【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴

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3章 お爺ちゃんと古代の導き

133.お爺ちゃん達と[三の試練]⑥


 三の試練から帰還した翌日。
 今度は四人であの時諦めた場所を探検しにきていた。
 メンバーは私、ジキンさん、探偵さん、スズキさん。
 女性陣は素材の吟味に夢中である。
 その中でもジキンさんは奥様より直々に今回の素材や新しい素材の入手を厳命されており、探検そっちのけで動き回っていた。

 最初の一本道の周囲に雲はない。
 澄んだ青空の下、雲の道が真っ直ぐに伸びている。
 欲しい素材もなければ、雲を集めても太陽を覆い隠すのも難しいだろう。なので例のT字路までのんびりとスタミナを消費しない程度に歩いた。
 ジキンさんなんかはハイキング気分で、探偵さんだけが検証したそうに私を見る。


「少年、ここで少し検証してもいいかな?」

「急ぐ旅でもないですし、良いですよ」

「よぉし!」


 グッとガッツポーズを取る探偵さん。
 そんなに嬉しい物なのか。
 スズキさんと一緒に微笑ましい視線を送る。
 ジキンさんは物好きですねぇとのんびりと眺めている。
 
 検証は主に太陽の方角だった。
 赤の聖獣の真上に太陽が出ている。その確認と、距離の近さ、影の伸び具合。
 そして風景を撮影しようとシャッターを切る時、だいたいエネミーに遭遇する仕組みも含めて。

 遭遇するエネミーは同じ。
 太陽が隠されてないと『バルーン型/突撃騎兵隊』と『シャドウ型/双剣使い』は固定のようだった。
 いつものように『バルーン』を翻弄すると『シャドウ』は消え去る仕組み。そもそもこんな影の薄い場所でも出張ってくるあたり、根性があるのだろうか?
 エネミーの生態はよくわかってないので、それはそうとして歩く。

 そして相手取ること通算20回目。
 ようやくハイクリティカルが仕事をしてくれた。
 倒すことで情報が現れる仕組みだったか。
 しかしあの時の矢印ではなく、言葉で。


[見えない場所にこそ道はある]


 うん、まあそうだね。
 あの時見えた十字路。
 行きはT字路で帰りが十字路。
 まるで調べてくださいと言わんばかりのものだ。


「お、その何か知ったような顔ぶりは……」

「あの顔は自分だけ情報を得て浮かれてる顔ですね。覚えがあります」

「ですねー。きっと聞かなきゃ教えてもらえないやつです」


 三人がかりで私を睨め付ける。
 はいはい教えますよ。
 教えますから慌てないでくださいよ。
 普段は情報を纏めてから提示しろとうるさい癖に、断片を拾っただけでこれだもの。
 仕方ないかと断片情報を開示。というか口頭で伝達します。


「単純にさっきの戦闘フィールド内の情報が抜けただけです」

「だけっていうあたりがハヤテさんらしいですよね。普通もっと喜びません?」

「まぁ彼の場合は過去の特ダネと比較しますから。だから僕たちの知りたい情報でも路傍の石コロ程度の雑さで扱うんです」

「はっはっは。言われてるよ、少年?」


 ジキンさんを筆頭に顎に手を添えて私を詰ること詰ること。
 はいはい。私が悪うございました。
 でもみんなは私に情報開示してくれたことないよね?
 私がなんでも知ってる物知りだと思ったら大間違いだよ?
 まぁ出したところでジキンさんの言うように過去の出来事と比べてしまうのは身に覚えがありすぎたので深く反省しておく。
 その上で述べた情報を全員で精査した。


「また意味深なワードだね?」

「あの帰りの十字路とかもろ怪しいですよね?」

「あの時は右じゃなく左に行ったんだよね?」

「太陽の位置とか確認してましたのでそこら辺を皮切りに検証していきましょう」

「あ、帰りに素材拾って帰らなきゃ奥さんに怒られるのでそこの配慮もお願いしますね?」

「はいはい。奥の方は調べて無かったのでそっちの確認の際調べますよ。採取はその時でも良いのでは?」

「助かります」


 ジキンさんから真っ直ぐな感謝の言葉が出たのって久しぶりだなぁ。思えば私は彼と罵り合ってた記憶がない。
 まぁそれくらい相手を大事に思っているのだろう。
 そんな感情が瞳の奥から伝わってくるようだった。


 私達はT字路に差し掛かり、何もない青空にダイブした。






 ──落ちる、落ちる、落ちる。






 雲の道を真上に置き去りにし、ようやく全員が理解する。
 『あの意味深なワード、完全にひっかけじゃないか!』と。

 今から風操作で戻るにも、勢いがつきすぎていた。
 ただ落ちているだけではない。
 真上から下に押し流されていると感じた時はもう遅かった。

 大地が少しずつ輪郭を帯びて形になっていく。
 遠く離れていた山々を抜けていき、私達はなんとか岩山に衝突しないようにと街に近しい場所に降りた。

 真上から降り立った私達に奇異の視線が向けられる。
 プレイヤーかNPCかはわからないが、全員がプレイヤーメイドの特注品を身に纏っているように見えた。

 要するにだ。
 ここは私達の知識のない街だということになる。


 あれー? ここどこー?
 知り合いすらいない場所で、私達四人は本格的に迷子になっていた。




 
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