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まだ夕飯を食べていなかったのを思い出し、二人は急いで夜の中へと繰り出す。
すでに周囲は夜の帳が下りている。今夜は満月で瓦斯洋燈一つで、事足りそうな明るさだった。
店仕舞い間近だった蕎麦屋に滑り込み、腹を満たし、銭湯でさっきまでの余韻を湯で流す。
明臣が持つ瓦斯洋燈の明かりを頼りに、春信は湯上がりで火照っている頬に春を感じていた。
「寄り道するぞ」
橋の手前で明臣が春信の手を引く。いつになく口数の少ない明臣に手を引かれながら、川の流れる土手を下る。橋の袂を背にし、川面を除きこむ。
川のせせらぎがよく聞こえ、満月の光が反射した川面は金剛石にも似た輝きを散らしていた。
「なんか嫁にやる前の父親の気分だ」
川面に落としていた視線を上げた春信は、明臣の横顔を見る。渋面を貼り付けた明臣の横顔は、未だに迷いが見てとれた。
「別に逢えなくなるわけじゃない。暮らす場所が分かったら、必ず連絡するから」
自分が今後どういう役割を与えられるのか。全く持って分からなかった。鳴宮家の事業に携わるにしては、自分はまだまだ未熟であるのは確かだ。少しでも役に立てるように、精進しなければならなくなるだろう。
「そうだな。それにお前が権力を持てば、あの糞上司を草しかねーような僻地に追いやってくれるかもしれないしな」
明臣の調子が戻りつつあることに、春信は少しだけ安堵した。
それから春信自ら、明臣の手を取る。普段は春信から手を繋ぐことがないからだろう。明臣の手が一瞬だけ動揺を示す。だか、すぐさま何事もなかったかのように強く握り返される。
「春信」
ぐっと引き寄せられた春信は、明臣の胸に抱き込まれる。石鹸の匂いに混じり、いつもの明臣の匂いが鼻腔をくすぐる。それだけで先程の情交を思い出し、甘美に胸がざわついた。
明臣も堪えきれなかったのか、胸にかし抱いた春信の唇を激しく奪う。
見られる危険性もあると春信は逃れようとして胸を押そうと試みる。だが、明臣は片手で春信の項を抑えており、そう簡単にはいかなかった。
激しい接吻に、唾液が首元に伝う。その後を追うようにして、明臣が首筋に舌を這わせる。今日は着流しに素肌であり、あっという間に肩から着物が滑り落ちていく。
「ちょっと、待って……こんなとこでなんて……」
春信が止めようとして、明臣の二の腕を掴む。だが、明臣はやめる気は毛頭ないようだった。いつも以上に興奮した様子で、さらに春信を煽るような愛撫を続けている。
春信は冷たい橋の袂に背をつけ、出来るだけ人に気づかれまいとして息を殺す。今にもくず折れそうに震える足をなんとか重心を橋に預ける事で堪えていた。
すでに周囲は夜の帳が下りている。今夜は満月で瓦斯洋燈一つで、事足りそうな明るさだった。
店仕舞い間近だった蕎麦屋に滑り込み、腹を満たし、銭湯でさっきまでの余韻を湯で流す。
明臣が持つ瓦斯洋燈の明かりを頼りに、春信は湯上がりで火照っている頬に春を感じていた。
「寄り道するぞ」
橋の手前で明臣が春信の手を引く。いつになく口数の少ない明臣に手を引かれながら、川の流れる土手を下る。橋の袂を背にし、川面を除きこむ。
川のせせらぎがよく聞こえ、満月の光が反射した川面は金剛石にも似た輝きを散らしていた。
「なんか嫁にやる前の父親の気分だ」
川面に落としていた視線を上げた春信は、明臣の横顔を見る。渋面を貼り付けた明臣の横顔は、未だに迷いが見てとれた。
「別に逢えなくなるわけじゃない。暮らす場所が分かったら、必ず連絡するから」
自分が今後どういう役割を与えられるのか。全く持って分からなかった。鳴宮家の事業に携わるにしては、自分はまだまだ未熟であるのは確かだ。少しでも役に立てるように、精進しなければならなくなるだろう。
「そうだな。それにお前が権力を持てば、あの糞上司を草しかねーような僻地に追いやってくれるかもしれないしな」
明臣の調子が戻りつつあることに、春信は少しだけ安堵した。
それから春信自ら、明臣の手を取る。普段は春信から手を繋ぐことがないからだろう。明臣の手が一瞬だけ動揺を示す。だか、すぐさま何事もなかったかのように強く握り返される。
「春信」
ぐっと引き寄せられた春信は、明臣の胸に抱き込まれる。石鹸の匂いに混じり、いつもの明臣の匂いが鼻腔をくすぐる。それだけで先程の情交を思い出し、甘美に胸がざわついた。
明臣も堪えきれなかったのか、胸にかし抱いた春信の唇を激しく奪う。
見られる危険性もあると春信は逃れようとして胸を押そうと試みる。だが、明臣は片手で春信の項を抑えており、そう簡単にはいかなかった。
激しい接吻に、唾液が首元に伝う。その後を追うようにして、明臣が首筋に舌を這わせる。今日は着流しに素肌であり、あっという間に肩から着物が滑り落ちていく。
「ちょっと、待って……こんなとこでなんて……」
春信が止めようとして、明臣の二の腕を掴む。だが、明臣はやめる気は毛頭ないようだった。いつも以上に興奮した様子で、さらに春信を煽るような愛撫を続けている。
春信は冷たい橋の袂に背をつけ、出来るだけ人に気づかれまいとして息を殺す。今にもくず折れそうに震える足をなんとか重心を橋に預ける事で堪えていた。
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