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一章
限定SS 甘味探索
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ドラゴン討伐の喧騒も落ち着いて、俺たちも本格的に冒険者活動に勤しむ。
と、言うよりはそれすらおまけでメインはいつもの食料の素材探しだ。
メンバーはいつもの五人。
俺、薫、委員長、杜若さん、そして新メンバーのアリエルだ。
アリエルはステータスの低さからよく足を引っ張るので、あまり遠出はせずに近所(それでも山を一つは越える)で済ませている。
委員長のマッピングであらかた探したが、街の中までは探しきれてないのが実情だ。
薫に何か噂話で引っ掛かりがないか確認しつつ、俺たちは周囲に目を向けて街を練り歩いた。
大通りを抜けて細い路地に入る。
普通ならここで厳ついにいちゃんに絡まれるようなお約束は、俺たちのパーティに杜若さんがいる限りまず起こらない。
精神安定最強説は今もなお健在だ。
その凄さにアリエルは信じられないと言う目を送り続ける。
なんだったら神聖化しつつある眼差しをぶつけているんじゃないか?
よく分からんが杜若さんに懐いているみたいだった。
「雄介、あれは何?」
「うん?」
アリエルが指を差した場所には、何か物売りの屋台があった。
「鑑定するわ」
委員長がズイと前に出る。瓶底眼鏡のレンズ越しに、穴が開くほど目を見開き、情報を抜き取る。
流石の識別能力だと拍手喝采を送る。
「あれはフルーツを焼いた物を販売してる所らしいわ。形が崩れて情報が不明ね。もしかしたら私たちの知らない情報もあるかもしれないわ。よく見つけたわね、アリエル」
「なんか変わった匂いがしたわ。由乃達はしなかった?」
「裏道の独特のすえた匂いが印象的で特に気にしてなかったわ」
「そっか。あたしは逆に居心地いいからすぐに分かったわ」
「よし、じゃあ僕が交渉してくるよ」
悪代官のような笑みを引っ提げ、薫が発進した。
数分後、屋台の店主が泣き叫びながらホクホク顔の薫が帰ってくる。またこいつ値切ってきたな?
アリエルが恐ろしいものから身を隠すように杜若さんの背中に隠れているのが印象的だ。
「で、何があった?」
「取り敢えず渡すね。持ちきれないからガチャに突っ込んでいいよ」
「オッケー」
両手に抱えてる薫の腕から商品を片っぱしからガチャに投入していく。
そこで判明した情報を委員長が片っ端からメモに書き留めていく。いつもの光景だ。
「えーと、リンゴ、オレンジ、桃、スモモ、ライチ、バナナがグレープのソースで和えてある物を小麦の生地を薄く焼いた物に巻いてあるらしいぞ」
「クレープみたいな物かしら?」
「酸味と甘味が一緒くたになっているのが気になりますわ」
「でもこの国の味覚だよ? 僕は雄介のガチャで加工した方が伸び代があると思うな」
「「意義なし」」
薫の意見にクラスメイトの女子二人が同意する。
「アリエルはどう思う?」
「あたしも参加していいの?」
「そりゃもちろん。見つけたのはアリエルだぜ? な、みんな」
俺の問いかけに薫も委員長も杜若さんも頷いて見せた。
じゃあ、と言い出しかけたアリエルは少し溜めてからお決まりの一言を添える。
「ソフトクリームのいろんな味が食べたいの。その、今回手に入った果実は少量でしょ? 新しく料理を作るほどはないと思うから……ダメかしら?」
恐る恐る、自分の要望を伝えるアリエル。
俺たちはそれでも大丈夫だと伝えると満面の笑みを浮かべた。
そして味覚検証会。
「グレープソースのソフトクリームはカップアイスを思い出すわね」
「それ僕も思った」
「カップアイスって何?」
「お、アリエルはカップアイス初めてか」
出せそうなら出す。それが俺にできるみんなへの唯一の恩返しである。多分コレだろうと念じたら、手元に出る相変わらずの謎仕様だ。
それを手渡し、蓋を剥がして木のスプーンで掬って食べるアリエルを俺たちは微笑ましく見守った。
と、言うよりはそれすらおまけでメインはいつもの食料の素材探しだ。
メンバーはいつもの五人。
俺、薫、委員長、杜若さん、そして新メンバーのアリエルだ。
アリエルはステータスの低さからよく足を引っ張るので、あまり遠出はせずに近所(それでも山を一つは越える)で済ませている。
委員長のマッピングであらかた探したが、街の中までは探しきれてないのが実情だ。
薫に何か噂話で引っ掛かりがないか確認しつつ、俺たちは周囲に目を向けて街を練り歩いた。
大通りを抜けて細い路地に入る。
普通ならここで厳ついにいちゃんに絡まれるようなお約束は、俺たちのパーティに杜若さんがいる限りまず起こらない。
精神安定最強説は今もなお健在だ。
その凄さにアリエルは信じられないと言う目を送り続ける。
なんだったら神聖化しつつある眼差しをぶつけているんじゃないか?
