No.83【短編連載】ヤニ吸う時だけ優しい先輩

鉄生 裕

文字の大きさ
6 / 6

志摩悟志

しおりを挟む
”まずは自己紹介をお願いします”

志摩悟志です。この会社にはもう長いこと勤めています。



”他の方から色々とお話は伺いました。もちろん矢田さんのことも”

そうですか。矢田は・・・、本当に良い後輩でした。



”吉野さんについてお聞きしてもいいですか?”

とても優秀な後輩ですよ。
彼が四課に来てくれて本当に助かっています。



”吉野さんを第四課に異動させて欲しいと言ったのは志摩さんだと伺いました。どうして吉野さんを自分のいる部署に異動させたかったのですか?”
 
吉野は真面目で器用なので、入社してしばらくすると一人でいくつかのクライアントを任されていました。加えて彼は何事も断れない性格なので、どんどん仕事を任されるようになっていました。
土日も会社に出勤して一人で業務をこなしている彼を見て、このままじゃ良くないと思ったんです。このままでは彼が潰れてしまうと。自分でも不思議なのですが、少しでも彼の力になりたいと思ってしまったんです。
それだけじゃありません。彼は第四課に来る前から、喫煙所で会うといつも笑顔で、「おはようございます」とか「お疲れ様です」と挨拶をしてくれたんです。こんな僕なんかに。
それに彼は覚えていないでしょうが、ずっと前に彼が僕の腕時計を見て、「その腕時計、格好良いですね」と言ったんです。実はこの時計、僕の誕生日に矢田がプレゼントでくれたものなんですよ。 
その時のことが凄く嬉しくて、思えばあの時から吉野と一緒に仕事がしたいと思っていたんだと思います。



”吉野さんが、志摩さんは煙草を吸う時だけは人が変わったように優しいと仰っていましたが”

そうですね。
矢田の件があった際、色々と考えたんです。いつも矢田には優しく接していたつもりだったので、だからこそ私が矢田を怒ってしまった際に、彼は余計に傷付いてしまったのではないかと。最初からもっと厳しければ、矢田もあんなに落ち込むことは無かったんじゃないかって。
後になって彼が自殺ではなく事故だと分かったのですが、いつの間にか誰に対しても厳しくなってしまって。
だからこそ、一緒に煙草を吸う時だけは本当の自分を出さなきゃって思うようになったんです。
それが良いことなのか悪いことなのかは分かりませんし、たぶん良くない事だというのは自分でも薄々感じてはいます。
そのせいで吉野が私から離れたいと思ったら、その時はその時だと思っています。
でも、それまでは、出来る限り吉野のフォローをしたいと考えています。



”吉野さんの事を信頼しているんですね”

そうですね。
彼は私の大切な後輩ですから。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

筆下ろし

wawabubu
青春
私は京町家(きょうまちや)で書道塾の師範をしております。小学生から高校生までの塾生がいますが、たいてい男の子は大学受験を控えて塾を辞めていきます。そんなとき、男の子には私から、記念の作品を仕上げることと、筆下ろしの儀式をしてあげて、思い出を作って差し上げるのよ。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...