【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴

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4章 お爺ちゃんと生配信

297.お爺ちゃんと古代獣討伐スレ民_6

「まずは祠の探索からだね。どれくらい進行してるの?」


 私の質問に答えてくれたのは、リーダーのモロゾフ氏。


「生憎と情報らしい情報は今の所出てきてくれてないんだ。今回の依頼は討伐の他にヒント発掘の手腕もアテにしている。と、いうかそっちがメインだ。アキカゼさんとこの娘さんが討伐できるという証明を見せてくれたからな。だから倒す手立てはどこかにある。問題はその何処かだが、さっぱり見当がつかないんだ」

「ふむ、敗北が条件ではないと?」

「ヤマタノオロチとは根本から違うみたいなんすよね。うちはメンバーが全員陣営入りを果たしてる上に上手いこと三陣営に分かれてるんで言語情報そのものは理解できてるんす。けど謎らしき謎が全く見つからずに困り果ててるんすわ。絶対に何かありそうなんすけどね」

「ナビゲートフェアリーのバージョンは?」

「リーダーと俺が最高ランクっす。後は一段階づつわざと落として使ってるっす。配信見てたんで、あんな風になるの知ってて全員には持たせられないなって思ってたんで」

「成る程ね、状況はわかった」


 モロゾフ氏から答えを引き継いだチキンタルタル氏によって、彼らの現状はなんとか理解できた。
 彼らは彼らで解決策を今も模索中だという。
 負けるにはどうだって良い、と言うが勝ちたいからこうも挑戦回数を重ねているのだろう。
 最初のうちは戦闘パターンを見守り、その上で何か発見が無いかを模索してみようか。


 今回は6人のフルパーティに私とスズキさんが入る形になる。
 パーティではなくレイド戦のメンバー振り分けは一度に30人まで同時に挑戦権が得られる。それをたった六人で攻略しようとするのだから誰かに無理がかかるのも納得というものだ。

 え? 古代獣は全てレイド戦仕様だって?
 それをソロで討伐配信した人がいるから少数精鋭で討伐する人が流行ってる?
 誰のことを言ってるかわからないけど、そんな人のプレイングなんて参考にしても意味がないと思うんだけどね。


 さて、今回のメンツは全員が陣営入りを果たしているジョブ持ちだ。内訳はこんな感じ。
 スズキさんは既にジョブを持ってるので陣営入りを果たしたところでジョブにつけないのだとか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<構成> <ネーム>   <種族>   <ジョブ>
リーダー モロゾフ    半ビースト  精霊使い
メンバー チキンタルタル ビースト   テイマー
メンバー 塩だいふく   ヒューマン  テレポーター
メンバー ブリ照り    エルフ    ブラスター
メンバー ◇鴨南蛮◇   ヒューマン  ブラスター
メンバー れーめん    ヒューマン  クリエイター

助っ人 アキカゼ・ハヤテ ヒューマン  テイマー/ライダー
助っ人  スズキ     サハギン   ルルイエ異本の幻影
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 こうやってみるとヒューマンが多いね。
 ちなみにスズキさんのジョブ情報は私だからそう見えるだけで、普通の人には『なし』に見えるらしいよ?

 そういう仕掛けだって彼女が言ってた。
 孫たちを騙したように、周囲に常に認識阻害を振り掛けてるようだ。

 今更取り繕ったところで誰も君を魔導書の幻影だなんて思いもしないだろうから余計なお世話だと思うけどね。

 それともカメラの前に表を出せない理由でもあるんだろうか?
 もしそうならセラエ君はなぜ私にオファーを出したのだろうか?
 アンブロシウス氏をそれほど手玉に取っていた?
 チラリとスズキさんを見る。気が付いたのか私の方を見上げながら尋ねてきた。


「なんですか?」

『君たちの存在は何か公にできない秘密があるのかなーって』

『あー、魔導書の幻影かどうかって話ですか。そうですね、本当は他者にホイホイ見せるものではないのは確かです。でも今更じゃないですか?』


 アイドルデビューしてしまいましたし、と彼女は続ける。
 彼女の葛藤はそれはもうすごいものだった。
 その背中を押したのは他ならぬ私で……


『それよりもハヤテさん、あの人』


 スズキさんがゲストの一人であるエルフのブリ照り氏を指差す。
 人に指差ししたらダメじゃない。
 それとなく叱りつけてやると、そうじゃなくてと言葉が続けられて、最後に腰に巻かれた特徴的なベルトを指した。

