去りし記憶と翡翠の涙

箕田 はる

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第四章

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 四苦八苦しつつも、天野は何とか全てを呑み込んだ。目眩がするほどの圧迫感。汗ばんだ体の熱を奪うような、ヒスイの低い体温。苦しげに伏せたヒスイの目元。どれを取ってしても、愛おしさに変わっていく。ヒスイに出会わなければ、こんな感情は芽生えなかったのかもしれなかった。

「ヒスイさん……僕は貴方に出会えて幸せです……」

 天野は涙で滲む視界をヒスイに向け、腕をヒスイの首の後ろに回す。ヒスイが目を開き、悪戯っぽく笑うと天野の腰を掴む。

「あんまり煽るなよ」

 ヒスイが天野の頬に唇を寄せた。優しく舌が這わされていき、天野は小さく吐息を零す。掴んでいた腰を上下に揺すられ、弾けたように天野の瞳から涙がこぼれ落ちてしまう。

「ふっ……あ、んっ……」
「使わなくても十分だな」

 ヒスイが興奮したように、翡翠色の瞳を光らせる。卑猥な水音が抽送を繰り返す度に静かな部屋を満たし、全身が熱に浮かされているかのように昂ぶってしまう。

「お前の涙って癖になりそうなぐらい、甘い」

 ヒスイがうっとりとした口調で述べた。そんなに自分の涙は甘いのかと、天野はヒスイの唇を奪い舌を絡ませる。唾液に混じった塩辛さはどう捉えても甘くはない。

「はぁっ、しょっぱいじゃないですか。嘘つき」

 唇を離し天野が悪戯っぽく笑うと、ヒスイも口角を緩め「妖怪は信じるなと言ったじゃん」と茶化すように返答してくる。天野は可笑しくなって笑みを零した。

「お前の笑った顔……久々に見た」

 慈しむような言葉と共に、ヒスイの指先が天野の頬を撫でていく。その手を天野は上から重ね合わせる。

「僕も……ヒスイさんの恍惚とした表情、久しぶりに見ました」

 天野の言葉に意表を突かれたように、ヒスイが唖然とした表情になる。頬が微かに上気し、顔を顰める。照れているのだと分かり、天野は小さく笑う。

「……絶対、許さないからな」

 ヒスイは唇を引き結ぶと、天野を押し倒す。思わぬ反撃に天野は体を強張らせた。

「嫌だって泣いても、許さないから」

 言うなりヒスイが天野の膝裏を抱え込み、腰を激しく打ち付けていく。

「ああっ――い、いやっ」

 中を激しく穿たれ、天野は悲鳴に近い声をあげる。激しい刺激から逃げるように腰を浮かすも、膝をしっかりと抑え込まれた状態では逃れられない。激しい快楽の波が押しては引いてを繰り返し、頭が真っ白になってしまう。

「あっあっ、ひ、ひすいさん――」

 天野は堪えきれずに下肢を震わせると、引きずられるようにして欲望を吐き出す。荒い呼吸を繰り返し、ぐったりとした体を布団に沈み込ませた。

「まだ終わりじゃないから」

 ヒスイが悪戯っぽく口角を緩めると、再び深い抽送が繰り返されていく。終わりの見えない快楽に、天野は再び嬌声を上げた。


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