作家は二度、炎上する

箕田 はる

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 こないだの書店員がいるのではないかと落ち着かない気持ちでいたが、今日は若い青年と店長らしき人しか見当たらない。安堵しつつ、何冊か見繕っていく。青少年向けのアンソロジーが同じ出版社から何冊か出ているようだった。それを手に取ると、今度は単行本の並ぶ棚へと向かう。
 先日見た『部屋籠もり』のPOPもまだそこにある。気まずさに早々に目を逸らし、棚にならんだレ行の棚差しプレートを辿る。この間読んだ『息子の標』の隣には『路上の王』と『少女の唄』というのが並んでいた。
 まだ三作品しか出ていないのか、それともこの本屋で扱っているのが三作品しかないのか。それは分からなかったが、『少女の唄』を手に取った。表紙には目元が隠れた長髪の少女が、青空に向かって口を開いている絵が描かれていた。その様子はまるで空に向かって歌っているかのようだった。裏表紙は青空に点々と白い雲が描かれている。
 文庫本とは違い、単行本にはあらすじが書かれていない。内容は分からないが、見た感じは青春小説にも見える。今回のテーマに通ずるものがありそうだった。
 レジで会計を済ませ、初夏の生ぬるい風を受けながら帰路に着く。
 早速、アンソロジーの方から先に手を伸ばす。黎城のことも気がかりだったが、自分のことも疎かにすることは出来ない。頭を抱えたい気持ちだったが、今は一つずつ片付けていくしかなかった。
 一冊目を読み終え、二冊目に取りかかろうとした時。不意にスマホが鳴りだす。誰からかと画面を見る。安時からだった。
 ややうわずった声で語部が電話に出ると、「これから会えませんか」と少し疲れた声が聞こえた。
 了承を述べ、一時間後に語部の家に来ることとなった。自分のせいで落ち込んでいるのかと一瞬思いもしたが、さすがに自意識過剰だと考えを改めた。
 一時間にも満たずに、安時は部屋を訪れた。ケーキを買いに行く余裕もなく、語部はいつも以上に悄然としている安時にどう接したら良いのか戸惑った。
 とりあえずコーヒーだけ出すと、安時は無言で頭を下げた。いつもとは明らかに違い、様子がおかしい。どんな言葉をかけて良いのか分からず、語部は隣に腰掛けることも出来ずに立ちつくす。作家であるくせに、口では何も相手に伝えられないのかと、もどかしさを感じた。
「ちょっと待ってろ」
 そう言って、語部は部屋を出た。安時がどちらにと尋ねてきたのを無視して、再び炎天下の中を徒歩二十分かけて馴染みの洋菓子店に向かった。
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