48 / 91
48.絶望
しおりを挟む
ガッシャーーーン!!!
レオンハルトの執務室にて、何が割れたような大きな音が響いた。
「レオン!落ち着け!」
まるで苛立ちをぶつけるかの様に、机の上の書類をぶち撒けるレオンハルト。
側近であるアレクシスが止めに入るも、レオンハルトの怒りは鎮まることがなかった。
怒り狂うその手には、一通の書状が握られていた。
「何を…何を、落ち着けばいいんだ?
こんな事!っ!
落ち着けるわけがないだろうっ!!!!」
「何故だっ!なぜ…っ」と、美しい顔を悲痛に歪めながら机に拳を打ち続け頭を抱えるレオンハルト。
そんな彼を、どう慰めればいいのか…
側近であり、幼馴染で友であるアレクシスも答えが見つからなかった。
彼が、握りしめている書状。
それには、こう書かれていた。
《王命により、第二王子レオンハルトとヒース侯爵家長女シェリナスの婚約を命ずる》と。
アリスティアを妻にする為に、必死になって周囲に働きかけていたレオンハルトには酷すぎる内容だった。
アリスティアに婚約者が現れない様手を尽くして来たにも関わらず、レオンハルトの婚約が先に成立してしまったのだから…
次第にレオンハルトの嘆き声は、何故だと納得できないとするものから、最愛の相手を求める声に変わっていった。
「ティア…ティア…___っ!」
泣き叫べるはずもなく、ただただ悔しそうに妹の名を呼び続ける友を前に、アレクシスも悔しそうに顔を顰めた。
相思相愛なはずの二人が、この一枚の紙切れによって永遠に結ばれる事なく引き離されることになったのだから…
アリスティアの婚約はあくまで打診だった。
決定事項ではないからこそ、レオンハルトが決定を覆すことを期待していた。
陛下や王妃、議会にも必死に働きかけ、何とか王位継承権を放棄してでも覆せないかと動いている姿を見ていたからこそ、アレクシスは心からレオンハルトとアリスティアが一緒になる事を望んでいたし応援していた。
それが、ここにきて王命だなんて…
"王命"それだけは、何人たりとも覆すことが出来ないものだ。
異議を唱えれば、それだけで反逆者として捕らえられてしまうだろう。
恐らく、レオンハルトの余りにも必死な働きがけを察して陛下は動いたのだろう。
このまま、婚約者に関する事項が覆されなければ、レオンハルトは王位継承権を放棄して王族から籍を抜く覚悟があるだろう、と予測ができたからこそ、陛下は先に阻止したのだ。
アレクシスは、希望が打ち砕かれボロボロになっているレオンハルトを横目に小さく呟き目を伏せた。
「力になれずに、すまない…
レオン、ティア…」
レオンハルトの執務室にて、何が割れたような大きな音が響いた。
「レオン!落ち着け!」
まるで苛立ちをぶつけるかの様に、机の上の書類をぶち撒けるレオンハルト。
側近であるアレクシスが止めに入るも、レオンハルトの怒りは鎮まることがなかった。
怒り狂うその手には、一通の書状が握られていた。
「何を…何を、落ち着けばいいんだ?
こんな事!っ!
落ち着けるわけがないだろうっ!!!!」
「何故だっ!なぜ…っ」と、美しい顔を悲痛に歪めながら机に拳を打ち続け頭を抱えるレオンハルト。
そんな彼を、どう慰めればいいのか…
側近であり、幼馴染で友であるアレクシスも答えが見つからなかった。
彼が、握りしめている書状。
それには、こう書かれていた。
《王命により、第二王子レオンハルトとヒース侯爵家長女シェリナスの婚約を命ずる》と。
アリスティアを妻にする為に、必死になって周囲に働きかけていたレオンハルトには酷すぎる内容だった。
アリスティアに婚約者が現れない様手を尽くして来たにも関わらず、レオンハルトの婚約が先に成立してしまったのだから…
次第にレオンハルトの嘆き声は、何故だと納得できないとするものから、最愛の相手を求める声に変わっていった。
「ティア…ティア…___っ!」
泣き叫べるはずもなく、ただただ悔しそうに妹の名を呼び続ける友を前に、アレクシスも悔しそうに顔を顰めた。
相思相愛なはずの二人が、この一枚の紙切れによって永遠に結ばれる事なく引き離されることになったのだから…
アリスティアの婚約はあくまで打診だった。
決定事項ではないからこそ、レオンハルトが決定を覆すことを期待していた。
陛下や王妃、議会にも必死に働きかけ、何とか王位継承権を放棄してでも覆せないかと動いている姿を見ていたからこそ、アレクシスは心からレオンハルトとアリスティアが一緒になる事を望んでいたし応援していた。
それが、ここにきて王命だなんて…
"王命"それだけは、何人たりとも覆すことが出来ないものだ。
異議を唱えれば、それだけで反逆者として捕らえられてしまうだろう。
恐らく、レオンハルトの余りにも必死な働きがけを察して陛下は動いたのだろう。
このまま、婚約者に関する事項が覆されなければ、レオンハルトは王位継承権を放棄して王族から籍を抜く覚悟があるだろう、と予測ができたからこそ、陛下は先に阻止したのだ。
アレクシスは、希望が打ち砕かれボロボロになっているレオンハルトを横目に小さく呟き目を伏せた。
「力になれずに、すまない…
レオン、ティア…」
3
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
傲慢な伯爵は追い出した妻に愛を乞う
ノルジャン
恋愛
「堕ろせ。子どもはまた出来る」夫ランドルフに不貞を疑われたジュリア。誤解を解こうとランドルフを追いかけたところ、階段から転げ落ちてしまった。流産したと勘違いしたランドルフは「よかったじゃないか」と言い放った。ショックを受けたジュリアは、ランドルフの子どもを身籠ったまま彼の元を去ることに。昔お世話になった学校の先生、ケビンの元を訪ね、彼の支えの下で無事に子どもが生まれた。だがそんな中、夫ランドルフが現れて――?
エブリスタ、ムーンライトノベルズにて投稿したものを加筆改稿しております。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる