青空サークル

箕田 悠

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 一週間後の夕方五時に、僕は一と共に祭りへと向かった。
 普段と変わらないラフなスタイルのトップに僕は、変装はしなくていいのかと心配になった。
「地元だし、そんなファンがいるわけじゃないから」
 トップは玄関を出る前からはしゃいでいた。まだ中二とはいえ、僕からしたら子供ぽいなと苦笑が漏れる。
 学校以外の場所を歩くのは久しぶりで、僕は何だか落ち着かなかった。地元であるにも関わらず、昔あったコンビニがなくなっていたり、更地だった場所にアパートが建っていたりと、見ない間に色んな景色が変わってしまっていた。
 あからさまに驚いた顔をしていたのだろう。
 トップがそういう場所を通る度に、「昔さ、ここでお菓子買ったよね」とか「タイムカプセル埋めたんだけど、どうなったんだろ」と話題を持ちかけてくる。その都度僕は相づちばかり打っていた。
 神社に近づくと、それに伴って祭り囃子の音が聞こえてくる。自然とトップの足取りも速くなり、僕もつられるようにして足を速めた。
 まだ五時過ぎということもあり、人はまばらだ。日も高いこともあって気温も高ければ、蝉の鳴き声も騒騒しい。
 境内に向かう石階段を上がると、そこにはずらりと露天が並んでいた。
 ソースの香りや甘い匂いが混じり合い、鼻腔をくすぐる。
「良い匂いだね。お腹空いた~」                 
 トップがお腹をさする。同じく僕のお腹も鳴っていた。
「何がいい?」
「うーん。焼きそばとお好み焼きと、それからリンゴ飴と――」
 トップが指折り数えながら、あれもこれもとあげていく。
「そんなに食べれるわけない」
「いけるいける。めっちゃお腹空いてるもん」
「本当に?」
「うん。最悪持って帰ればいいし」
 トップは早速、近くの焼きそばの屋台に顔を出す。僕は呆れながらも、その光景を見守る。
 あれだけ弟の事を嫌っていたはずなのに、今日は普通の兄弟でいれそうだった。
「兄ちゃんも食べるでしょ?」
 いつの間にか一が隣の屋台でお好み焼きを買おうとしていた。僕が「じゃあ食べる」と言うと、トップが歯を見せて笑う。
 両手一杯になったところで、気付けば人も増え始めていた。久々の人混みに少しだけ疲れも感じていたが、はしゃいでいるトップにもう少しだけ付き合うつもりでいた。
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