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内務相リジーの休日
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アンゴラス 帝国 帝都キャルツ 円形闘技場
帝国の歴史と威厳を感じさせる巨大な円形の建造物。今より500年以上も昔に建造されたとも言われる29800人を収容可能な帝国有数の闘技場である。闘技場の中央では、13人の男が剣を持って巨人と対峙している。
「お父様、ありがとう!オーガと野蛮人の戦いやるって聞いてから、ずっと気になってたんだ!すごく人気で取れないって噂だったけど、さすがお父様!」長く透き通るかのように綺麗な白い髪を持つ、愛らしい少女が言う。
「なんてことないよ、アリシア。」アンゴラス帝国、内務相のリジーは答える。本当は使えるコネを総動員して、苦労の末に手に入れたのだが少し見栄を張る。
「野蛮人同士の戦いなんてつまんない。やっぱり相手は魔法生物でなくちゃ。」イチゴ味のアイスを長い舌で舐めながらアリシアは言う。
「まぁ、魔道生物を繁殖させるのは難しいらしいし、捕まえるのも大変だろうから…」リジーの言葉は娘に届かない。
「キャーー!一人潰れたー!行け行けー♪」アリシアは、笑顔でオーガを応援する。他の観客も似たようなものだ。
「アイスが溶けてきてるぞ、アリシア。」
「まぁ、いけない。」アリシアはコーンから漏れたアイスを舐める。その瞬間、会場は歓声に包まれる。オーガが2人目をこん棒で潰したのだ。オーガの周りには、血痕と肉片が散乱している。
「ああーーー!見逃したーー!お父様のせいだ。お父様のせいだ。うわぁーーん!」アリシアはリジーをポカポカと叩く。
「ごめんね、アリシア。ちょっと痛い、痛い、本当に痛い。止めて、止めて。帰りにマースローズのフルーツタルト買ってあげるから機嫌なおして。ねっ!」リジーは娘に懇願する。
「……許す。」アリシアは頬を膨らませながら言う。
「わぁ♪また一人潰れたよ。」オーガは男の死体を何度も何度も巨大な足で踏みつける。
「きゃはははは♪血がたっくさん。すごいすごい♪」ついに男は原型をとどめないほど、ぐちゃぐちゃになる。
「お飲み物いかがですか?」売り子がリジーに声を掛ける。
「ココアとブラックコーヒーを一つずつ。」
「私もブラックコーヒー飲む♪」アリシアが言う。
「アリシア、ブラックコーヒーは苦いんだよ。ココアにしておきなさい。」リジーがアリシアを窘めるも。
「アリシアはもう大人だもん。大人のレディーだもん。ブラックコーヒーのめるもん。」アリシアはまた頬を膨らませる。
「ブラックコーヒー1つ追加で。」売り子は半笑いしながら飲み物を渡す。少し意地悪な気持ちが芽生えてきた。彼女が私の立場を知ったらどうなるだろう。また、会場に歓声が響き渡り目を戻す。オーガが男の頭と胴体を切り離したところだった。
----------------------
試合はオーガの勝利で終わり、闘技場からたくさんの人が吐き出され、帰路につく。
「アリシア、勉強はちゃんとしてるか?」
「そんなことよりフルーツタルト食べたい♪」アリシアはリジーの手を引っ張りながら言う。
こう見えてもアリシアは、この国最高の魔道学校であるキャルツ魔道学校に在籍している。教師によると、授業態度にやや問題はあるが成績は良好らしい。将来は国の要職に就くことだろう。本人は植民地制圧軍に入りたいと言っているが、それは止めてほしいと思う。キャルツ魔道大学を主席で卒業し、制圧軍に入った物好きも居たようだが今は左遷されているようだ。娘にそうなっては欲しくない。ただ、アリシアの気持ちが分からないではない。
リジーには妻がいない。リジーの妻、つまりアリシアの母は野蛮人に殺されたのだ。彼女は偶然、とある屋敷から脱走した奴隷の野蛮人を目撃してしまったのだ。木の棒で顔面を何度も殴り付けられ最初は誰か分からなかったが、服装や持ち物から嫁だと判明した。以来、アリシアは野蛮人を憎んでいる。誰よりも強く。
