青空サークル

箕田 悠

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 しばらくすると、二人は満足したのか言い争いをやめて、僕の方を見る。
「ちょっと、ホッシー。止めてよぉ」
「そうだ。このままだと、不毛な一日を終えてしまう」
 二人が抗議の目を向けてくるのも、お決まりのパターンに変わっていた。
「仲良いなって思って」
 二人が不服そうに顔を見合わせる。
「喧嘩する程仲が良いというのは、二人の事を言うんじゃないのかなって」
「ホッシー変わったね。良い意味でさぁ」
「そうだな。何だか安心した」
 さっきまで喧嘩していた二人の意見が揃う。ほら、仲が良いじゃないかと、僕の口元が緩んでいた。
「ねぇねぇ、今の時代は何歌うの?」
 僕は有名なアーティストの卒業ソングの名前を口にする。なーこだけは、「その歌手知ってる。良いなぁ」とはしゃぐも、眼鏡くんはもちろん知らなそうだった。
「でもその曲は知らない。どんな感じなの?」
 なーこの時代にその曲はなかったようで、僕は仕方なく口ずさんだ。国民に愛されるだけあって、僕もその曲が好きだった。だから、つい気付けば一番を歌いきっていた。
「え、やばっ、ホッシーめっちゃ歌上手いんだけど」
 なーこが衝撃を受けた顔をしたことで、僕はやってしまったと急激に顔が熱くなる。
「確かに上手い。感動した」
 眼鏡くんまで感心するものだから、僕は「いや……全然、そんなぁ」と顔を横に激しく振った。
「ホッシーとカラオケ行きたかったなぁ。もっと聞きたいもん」
 僕はとんでもないと後ずさる。カラオケなんて、僕が一番苦手とすることだった。みんなの前で、一人で歌う恥ずかしさはない。今は流れでそうなっただけで、ある意味事故みたいなものだった。
 僕が狼狽えている間にも、眼鏡くんが「カラオケとはなんだ?」となーこに聞いている。
 なーこが説明しているのを見ているうちに、少しずつ僕の羞恥心も凪いでくる。
 ずっと二人と友達でいたい。でもそれ以上に、二人が幸せになることをきちんと願えるのが、真の友達なのかもしれない。
 二人の話が途切れたタイミングで僕は、「あのさぁ」と切り出した。
「二人の事を教えて欲しいんだ」
 僕は二人を交互に見ながら続けた。
 この数ヶ月間、何度も一緒に過ごしてきたけれど、時間も限られていたし、二人に聞くのはどこまで許されるのかが分からなかった。
 だけど二人の事を知れば、解決の糸口に繋がるかもしれない。その為には、とにかく情報が必要なはずだ。
「あたしたちの事?」
 なーこが人差し指を自分の顎に当てる。上目遣いで、うーんと悩んだ声を出す。眼鏡くんも考え込んでいるのか、腕を組んで目を閉じていた。
「未練があるからこそ、この場所に留まっているんだと僕は思うんだ。だから、例えばこの場所に何らかの思い入れとかない?」
 僕はここに来るまでの間に、それなりに調べていた。あまりこんな言い方はしたくないけど、いわゆる地縛霊というのは、その場所で亡くなって、未練があることで留まってしまうらしい。
 二人がそうなのか分からないけれど、この場所に未練があるのならば、それを解き明かせばもしかすると、解放されるんじゃないかと僕は考えていたのだ。
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