クラス転移で手に入れた『天性』がガチャだった件~落ちこぼれな俺がみんなまとめて最強にします~

双葉 鳴

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一章

(1)落ちこぼれ四人組

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「雄介、さっさとご飯食べちゃいなさーい」
「今行く!」

 俺、阿久津雄介は父親のいない家庭で育った高校一年生。
 毎日俺を育てるために夜遅くまで頑張ってくれてるかーちゃんに恥じない息子になるため、一端の男になるべく研鑽を積んでいた。

「薫、どうすればビッグな男になれるだろう?」
「まずその前に雄介は具体的な成果を出す方が先だと思うよ? スポーツとか勉強とか。今やれることはいっぱいあると思うけど」
「やべぇ、どれも苦手分野だ」

 中学時代からの親友冴島薫と共に、今日もビッグになるための一日が始まる。

「おはようございます、阿久津さん」
「杜若さん……」

 クラスのマドンナに挨拶をされて二の句が告げなくなってしまう奥手な俺。
 当然高校デビューでも失敗した古傷が今も大胆な行動を制限させた。
 彼女を狙ってる男子は多く、そして女子ウケも悪くないお嬢様。
 そんな彼女に片思いを続けているある日、それは起こった。

 突如小テスト中、教員が教室を去ったタイミングで教室が眩く輝く。
 気がつけば俺たちは異世界に召喚されていた。

 驚き戸惑うクラスメイトには悪いが、俺はこれをチャンスだと思った。
 ここでチートスキルの一つでも芽生えれば、俺は勝ち組になれる。
 そう思っていたのは俺だけじゃなかったらしい。
 普段そこまで自己アピールをしていないオタクの水野が勝手知ったる他人の家とばかりにリーダーシップを取り出した。
 俺たちより深いオタク知識を披露しつつ主導権を取るつもりなんだろう。

 が、世の中そううまくいかない。
 俺もそうだが、水野もまた上位互換の存在する『天性』を授かっていた。

「聞いたかみんな、俺たちはこの世界で右も左も分からない子供だ。だがこの国は俺たちをサポートしてくれるらしい。俺はこの強力に乗ってみても良いと思う。でもその前に、みんなの意見を聞かせてほしい」

 クラスのリーダーに抜擢されたのは一年生にして剣道部のレギュラー入りをした三上泰明だった。
 悔しがる水野に肩ポンしつつ、しかしお前よりはマシだと手を払われる始末。
 そう、俺の手に入れた『天性』はハズレもハズレ。
 ガチャという身近にありながらも効果も使い方も全く不明なものだった。

 前例がない、という意味でも世話してくれる王国から戦力外通告をされる俺。
 しかし、そんな状況でも俺は前向きになれていた。
 と、いうのも。

「これからどうすればいいと思う?」

 戦力外通告をされたのは俺一人ではなかったからだ。
 親友の薫の他に、クラス委員長の錦由乃。
 そしてクラスのマドンナ杜若さんまで抜擢され「あれ?これ勝ち組じゃねぇ?」などと内心思っている。
 
「阿久津さんは何かいい案はありますか?」
「そうだなぁ」

 人から頼られることに慣れてない俺は、水野ほどじゃないにせよオタク知識は一般人に比べたらある方だ。
 そこで俺は右も左も分からないなりに実際に歩いて外の世界を教える係になろうと皆に掛け合った。
 現状サポートと言ったってやれることはタオルとドリンクの受け渡しくらい。
 訓練を頑張ってるクラスメイトに引け目を感じているというのもあった。

 けど、現実は相当に厳しく俺たちにのしかかる。
 授かった『天性』の他に、戦力外を言い渡されることになったのはその低すぎるステータスにもあった。
 実際、王宮から城下町に行くまで徒歩で二時間もかかった。
 これじゃあ城下町を散策する時間もなく蜻蛉返りを余儀なくされる。

 それでも、王宮の外を歩いたという体験はできる。
 何も出来ないからと悲観的になってばかりもいられないと早速街を巡った。
 そこでは想像以上のファンタジーな世界が広がっていた。
 まずは人種の異なる存在。獣の特徴を持つ獣人などが挙げられる。
 大体が冒険者で、他にも果実を売っていたりとさまざまだ。

 そこで俺たちは無一文であることに気付かされる。
 買い物をしようにも、手持ちがなく困り果てることに。
 そこで泣き喚く子供の声がその場一帯に響き渡った。
 その声は雑踏にかき消されるように段々と弱まっていく。
 日常茶飯事なのだろう、皆が見て見ぬ振りをして自分の用事を優先した。

 正直面倒だな、と思った。
 周囲に倣って雑踏に紛れようと考える。
 しかしそれよりも先に、女子グループが子供のそばに駆け寄った。

「雄介、僕たちも行こう」
「あ、ああ」

 薫に促され、気乗りはしなかったがここで見捨てる選択肢はなかった。
 むしろ女子達にいいところを見せるチャンスではないのか?
 泣きじゃくる獣人少女には悪いが、俺はここでリーダーシップを取るべく動き出す。

 しかしこの迷子の救助が俺たちに新たな展望を示した。
 何も出来ないと思われた『天性』は、確かに迷子の少女を救い、そして俺たちに新たな道を示すのだった。

 
 

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