-----------------------
約束通りフルーツタルト(に加えてクッキーとアップルパイも買わされた。)を買い、ようやく家に着いた。灰色の煉瓦でできた瀟洒な洋館だ。
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様。」メイド服を着た奴隷が一礼しながら震えた声を捻り出す。
「てりゃー♪」アリシアは熱の帯びた杖を奴隷へと押し付ける。
「ヒッ!ギァーー!お止めください、アリシア様!申し訳ございません!お許しください。」奴隷はひれ伏し、懇願する。
「どうしよっかな♪」考える振りをするが、答えはもう既に出ている。
「やっぱりダメ♪」再び杖を押し付ける。肉の焦げる匂いが周囲を満たす。
「イャーーー」
「ご主人様、ご留守の間に魔信がございました。」家令のエーブラハムが言う。どこの家でも気品を保持するため家令、執事、そしてコックは奴隷は使わない。
「内務省官房室のバーナード様より、至急王城へ顔を出してほしいとのことです。」
「分かった。すぐに向かうと返信してくれ。」
「お父様、一緒にタルト食べれないの?」アリシアは涙を目に浮かべ悲しそうな表情でリジーを見つめる。足元にはぐったり動かなくなった奴隷が倒れている。
「ごめんよ、アリシア。急な仕事が入ったんだ。」
「すぐに帰ってきてね。帰ってくるまで寝ないんだから。」アリシアは頬を膨らませ言う。
「明日も学校だろ、早く寝なきゃ…」
「寝ない、寝ない、絶対寝ない!」駄々をこねるアリシアだが、いつも眠気に負け、ぐっすりと眠ることを家令のエーブラハムより聞いている。
「悪いねアリシア、行ってくるね。」リジーは王城へ向かう。
「うわーん。お父様、行かないでー!」アリシアはとうとう泣き出し始めてしまった。
「お嬢様、わがまま言ってはなりませんよ。お嬢様の大好きな竜騎士と山賊をお読み聞かせいたしますからどうか我慢ください。」アリシアはエーブラハムに宥められながら玄関を潜るのだった。
帝国の歴史と威厳を感じさせる巨大な円形の建造物。今より500年以上も昔に建造されたとも言われる29800人を収容可能な帝国有数の闘技場である。闘技場の中央では、13人の男が剣を持って巨人と対峙している。
「お父様、ありがとう!オーガと野蛮人の戦いやるって聞いてから、ずっと気になってたんだ!すごく人気で取れないって噂だったけど、さすがお父様!」長く透き通るかのように綺麗な白い髪を持つ、愛らしい少女が言う。
「なんてことないよ、アリシア。」アンゴラス帝国、内務相のリジーは答える。本当は使えるコネを総動員して、苦労の末に手に入れたのだが少し見栄を張る。
「野蛮人同士の戦いなんてつまんない。やっぱり相手は魔法生物でなくちゃ。」イチゴ味のアイスを長い舌で舐めながらアリシアは言う。
「まぁ、魔道生物を繁殖させるのは難しいらしいし、捕まえるのも大変だろうから…」リジーの言葉は娘に届かない。
「キャーー!一人潰れたー!行け行けー♪」アリシアは、笑顔でオーガを応援する。他の観客も似たようなものだ。
「アイスが溶けてきてるぞ、アリシア。」
「まぁ、いけない。」アリシアはコーンから漏れたアイスを舐める。その瞬間、会場は歓声に包まれる。オーガが2人目をこん棒で潰したのだ。オーガの周りには、血痕と肉片が散乱している。
「ああーーー!見逃したーー!お父様のせいだ。お父様のせいだ。うわぁーーん!」アリシアはリジーをポカポカと叩く。
「ごめんね、アリシア。ちょっと痛い、痛い、本当に痛い。止めて、止めて。帰りにマースローズのフルーツタルト買ってあげるから機嫌なおして。ねっ!」リジーは娘に懇願する。
「……許す。」アリシアは頬を膨らませながら言う。
「わぁ♪また一人潰れたよ。」オーガは男の死体を何度も何度も巨大な足で踏みつける。
