そもそも誰かの管理下なのに、エネルギーが枯渇してるのはおかしいと反論されて瑠璃も黙り込んでいた。
どうやらジュリ以上の放任主義が仇となったようだ。
今更それを主張する時点で、大昔すぎて契約も切れている。
現に守護者の類が配置されてない時点でルリの主張は的外れであると論破されていた。
こういう口論はオリンが強いよな。
ジュリだったら、こうはいかない。
「なんとなくだけど、君がここに呼ばれた理由はわかったよ。その上で提案だが」
「なんでしょう?」
「ここのダンジョンに俺たちの居住スペースを間借りすることってできる?」
「えっと、大丈夫ですが、強化型モンスターがあなたたちを襲っても責任は取れませんよ?」
「よかった。実はさ、今世界中のダンジョンが繋がってる大惨事状態で、ここは多分ダンジョンの最奥に位置付けされてると思うんだよね。入り口から最もかけ離れてるっていうのかな?」
「詳しくお話をお聞かせください」
ルゥちゃんはそんな話聞いてないとばかりに俺の話に耳を傾けてくれた。どうも瑠璃から聞いていた話と随分と違うと困惑気味だ。
俺たちだって又聞きだが、この世界のダンジョンは弱いモンスターが生息する地域と強すぎて手に負えないモンスターが生息する地域が存在する。
それをランク分けしたのが、今のダンジョンの現状。
そして、最上位モンスターが跋扈するこのダンジョンは入り口からは最も遠く、エネルギーの収入が一番見込めない、そういう状況下にあるということを話した。
「え、でも瑠璃はこのダンジョンはエネルギーに満ちているって、すぐに再起動できるって言ってるよ?」
「それは俺たちがここで加工スキルを使って飯を食ってるからだ。オリン曰く、俺たちの加工スキルはエネルギー換算率がすこぶる高く、中には何度も加工してから料理して、その場で消費することで莫大なエネルギーを生み出している。けどね、この地球の支配者は突如運営方針を変え、一番迷宮管理者以外から、エネルギー収集機能を奪い取ってしまった」
『それで、そこの管理者にはエネルギーをどうこうする権利がなくなっていたんですね』
こんな話、配信に載せられないが、瑠璃が念話を送ってきた時点で砂嵐が強烈になってきた。
きっと今頃配信事故として取り扱われてる頃だろう。
なので俺も腹を括ってこうして説明なんかをしている。
ヨッちゃんは話についていけないので、普通に飯を食っているな。
どんな神経しているのやら。
まぁ、姿も見えず、会話も聴こえないなら無理もないか。
「キュ(よもや我ら以外の支配者が存在しとるとも思わんでな)」
オリンが今さらっと支配者って言ったけど、俺の聞き間違いかな?
『ここ、ドリームランドの地球は昔から我々が人類を支配していました。そのうちの一柱が、主神クトゥルゥなのですが……』
ドリームランド? なにそれ知らない。
『はて、ここはドリームランドではないのですか? マスターよ、ここは地球で間違い無いのですよね?』
「ここは地球だよ、瑠璃。でも私もドリームランドっていうのは知らないな」
『なんてこと! では私は間違った場所のマスターを起こしてしまったということですか?』
どうも似て異なる地域に降り立ってしまったようだった。
並行世界的な?
よくわかんないけど、どんまい。
ファンガス炒め、食べる?
「ありがとうございます。実はこれ好きな味で、なんか夢中で食べちゃいますね」
「それでなんだけどさ、もしよかったら俺たちと協力関係にならない?」
「えっと?」
ルゥちゃんは答えかねて、瑠璃に頼る。
『協力だなんて烏滸がましい。あなたがマスターの世話を焼くのは市場の喜びなのですよ、ヒューマン。それを協力だなんて、恥を知りなさい』
瑠璃は相変わらず不遜な態度。
けど、困っているのはそっちも同じだろう。
せっかくダンジョンの支配権を手に入れても、エネルギーの入手手段が限られてる。俺たちは別にここを出て別のところで生活してもいいのだが、それをされるとエネルギーがますます枯渇してしまうだろう。
それをされたら、困るのはそちら。
俺たちがこの場に残りたいいちばんの理由は食材の確保の一点のみ。
向こうにそれをあえて提示しないのは、瑠璃の考えが弱肉強食に寄りすぎているからだ。
強いか弱いか、偉いか偉くないか。
判断基準がそこでしかしない。
神や人という物差しでしか人を測れない。
だから交渉たり得ない。
けど、エネルギーの補填という意味合いでなら、俺たちの協力を無碍にできないはずだ。
「瑠璃、せっかくここを手に入れても、人を支配できなきゃ意味ないよ。イオままでそのための準備をしてきたんでしょ?」
『ですがマスター』
「本宝治さん、よろしければその条件なんかを詳しくお聞かせできないでしょうか? この子は昔っから人を軽んじてばかりでまるで会話にならないことが多く……このダンジョンの現状、そしてこれからどう運営していくか。それらを相談させてくれませんか?」
『マスター! それではヒューマンに我々の計画がバレてしまう! これでは旧支配者としての面目が!』
「面目なんてもう潰えてるんでしょ! だからこうして知らない誰かに荒らされちゃってるんじゃん! 瑠璃はもっと事前調査すべきだったんだよ! これ以上瑠璃の妄想で私を振り回さないで!」
『ぐぬぅうううう』
今まで不遜な態度で通していた瑠璃が、論破されてる瞬間を目の当たりにする。なんかよくわからないが、思い通りに行かなかった計画が足元から瓦解した時、人はこんな声を出すよなぁってひとごとながらに思った。
と、いうか。
あのひと、瑠璃みたいな存在が紛れ込んでるって事前死察知して、今回のようなことを仕掛けたんだろうか?
そもそも、ジュリのダンジョンが旧支配者誕生のトリガーな気がするけど気のせいか?
偶然、だよな?
その日はルゥちゃんと協力体制を築いて、今後なにをしていくかの方針を決めた。
なにをやりたいか聞いた時、世界征服って言葉を聞いた時は苦笑いしちゃったけど、彼女の前世は旧支配者だったらしく、言葉の橋端に不遜な態度が滲み出てるんだよねぇ。
なんだかんだ瑠璃が気にいる素養を兼ね備えてるルゥちゃん。
ダンジョンに直接介入できる権限を持つ緑髪の少女との付き合いは、こうして始まった。
「早速動き出したか」
ダンジョンの一つが掌握されたのを確認し、金剛満は忌まわしげに呟く。
『もう少し対応が遅れていたら、大変なことになっていましたね』
一番迷宮管理者、キュリエが苦々しく答える。
「ああ、あれらはリソースを食い潰すだけしか取り柄のない癌細胞だ。ダンジョンだけでなく、我らが管理者まで掌握するのは目に見えている。事前に管理権限を奪っていなかったら大変なことになっていただろうな」
『でしょうね、接触した四番からは論破してやったと勝利報告が届いております』
「あれはそんなタマだったか?」
『マスターに感化されたのでしょう。私のように』
「そうか。だがしかし、我が星に迷い込んだガン細胞はあれだけではない。念には念を入れてギミックを追加するぞ」
『はい、この地球を侵略者の手から守るために』
「そうだ、エイリアンどもを撃滅するために」
金剛満は、立ち上がるなり早速行動を起こす。
メディアへの発表、そして新たな政策の開示。
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