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3章 お爺ちゃんと古代の導き
097.お爺ちゃんと空中戦闘②
しおりを挟むまず最初に先制攻撃を仕掛けてきたのはスネイク型だった。
うねる様に地を這い、突き上げるようにランダさんを狙う。
「おっと。僕がいる前でそんな行為が許されるとでも?」
探偵さんだ。格好つけながらその場に現れ、いいとこ取りしながらこれでもかと周囲からヘイトを取る。
絡めた腕が引き締まる前にまっすぐと突き出された。
それだけでたまらずスネイク型はタタラを踏んで体制を立て直すはめになる。
「済まない、油断してた」
「お構いなく。好きでやったことです」
「あなたは上をお願い」
「承知!」
「ランダさん、お魚ちゃん、残りは私達だけで仕留めるわよ?」
「おう!」
「あれ、僕の呼び名それで固定なんですか?」
「改名したければ活躍しなさい『ウォーターボール』『ウォータースライダー』
「ギョギョギョ、がんばるます!」
◇
なるほど。設置型と言われて合点がいく。
妻の魔法は環境に元素を滞在させ続けることで効果を発揮させるタイプか。そこに飛び乗ったスズキさんが水を得た魚の如く泳ぎ出す。
「さて、こっちも動きましょうかね」
見上げた先にはポッド型。
「現状あの高さに行けるのなんて少年だけでしょう」
「ですねぇ」
「僕は何をすればいいんですか?」
ジキンさんは尻尾をブンブンと振って聞いてくる。鉄の棒を持って真上を見上げている。
「そう言えばジキンさんは野球はお得意でしたでしょうか?」
「こう見えてスラッガーでした」
「決まりですね」
私と探偵さんは頷き合う。
ただ一人、ジキンさんだけが納得いかない顔だった。
「自分たちだけ知って、僕にも教えてくださいよ」
「ジキンさんは飛んできた球を思いっきり振り切るだけでいいんですよ。ね? 探偵さん」
「その通り。僕がキャッチャー。少年がピッチャー、そしてジキンさんがバッター」
「じゃあボールは?」
ジキンさんのもっともな質問に、私と探偵さんは悪い顔をしてポッド型を見つめた。そこに悪い顔をするジキンさんが加わるのも時間の問題だろう。
「なーに、これは遊びですよ。空振りしたって誰も責めません。気軽に行きましょう」
「そう言われると俄然燃えてきますね。この勝負乗りましたよ。いまに吠え面書かせて見ますからね!」
「はいはい。じゃあ先にボール拾ってきますねー」
こんな雰囲気。
奥さんたちに見られたらどんなふうに思われるだろうか?
こんな時にも遊び出して?
それともなんでも遊びにできて羨ましい?
『空歩』に力を込めて体を空に上げて、ようやくポッド型と同じ空域へと至る。
「やあこんにちは。君にはこれから遊戯に付き合ってもらいたいんだ。うん、うん。不安はつきものだろうね。だってここまで至れた人類はいないもの。だからッ」
思いっきり探偵さんに向けて蹴っ飛ばす!
「何かされる前に先手は打たせて貰うよ?」
少し下でストライクのコール音。
ジキンさんの嫌味の声もセットで聞こえてくる。
それはそうだ直角90度で落ちてくるボールを打つ野球のルールはない。
だからこれからはゆっくり角度をつけてボールを受渡して、野球の体裁を取っていく。
バインドでしっかりチェインアタックを維持しつつ、私はその場でくるくるとスピンなんかして、ジキンさんにどんな球種か絞らせない。
そんな私から放たれたのはオーバーヘッドキックだ!
一度深く沈み、回転力で真上に浮き上がる魔球!
「ボークだ。ボーク! やっぱりサッカーと野球を組み合わせるのは無理があったんだ!」
「ジキンさんこそ野球のルールに縛られすぎでは? 最終的にその武器でぶっ叩けばオールOKです。これは野球でもサッカーでもないんだし」
「そういうもんかなぁ?」
「そういうもんですよ。いっそ少年に恨み辛みをぶつけると思ってエネミーを叩いて見たらいかがです?」
「それだ!」
どれですか?
ちょっと永井君余計なこと言わないで。
ジキンさんがいつも以上にやる気出しちゃったじゃないの。
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