日本異世界召喚

Alice In

文字の大きさ
31 / 33

国王誕生日

しおりを挟む
アンゴラス帝国 帝都キャルツ

毎年、国王誕生日になると催し物が出され、道端は屋台で埋め尽くされる。その隙間を子供達が駆け巡る。

「次は、アイス食べよ。アイスどこかな?」アリシアがクローディアを引っ張りながら言う。

「ちょっと休憩しよ。食べ過ぎたのに走りすぎて…。気持ち悪い。」クローディアはうずくまる。

「何言ってるの?まだ、全然食べてないじゃん。」

「あんだけ食べといてよくそんなことが言えるわね。」クローディアは呆れる。

「食べ物が嫌なら…。あの屋台はどう?」アリシアは1つの屋台を指差す。黒弓危機一発と書かれている。

「何あれ?すごい列だね。」クローディアは首をかしげる。

「面白そう。行ってみよ♪」クローディアを引っ張りながらアリシアは走り出す。

「えっ、一回1800ガレスって書いてない?高っ!」



----------------------

屋台にはたくさんの矢、奴隷の入った樽があった。樽には小さい穴があり、その周りに矢が何本か刺さっている。

「おじさん、これどうやるの?」アリシアが言う。。

「お嬢ちゃんの客とは珍らしいのぉ。矢をあの樽に射って、奴隷に刺さればお嬢ちゃんの勝ち。賞品獲得じゃ。」年配の男は言う。

「簡単じゃん。」アリシアが言う。

「そーかな、穴小さすぎない?」

「賞品って何?」クローディアが聞く。

「これじゃよ。」男は台の上に乗った杖を持ち上げる。

「これは!もしかして…」

「そうじゃ。デュラン社製の杖、グウェイン377じゃ。」

「本物?本当に本物?」二人はすかさず聞く。

「もちろんじゃ。偽物を使ったとなれば2度と商売が出来なくなるからのぉ。」老人は言う。

「樽に鉄板の無いところって本当にあるんだよね。」クローディアが言う。

「もちろんじゃ。終わったあと確認してもよいぞ。」

「よーし、まず私からね♪どこかな?どこかな?」いつの間にか剣を取ったアリシアが笑顔を覗かせ迷っている。

「止めてくれ、頼む。止めてくれ。故郷に子供を残して来たんだ。死にたくない。お願いだ。」男は汗と涙を浮かべ懇願する。

「お嬢ちゃん、がんばれー」

「屋台を破産させてやんな!」野次馬がこえをかける。

「ここだ!てりゃっ!」アリシアが掛け声と共に矢を放つが…

「ボスッ」と鈍い音がして矢は樽に刺さる。

「うゎーー。ガックリ。」アリシアのテンションがみるみる下がっていく。

「次は私だね。」クローディアが弓を取る。

「外せー。外せー。」アリシアが言う。

「うるさいアリシア。それ!」勢いよく矢が放たれる。そして

「ジュパッ」と何かが切れる音がする。

「えっ!」クローディアは目をひんむいて驚く。樽の中の奴隷は口から血を吐き、白目を剥いて痙攣している。

「やったー!」クローディアは喜びのあまり雄叫びををあげる。周りから歓声が起こる。

「おお、おめでとう。もう賞品を持ってかれるとはな。」老人が少し残念そうに言う。

「どうぞ!」クローディアは杖を受けとる。

「いいな、いいな、ちょっと触らせて。」アリシアが杖を触ろうとする。

「だめ。」体を捻り、それをかわす。

「クローディアのケチ。」

「ケチで結構。ああ、もうこんな時間だよ。早く行かなきゃ始まっちゃう。」

「まぁ、野蛮人の死ぬとこが見れたってだけで我慢してあげるか。」二人は魔道灯の照らす道を再び歩き始めるのだった。



----------------------

すっかり暗くなり窓からの光と魔道灯のみが道を照らす。しかし、それはメインイベントが始まるまでのことだ。

「ほわぁーー、綺麗♪」

「ホント!」帝都各所より爛々と輝く炎の玉が打ち上げられる。それはまるで暗闇に咲く華のようであった。

「ねぇ、アリシア。私ね引っ越すことになったんだ。」クローディアはとうとう話を切り出す。

「えっ!嘘、嘘だよね!また私を驚かそうとしてるんでしょ。もうその手には乗らないってば。」アリシアは言う。しかし、クローディアは首を横に振る。

「本当なの。お父様が失脚して、どこかの衛星国に左遷されるみたいなの。だから、だから…」クローディアは言葉を紡ごうとするが、それは叶わない。

「やだよ、やだよ!クローディア、どこにも行かないで!」アリシアも泣き出し始める。

「アリシア、これをあげるわ。欲しかったんでしょ。私の分身だと思って大事にしてね。」クローディアはもらったばかりの杖を差し出す。

「こんな杖よりクローディアの方がいいよ!」アリシアら泣きじゃくる。

「ごめんね、クローディア。今日のことは絶対忘れないわ。」

「ちょっと待ってね。」アリシアはポケットの中を漁り始める。

「あった!クローディアはこれを私の分身だと想ってね!」アリシアはネックレスをクローディアに押し付けながら言う。

「何でネックレスなんて持ち歩いてるのよ?それに大人のサイズじゃない。」クローディアは首をかしげる。

「お母様の形見なの。大事にしてね!」アリシアは泣くのを止め、無理やり笑顔を作って言う。

「何考えてるのよ!こんなの受けとれないわよ!」

「ううん。クローディアに持っていて欲しいの。お願い。受け取って!」クローディアは少し考えた後で言う。

「じゃあ、お互い一時的に預かっておくっていうのはどう?また会えた日に交換するってことで。」

「それいいね!絶対また会おうね!約束だよ♪」アリシアは涙を拭きながら言う。

「うん、約束。ただ、会う前にアリシアが杖を壊してしまいそうで怖いわね。」クローディアが笑いながら言う。

「何よそれー。」アリシアは頬を膨らませながら言う。少女達の上には、きらびやかな炎が輝いていた。

-----------------------

リジー邸

「ただいま。本当に長い式典だったよ。あれ、アリシアは?」毎日帰ってくると飛び付いてくるというのに。少し大人になってしまったのだろうか?少し寂しい。

「ご級友が引っ越してしまわれるとのことで、寝室で布団を被って泣いております。」家令のエーブラハムが答える。

「そうか。かわいそうに…。」

「私もなんとかしようとはしたのですが…」エーブラハムが言う。

「分かっているさ、娘を励ますのは親の役目だ。」リジーはアリシアの寝室へ足早に向かう。



------------------------

「アリシア、入るよ。」リジーは扉を開ける。

白で統一された可愛らしい家具が並ぶ綺麗な部屋。猫足のついた白いベッドの上に大きく膨らんだ布団がある。

「お父様、うわーーん」布団が空を飛び、中から小さな生き物が飛び出してくる。

「アリシア、聞いたよ。大変だったんだね。」リジーはアリシアを抱き締めながら言う。

「ウグッ!グスン!クローディアのお父様が左遷させられるんだって。お父様の力で何とか出来ないの?」アリシアはリジーの目をジーっと見つめる。

「内務省関連ならなんとかできないこともないけど…」娘の要望で人事を変えるなんてことあってはならないが、こんな顔で見つめられれば仕方がない。

「軍務相のアイルって人みたい。なんとかできない?」つぶらな瞳をこちらに向けてくる。しかし、そればかりはどうにもできない。



「アイルの失敗のせいで、沢山の人が死んじゃったんだ。それに皇帝陛下直々のご命令なんだ。残念だけど、お父さんには何にもできない。」アリシアの目元にまた涙が溜まり始める。

「うわーーん」

「ごめんよ、アリシア。」アリシアがアイルの子供と親友だともっと早くに知っていれば。全ては後の祭りだ。

「私とアリシアの仲を引き裂くだなんて…。皇帝陛下なんて大嫌い!」アリシアは大声で叫ぶ。

「そんな事言ってはいけないよアリシア。今日はフルーツタルトがまだ残ってたね。一緒に食べよう。」リジーは機嫌をとろうとするがアリシアはまた布団の中に潜り込んでしまった。アリシアは丸2日間すね続けた。大量の宿題のが課せられていることを思い出したのは、登校中のことだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...