 あー、うん。つまりは彼女も次のイベントのお仲間であるということだろうね。

 それにしても……食べ物の名前が多いねこのパーティ。
 まるでその括りで募集したような巡り合わせである。
 それはさておき、


「少しいいかな?」

「はい、なんでしょうか?」

「そのベルトについて、どれくらいの知識があるのかなと思って」

「うーん、ある程度はありますよ。でも今はそれについて語り合う場ではないのでご遠慮します。お互いの仕事をしようじゃありませんか」


 そりゃごもっともで。
 ブリ照り氏にすげなくかわされ、私は肩をすくめた。

 スズキさん曰く、ベルトはあくまで参加の抽選券でしかないそうだ。
 ライダーフォームにはなれるものの、神格をインストールするのには最低でも三枚以上の断片が必要だと言う。
 つまりはその神格を降ろせるかどうかは早い者勝ちの椅子取りゲームから始まるらしい。
 先に三枚集めた人が幻影を手に入れ、それ以外の人がベルトを消失してしまうらしい。要は二枚まで集めたけど、他の誰かに三枚集められてしまうとベルトが消えるんだって。

 そういう意味では私は強制参加間違いなしだ。
 なんせルルイエ異本の幻影であるスズキさんがもう居るしね。

 ほんと、私は戦闘なんてどうでも良いのにどうしてこういうのに巻き込まれてしまうんだろうか?
 そういうのは他所でやってほしいよ、全く。


『じゃあベルト巻いてるからって危険視しなくて良いんだね』

『はい。現状はセラエちゃんが一番敵に回すとやばいです』

『だろうね、アンブロシウス氏もあれで中々やり手だ。私のツテで運良く断片が手に入ったが、一体幾つ仕入れているのかさっぱりわからない』

『少なく見積もっても、多分五枚ぐらいですね』

『それは随分とリードされてるなぁ』
 
『そこまで急ぐものでもないし、僕も無駄に焦るのはやめました』

『なら良いんだけど』


 そんな風に変話で盛り上がる私達に向けてモロゾフ氏がこっちだ、と手を振った。

 既にその入り口付近には通い慣れた道としてメンバーが揃っている。
 何かのお墓らしいものが左右にあり、門の手前に人間の顔に獣の四肢を持つ石像が並んでいた。

 私は入念にその石像をスクリーンショットに映し、モロゾフ氏に向き直る。


「この石像はなんでしょう?」

「ああ、これはテュポーンが生み出すモンスターだな。いくつか見たことある」

「生み出す順番とかはあるのでしょうか?」

「いや、ランダムと思うぞ? 何回か戦ってるが、全くもって同じモンスターを産まないんだ」

「ふむ」

「そして産んだモンスターを駒として操ってくる」

「使役する感じでしょうか?」

「テイマーの使役とは系統が異なるな。あいつの産んだモンスターはあいつの肉体の一部なんだ。倒せば当然耐久を減らせる」

「つまり本体そのものよりわざと子供を産ませて、それを叩く方向で?」

「それが目に見えて耐久の減りは早いな」

「しかしそれ以外の攻撃手段も欲しいと?」

「その通りだ。あいつは耐久が一時的に減ると出産せずに殻に閉じこもったまま微動だにしなくなるんだ。ブラスターで直接体内を攻撃しても無駄で、俺的には手順を間違えたとしか思えない」

「でもうちの娘は倒せてた」


 モロゾフ氏は無言で頷いた。


「もしかしたら子供を倒すのに順番があるとか?」

「順番?」

「そうだよ、順番だ。その順番を無視して生まれた先から倒していくから詰んだとも考えられるよね?」

「そうは言うが、子供の方が厄介だぞ? 物理反射に魔法反射。はたまたレーザー無効まで備えている」

「そんなもの、ヤマタノオロチだってそうだったよ? 最終的に首を11本はやして無差別攻撃してくる。そんなヤマタノオロチの次にいるこのモンスターがそんな単純なギミックを持っているとは思えない。ところでチキンタルタル氏」

「何すか?」

「もし手に入れられるのなら、ここの古代獣欲しい?」

「あー、どうっすかね。枠の問題もあるんで」

「成る程、討伐できなくても最悪テイムできる可能性もあるのか」


 チキンタルタル氏は心底迷惑だと表情で訴えていたが、モロゾフ氏の方が先にこちらの思惑に気がついたようだ。
 因みに私は別にいらないのでテイムするつもりはこれっぽっちもない。