「きゃはははは♪血がたっくさん。すごいすごい♪」ついに男は原型をとどめないほど、ぐちゃぐちゃになる。
「お飲み物いかがですか?」売り子がリジーに声を掛ける。
「ココアとブラックコーヒーを一つずつ。」
「私もブラックコーヒー飲む♪」アリシアが言う。
「アリシア、ブラックコーヒーは苦いんだよ。ココアにしておきなさい。」リジーがアリシアを窘めるも。
「アリシアはもう大人だもん。大人のレディーだもん。ブラックコーヒーのめるもん。」アリシアはまた頬を膨らませる。
「ブラックコーヒー1つ追加で。」売り子は半笑いしながら飲み物を渡す。少し意地悪な気持ちが芽生えてきた。彼女が私の立場を知ったらどうなるだろう。また、会場に歓声が響き渡り目を戻す。オーガが男の頭と胴体を切り離したところだった。
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試合はオーガの勝利で終わり、闘技場からたくさんの人が吐き出され、帰路につく。
「アリシア、勉強はちゃんとしてるか?」
「そんなことよりフルーツタルト食べたい♪」アリシアはリジーの手を引っ張りながら言う。
こう見えてもアリシアは、この国最高の魔道学校であるキャルツ魔道学校に在籍している。教師によると、授業態度にやや問題はあるが成績は良好らしい。将来は国の要職に就くことだろう。本人は植民地制圧軍に入りたいと言っているが、それは止めてほしいと思う。キャルツ魔道大学を主席で卒業し、制圧軍に入った物好きも居たようだが今は左遷されているようだ。娘にそうなっては欲しくない。ただ、アリシアの気持ちが分からないではない。
リジーには妻がいない。リジーの妻、つまりアリシアの母は野蛮人に殺されたのだ。彼女は偶然、とある屋敷から脱走した奴隷の野蛮人を目撃してしまったのだ。木の棒で顔面を何度も殴り付けられ最初は誰か分からなかったが、服装や持ち物から嫁だと判明した。以来、アリシアは野蛮人を憎んでいる。誰よりも強く。
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約束通りフルーツタルト(に加えてクッキーとアップルパイも買わされた。)を買い、ようやく家に着いた。灰色の煉瓦でできた瀟洒な洋館だ。
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様。」メイド服を着た奴隷が一礼しながら震えた声を捻り出す。
「てりゃー♪」アリシアは熱の帯びた杖を奴隷へと押し付ける。
「ヒッ!ギァーー!お止めください、アリシア様!申し訳ございません!お許しください。」奴隷はひれ伏し、懇願する。
「どうしよっかな♪」考える振りをするが、答えはもう既に出ている。
「やっぱりダメ♪」再び杖を押し付ける。肉の焦げる匂いが周囲を満たす。
「イャーーー」
「ご主人様、ご留守の間に魔信がございました。」家令のエーブラハムが言う。どこの家でも気品を保持するため家令、執事、そしてコックは奴隷は使わない。
「内務省官房室のバーナード様より、至急王城へ顔を出してほしいとのことです。」
「分かった。すぐに向かうと返信してくれ。」
「お父様、一緒にタルト食べれないの?」アリシアは涙を目に浮かべ悲しそうな表情でリジーを見つめる。足元にはぐったり動かなくなった奴隷が倒れている。
「ごめんよ、アリシア。急な仕事が入ったんだ。」
「すぐに帰ってきてね。帰ってくるまで寝ないんだから。」アリシアは頬を膨らませ言う。
「明日も学校だろ、早く寝なきゃ…」
「寝ない、寝ない、絶対寝ない!」駄々をこねるアリシアだが、いつも眠気に負け、ぐっすりと眠ることを家令のエーブラハムより聞いている。
「悪いねアリシア、行ってくるね。」リジーは王城へ向かう。
「うわーん。お父様、行かないでー!」アリシアはとうとう泣き出し始めてしまった。
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