クラス転移で手に入れた『天性』がガチャだった件～落ちこぼれな俺がみんなまとめて最強にします～

一章

限定ＳＳ 食べ歩き（補欠四人組ver.）

　ドラゴン討伐を祝してグルストンは国をあげてパレードを行った。

　たいした資金もかけずに行われたので城下町は普段とそう変わらない賑わい。
　なんせ出店のレパートリーが変わらないのだ。

　街を多少カラフルに盛り付けたところで、メニューに劇的な変化が無ければ楽しみは半減。

　留守番をさせてるアリエルへの土産も当然俺のスキルから出るソフトクリームに収まる訳だ。

　それじゃあせっかく街まで来たのに意味がなくなってしまう。

　何かいい案がないか四人で顔を突き合わせて討論した結果、じゃあ新メニューを自分たちで作って売ればいいじゃないかと言うことになった。

　最悪商品は俺のガチャから出るけど、街で売ってたという言い訳も立つ。

　では何がパレードに相応しいかを考えると、意外と出てこない。

「りんご飴とかどうかしら？　アポーもあるし砂糖もあるわ」
「それをいったいいくらで売るつもりだよ。砂糖はこの国じゃ貴重品だろ？　俺達用の甘味を低価格帯で売り捌いたらクラスの連中キレ散らかすぞ？　もっと定番のメニューとかで良いんだよ、焼きそばとかさ」
「そもそも麺類のメニューがこの国にはないわよ？　パンはあるのに不思議な食文化よね」

　委員長が訳知り顔で説明する。
　確かにおかしな文明だ。まるで後から記憶消去をされたような不自然さを感じる。

「パンと言っても黒パンね。保存食としての意味合いで美味しさは求められてないものよ」
「じゃあホットドッグとかどうだ？」
「腸詰めの技術が無いよ。専用の機械もないし、無理じゃない？」

　薫がまるで諦めろと言わんばかりに追撃した。

「こうやって話し合ってみると案外出ないものね」
「いっそ露店の串焼きにあやかってこちらも同じ串物で勝負してみてはどうでしょうか？」
「串物で？」

　杜若さんのナイスな提案で、取り敢えず串揚げを選択肢に入れる。
　揚げ物はグルストンでもポピュラーなメニューだ。

「問題は具材よね」
「前食べた天ぷらうどんとかはダメなの？」
「だからうどん系は……って、天ぷらを売るって意味か？」
「うん。あれも一応揚げ物でしょ？　衣は小麦でいいし、卵を繋ぎに具材は野菜もキノコ類もＯＫ。オリジナルで出すのに僕たち向きだよ」
「まぁ目新しくはあるな。一応候補に上げとくか」
「ですがそれらはその場で食べる屋台形式ならではのものに限ります。普段街を忙しなく歩く住民が求めてる食べ物とは違う気もしますが？」

　杜若さんの鋭い指摘。
　確かにそうだ。目新しさだけでは食いつきは悪いかもしれない。ただでさえ食べ物商売。その上で俺達はど素人と来た。

「みゆりはフィンガーフード推しなのね」
「個人的に憧れもありますから」
「フィンガーフードって？」
「手掴みで食べれる食べ物の総称。ポテトチップスとか摘んで食べるやつあるじゃない？」
「オッケー把握」

　お金持ちのお嬢様である杜若さんの憧れを叶えてやることになった。
　ちなみに売り出した商品は複数。

　串揚げはそこそこ出たが、それよりも売れたらラッキー程度で出した焼きそばパンが飛ぶように売れたのが驚きだった。
　麺類が定着してないグルストンで異例の焼きそばパンブームの到来だ。

　これはホットドッグも売れるかとワンチャンラインナップに並べたが、よくわからないもの扱いされてそこまで売れなかった。
　食えば美味いのに、非常に残念だ。

　で、アリエルのお土産はというと。

「ドーナツ！　売ってたのね。これを一つ手に入れるのに幾つ犯罪を犯したか思い出せないわ……結局食べられなかったけど、こんな味だったのね」

　食べるまでに一体いくつもの表情を変化させたのやら。
　それほどまでに思い入れのある甘味だったか。

「そりゃ良かったな。並んで買った甲斐があったぜ」
「ありがとう、嬉しいわ」

　結局甘味で手を打った。
　正直アリエルが焼きそばパンや串焼きを頬張るイメージが全然湧かないというのもある。

　ちなみにドーナツを翌日売り出したらやはり飛ぶ様に売れた。
　お陰でビートの消費が激しくてクラスメイトからお小言が飛んだのはまた別の話である。