「でもテイムすると討伐報酬無いっすよね? うちら一応クリアを目的としてるんで。寄せ集めでクリア出来たら凄くね? がパーティの参加条件す」

「まぁテイムは最後の手段だね。ダメ元ダメ元。そもそもヤマタノオロチでさえあれだったのだから、その上がそう簡単にテイムさせてくれるわけがない」

「まぁ、そう考えれば試すのもありっすけど」


 よし、上手いこと思考誘導に成功したぞ。


「だがどれが最初かわからないことにはどうしようもないぞ?」


 私がしめしめと悪巧みをしていると、モロゾフ氏が正論を述べた。そんな時だ。


「ハヤテさん、この石像動かせるみたいです」


 スズキさんが大通りから石像の置かれてる場所に入って押したり引いたりしていた。もしそれが何かを祀るものだったら罰当たりも良いところだが、彼女自体が神格を封じ込めた器だからか怖いものなんて何もないらしい。


「ナイスです、スズキさん。つまりこれは動かすことで何かのギミックが発動するとかでしょうね」

「少し待ってくれ。そこの魚の人が石像を動かした瞬間、周囲に音の気配がざわめいた」

「音?」

「俺は数少ない精霊使いでな、地下の試練では音を9段階まで契ってるんだ。だから音の精霊がここに呼べるかもしれねぇ」

「成る程。手がかりが掴めたのなら何よりです」

【精霊使いってどざえもんさん以外にいたんだ?】
【情報出してくれるのがどざえもんさんしかいないだけだぞ? 普通にいるだろ】
【未だにスタンピードが圧倒的多数なんよな】
【くまー?】
【呼んでない帰れ】
【グラップラーも強いっちゃ強いがピーキー過ぎてな】
【あんまり活躍できなかったくまー】


「よし、精霊が導いてくれる。こっちだ」


 着いてこい、モロゾフ氏が手招きしながらメンバーを集めている。


「何が出てくるんでしょうか?」

「ワクワクしますね」


 そんな彼らについて行き、私達はムー言語が並ぶ壁画の間へと案内されていた。
 残念なことに壁画はいくつかのピースが欠けており、何を示しているかもわからない。


 ムー言語は[正しき形に戻せ]と書かれている。
 そしてスズキさんがもう一度ファインプレー。


「これ、パズルじゃないでしょうか? ほら、このパーツ外せます。これをこうやって違うところにはめるとかじゃないですか?」

「パズルか、苦手分野が来たな」

「私も得意とは言い難いですね。じゃあここでスクリーンショットに収めて視聴者に宿題として出しておきましょうかね」

【おい】
【面倒ごとを丸投げすんな】

「酷いね。私は少しでも視聴者を盛り上げようと企画したのに、そんなこと言うんだ?」

【草】
【自分で苦手とか言っておきながら、ああ言えばこう言う人だ】
【だが面白そうだ】
【カネミツー、お前んとこのマスターが無茶振りしてくるー】
【平常運転だな。答えのない検証より随分と楽だと思うぞ。あとで目を通しとくくらいはするさ】

「あ、サブマスターに業務連絡です。あなたこう言うの得意でしょ、私の代わりにやっといて下さい」

【嫌ですよ。何でもかんでもこっちに丸投げしないでください】
【即レスする辺り見てるんだなぁ】
【身内からのフォローを巧みに使う配信者がいるらしい】

「さて、難しいパズルは一度外部に投げて挑戦しに行こうか?」

「ほとんど何もわかってないようなものだぞ?」

「大丈夫ですよ、全くわからない状態から手がかりが見つかった状態に一歩前進したのは間違い無いんですから」

「そりゃそうだけどさ」

「ハヤテさんはいつもこんな感じなんで、諦めた方が良さげ」

「あんたんとこのクランメンバーにだけはなりたくないな」

「サブマスターからよく言われます。ついて行く人間違えたってね」


 モロゾフ氏は肩を竦め、吐き捨てるように私に言う。
 私は惚けながら身内の反応を語る。

 私だって別に人の上に立ちたかったわけじゃないんですけどね。名前を貸しただけなのに、いつの間にか面倒ごとばかり転がり込むようになってた。私は被害者だと訴えても世間はそうは思ってくれない。
 だから開き直っているだけだと言うのに、相変わらず周囲からの反応は冷え切っているんだから私にはどうしようもないよ。
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