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しおりを挟む涼華が帰ってこないことを不満には思っている。だけどそれが、涼華がいないことが嫌だからかと聞かれると分からない。
それよりも、娘の不貞が発覚した時に俊政が深く傷つくのではないかと、そっちの方が気がかりに思っていた。
俊政の顔色ばかり気にしている睦紀にもしかすると、涼華は嫌気が差しているのかもしれない。その可能性は否めなかった。
「多嶋の言う通りかもしれない……ちゃんと、妻と向き合ってみようと思う」
自分に言い聞かせるように睦紀は口にする。
「そうだな。結婚記念日にでも、何かサプライズでもすれば何か変わるんじゃないか?」
多嶋に言われ、睦紀はもうすぐ結婚記念日であることを思い出す。仕事や春馬のことでいっぱいで、そのことを危うく忘れかけていた。
「ありがとう。そうするよ」
結婚記念日は来週だ。去年は家族総出で祝ったが、今年は二人っきりでというのも良いかもしれない。俊政や春馬に相談すれば、首を横には振らないはずだ。
結婚してからは急に涼華が素っ気なくなったせいで、デートらしいことをしていない。初心に返る意味でも、涼華が喜びそうなプランを立てて出かけるのも良い。それで関係が修復されれば、きっと家に帰ってくるようになるかもしれない。
解決の糸口が掴めたようで、睦紀は久しぶりに胸を弾ませた。
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