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しおりを挟む連載を勝ち取れるかが掛かっているだけあって、語部はかなり苦心を強いられていた。
毎日のように題材としたい内容をメモで書き出し、青陽出版の雑誌と見合うようなテーマになるかを見当していた。
以前にある作家が言っていた。小説のネタを出すのは便秘の状態みたいなもどかしさがあると。聞いた時は言い得て妙だなと語部は思っていた。出したくて出るようなものじゃないのは、クリエイティブな業種であれば誰しもが思うところだろう。
とにかく数案、何とか絞り出し、大体の流れを決めておくことにした。後は安時と打ち合わせをし、その中でこれというものを決めるしかなかった。
とにかく時間がない。カレンダーの日付を確認し、語部は焦りを感じていた。まだアンソロジーの方も、校閲から戻って来しだい推敲しなければならない。
やや長くなった前髪をかき上げながら、語部はふと笑みを零す。このままでは黎城のように、目まで隠れるほどの長さになるかもしれないと思ったのだ。それだけ、最近の生活は慌ただしかったのだと実感する。
一週間ほどで取りあえずテーマだけをまとめた所で、安時を呼び出す。とにかく被らないようにするために、安時に確認してもらうことが先決だった。
「一応被りそうな物はなさそうですね。後はどう肉付けしていくか……とにかく来週までに、出来る範囲で良いんで短いあらすじを書き出してみてください。それを見て、どれでプロットを書くか決めましょう」
三つ程のテーマに絞ったところで、次の工程へと移る。いつもならば取りあえずプロットを書き、没かどうか決めるが、今回は時間がない。全部のテーマのプロットを作るのは、さすがに間に合いそうもなかった。
安時の提案通りに、取りあえず決定したテーマ三つの大まかな話の流れを書き出していくことにした。
一つはヤングケアラー。子供が親や兄弟の看病をすることで、学業や個人の時間を奪われてしまう問題だ。詳しく書こうとすると下調べにも時間がかかってしまう。ある程度の知識で抑えるために、あまり深掘りはしないような形にするつもりだった。
二つ目は、バイトテロ。バイト先で行った不適切なことをさもエンターテインメントとして、動画で配信することだ。企業に与えるダメージは大きく、よって行った者は社会的な制裁は免れない。それでもなくならないのは、承認欲求によるものなのか、はたまた本人の無責任さなのか。答えは本人しか分からないことだが、それでも世間に考えさせるきっかけにはなるはずだ。
三つ目は、動画配信者。こちらは炎上するとかではなく、そこで色んな人と出会い、苦悩もあれどのし上がっていくエンターテインメント性の高い作品にする予定だった。
どれが一概に良いとは言えないが、現代社会にマッチしているはずだ。ここからどう話の展開をしていくかは、プロットを書いてみないことには分からない。それに連載の期間によっては、尺を伸ばしたり縮めたりしなければならなかった。
寝食も惜しみつつ、一週間。語部はただひたすらに、パソコンに向かっていた。眠い目を擦り、どうしても堪えきれないときにはエナジードリンクにも手を伸ばす。作家や漫画家で夭逝してしまう人ほど、心労や過労がたたってということだろう。プレッシャーや睡眠不足、運動不足に至るまで、作家は皆、命を削りながら作品に心血を注いでいるのだ。
ふいに語部は釉禅を思い出す。彼もプレッシャーや心労の末に、命に終止符を打っている。きっと最後まで足掻いていたはずだ。足掻いたからこそ、その絶望も一入だったのかもしれない。
自分もいつか、そうなってしまのだろうか。そんな事が脳裏を過り、語部は頭を振った。良くないことを考えてしまうのは、疲労のせいだと心身の怠さから感じていた。
一週間掛けて何とか概要を作り終え、安時が来るのを待つ。
訪れた安時は語部の顔を見るなり、「酷い顔ですね」と何ともいえない顔をした。
簡単にコーヒーと茶菓子を用意しソファに座る安時に出すと、語部もやっと重たい腰をソファに落とす。ソファに寄りかかり、身を沈める。
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