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しおりを挟む――再三に渡るお手紙、ありがとうございます。
あれから息子さんが無事に部屋を出ることが出来たようで、私も大変喜ばしく思っております。しかしまさか、私の著書である「部屋籠もり」を参照されたとは、正直驚きが隠せません。事実は小説より奇なりと言ったものですが、まさに小説よりも現実の方が何が起こりうるか分からないものだと、あなた様のお手紙を拝読して思わずにはいられませんでした。
それもインターネットではなく、間違って届いた手紙という古風なやり取りで、見事に息子さんの誘導に成功したということに、あなた様の文章力の高さ、想像力の豊かさに舌を巻かざるを得ませんでした。
私の最新作である『少年は夢を綴る』(夢見る少年少女収録)もご拝読頂いたようで、そちらも息子さん(中学生だったとは知りませんでした)もお手に取って頂き、さらに夢を持つという希望を抱いたとのことで、作家冥利に尽きる次第であります。
今後とも、私の著書をご愛好頂けますと幸いです。
そこまで書いたところで、語部は溜息を吐き出し、顔を上げる。
久しぶりにボールペンで長文を書いたせいか手首が痛んでいた。強めに右手首を振り、何とか誤魔化そうと試みる。
そこでふと、大事な事を思い出し、語部は慌てて壁にかけられた時計を見上げた。
十八時五分。せわしなくテレビのリモコンを手に取り、画面に向ける。画面が発光し、第〇〇回芥川賞、直木賞と書かれたボードが上から吊され、舞台には金屏風が立っていた。まだ誰も壇上に上がっておらず、報道陣のざわめきだけが聞こえてくる。
すでに受賞者は発表されたようで、近くに置かれたボードには紙が張り出されていた。予想通りに黎城の名前があったことに、自分の名前が張り出された時以上に感情が高ぶっていた。喜びが全身を駆け巡り、浮き足立つ。
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