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火と月
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ココは、何も知らなかった。
もちろん、月の国から使者団が来ることは知っていた。
しかし、その中にココが"セリニ兄様"と慕ったていたハルシオンが来ているなどとは、全く知らなかったのだ。
それは、ただただ偶然だった。
ココの仕事は、夕方前から始まる。
この日は、月の国の使者団を労うための食事会が開かれていた。
王太子であるカイルも、もちろん参加している為、どう考えても戻りが遅いだろうと想定したココは同じ王太子宮のメイドに声をかけ、他の仕事の手伝いに回っていた。
「じゃぁ、悪いんだけどコレ洗って来てくれない!?」
「はい、かしこまりました」
「人手が向こうに取られてたから助かるわ!ありがとうね!」
「いえいえ。忙しい時はお互い様です」
そう言って、ココは洗い物が溜まったカゴを持って裏口から洗い場へと向かった。
王太子宮から一番近い洗い場へ行くには、庭園の側を横切って行くのが近道だった。
食事会は既に始まっており、有難いことに食事会場の場所は庭園側と正反対の場所にある。
要するに…庭園側を横切れるのだ!
ココは、ラッキー♪と鼻歌混じりに庭園方向に歩き出した。
そして、いざ横切ろうとした瞬間…
とても懐かしい声が聞こえた気がして、思わず振り返る。
ココが振り返った先には、庭園に向かって歩いてくる2人の人物がいた。
1人は、ココのよく知る人物…カイル。
そして、もう1人…
「…セリニ兄様」
その姿を見た瞬間、思わず口から出てしまった愛称に、カイルと話をしていた彼は反射的にココを捉えた。
そして、その美しい顔は大きく目を見開くと驚いた様にココに向かって駆け出した。
「セリーナ!!!」
そう、叫びながら。
今にも、泣き崩れそうな表情でハルシオンはセリーナの元へ走った。
セリーナ!セリーナ!セリーナ!
メイド服に身を包み、金色の瞳を茶色に変えたセリーナを前にしたハルシオンは、確かめる様に探し続けていた大切な妹の名を呼んだ。
「…セリーナ」
そして、返事が来る前に彼女を抱きしめた。
返事など、待つ必要が無かった。
彼女の瞳が、全てを物語っていた。
誰でもない『自分がセリーナだ』と。
ハルシオンの呼びかけに、セリーナはその見慣れない瞳にめいいっぱいの涙を溜めていた。
今にも、こぼれ落ちそうな瞳は、色が違っていようとも間違いなくセリーナの瞳だった。
声にならないまま、ハルシオンはセリーナをぎゅっ…と抱きしめた。
しっかりと、安心させる様に…
やっと会えた喜びを表すかの様に…
ぎゅーっと抱きしめ続けるハルシオンの背に、そっと答えるかの様にセリーナの手が添えられた。
その瞬間、ハルシオンは歓喜の声を上げた。
「___っ!!!
セリーナ!セリーナ!セリーナ!」
やっと、見つけた!
やっと、会えた!
やっと、やっと、やっと…
お前との約束を果たせる!
もちろん、月の国から使者団が来ることは知っていた。
しかし、その中にココが"セリニ兄様"と慕ったていたハルシオンが来ているなどとは、全く知らなかったのだ。
それは、ただただ偶然だった。
ココの仕事は、夕方前から始まる。
この日は、月の国の使者団を労うための食事会が開かれていた。
王太子であるカイルも、もちろん参加している為、どう考えても戻りが遅いだろうと想定したココは同じ王太子宮のメイドに声をかけ、他の仕事の手伝いに回っていた。
「じゃぁ、悪いんだけどコレ洗って来てくれない!?」
「はい、かしこまりました」
「人手が向こうに取られてたから助かるわ!ありがとうね!」
「いえいえ。忙しい時はお互い様です」
そう言って、ココは洗い物が溜まったカゴを持って裏口から洗い場へと向かった。
王太子宮から一番近い洗い場へ行くには、庭園の側を横切って行くのが近道だった。
食事会は既に始まっており、有難いことに食事会場の場所は庭園側と正反対の場所にある。
要するに…庭園側を横切れるのだ!
ココは、ラッキー♪と鼻歌混じりに庭園方向に歩き出した。
そして、いざ横切ろうとした瞬間…
とても懐かしい声が聞こえた気がして、思わず振り返る。
ココが振り返った先には、庭園に向かって歩いてくる2人の人物がいた。
1人は、ココのよく知る人物…カイル。
そして、もう1人…
「…セリニ兄様」
その姿を見た瞬間、思わず口から出てしまった愛称に、カイルと話をしていた彼は反射的にココを捉えた。
そして、その美しい顔は大きく目を見開くと驚いた様にココに向かって駆け出した。
「セリーナ!!!」
そう、叫びながら。
今にも、泣き崩れそうな表情でハルシオンはセリーナの元へ走った。
セリーナ!セリーナ!セリーナ!
メイド服に身を包み、金色の瞳を茶色に変えたセリーナを前にしたハルシオンは、確かめる様に探し続けていた大切な妹の名を呼んだ。
「…セリーナ」
そして、返事が来る前に彼女を抱きしめた。
返事など、待つ必要が無かった。
彼女の瞳が、全てを物語っていた。
誰でもない『自分がセリーナだ』と。
ハルシオンの呼びかけに、セリーナはその見慣れない瞳にめいいっぱいの涙を溜めていた。
今にも、こぼれ落ちそうな瞳は、色が違っていようとも間違いなくセリーナの瞳だった。
声にならないまま、ハルシオンはセリーナをぎゅっ…と抱きしめた。
しっかりと、安心させる様に…
やっと会えた喜びを表すかの様に…
ぎゅーっと抱きしめ続けるハルシオンの背に、そっと答えるかの様にセリーナの手が添えられた。
その瞬間、ハルシオンは歓喜の声を上げた。
「___っ!!!
セリーナ!セリーナ!セリーナ!」
やっと、見つけた!
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やっと、やっと、やっと…
お前との約束を果たせる!
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