よく分からんが杜若さんに懐いているみたいだった。
「雄介、あれは何?」
「うん?」
アリエルが指を差した場所には、何か物売りの屋台があった。
「鑑定するわ」
委員長がズイと前に出る。瓶底眼鏡のレンズ越しに、穴が開くほど目を見開き、情報を抜き取る。
流石の識別能力だと拍手喝采を送る。
「あれはフルーツを焼いた物を販売してる所らしいわ。形が崩れて情報が不明ね。もしかしたら私たちの知らない情報もあるかもしれないわ。よく見つけたわね、アリエル」
「なんか変わった匂いがしたわ。由乃達はしなかった?」
「裏道の独特のすえた匂いが印象的で特に気にしてなかったわ」
「そっか。あたしは逆に居心地いいからすぐに分かったわ」
「よし、じゃあ僕が交渉してくるよ」
悪代官のような笑みを引っ提げ、薫が発進した。
数分後、屋台の店主が泣き叫びながらホクホク顔の薫が帰ってくる。またこいつ値切ってきたな?
アリエルが恐ろしいものから身を隠すように杜若さんの背中に隠れているのが印象的だ。
「で、何があった?」
「取り敢えず渡すね。持ちきれないからガチャに突っ込んでいいよ」
「オッケー」
両手に抱えてる薫の腕から商品を片っぱしからガチャに投入していく。
そこで判明した情報を委員長が片っ端からメモに書き留めていく。いつもの光景だ。
「えーと、リンゴ、オレンジ、桃、スモモ、ライチ、バナナがグレープのソースで和えてある物を小麦の生地を薄く焼いた物に巻いてあるらしいぞ」
「クレープみたいな物かしら?」
「酸味と甘味が一緒くたになっているのが気になりますわ」
「でもこの国の味覚だよ? 僕は雄介のガチャで加工した方が伸び代があると思うな」
「「意義なし」」
薫の意見にクラスメイトの女子二人が同意する。
「アリエルはどう思う?」
「あたしも参加していいの?」
「そりゃもちろん。見つけたのはアリエルだぜ? な、みんな」
俺の問いかけに薫も委員長も杜若さんも頷いて見せた。
じゃあ、と言い出しかけたアリエルは少し溜めてからお決まりの一言を添える。
「ソフトクリームのいろんな味が食べたいの。その、今回手に入った果実は少量でしょ? 新しく料理を作るほどはないと思うから……ダメかしら?」
恐る恐る、自分の要望を伝えるアリエル。
俺たちはそれでも大丈夫だと伝えると満面の笑みを浮かべた。
そして味覚検証会。
「グレープソースのソフトクリームはカップアイスを思い出すわね」
「それ僕も思った」
「カップアイスって何?」
「お、アリエルはカップアイス初めてか」
出せそうなら出す。それが俺にできるみんなへの唯一の恩返しである。多分コレだろうと念じたら、手元に出る相変わらずの謎仕様だ。
それを手渡し、蓋を剥がして木のスプーンで掬って食べるアリエルを俺たちは微笑ましく見守った。
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